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2026.10.02

なぜ沖縄の地銀三行は統合しそうにもないのか

2026年10月2日、盛岡で記者会見があった。青森みちのく銀行を傘下に持つプロクレアホールディングス、岩手銀行、秋田銀行が、経営統合の協議を始めると発表した。目指すのは2028年4月。合併はせず持ち株会社方式で、合算した総資産は13兆円規模、東北最大になる。人口減少が全国に先んじる北東北で、県境を越えて規模を足す、という説明だった。2025年には第四北越フィナンシャルグループと群馬銀行が統合で合意し、しずおかフィナンシャルグループと名古屋銀行も続いている。地銀再編は、同一県内の整理から、隣県どうしの陣取りに移っている。地方銀行は大変だ、そうなのか?沖縄では、その話が一度も表に出ない。

なぜ沖縄では地銀統合の話が出ないのか。理由は、観光が好調だからではない。現金を一緒に運べなかったから、というのが暫定的な答えだが、どういうことか?

2021年1月、琉球銀行と沖縄銀行は「沖縄経済活性化パートナーシップ」を結んだ。事務の共同化で3年に約20億円を削る、という中身で、経営統合は最初から外してある。発表の場で沖縄銀行の山城正保頭取は「経営統合はありえない」と言い、琉球銀行の川上康頭取は「競争が弱まって客が損をするかどうかが線だ」と答えた。目玉は現金輸送の共通化だった。2年後の2023年1月、日経はこれが頓挫したと報じている。幹部の言葉は「意外とできないことが多いと分かった」だった。

共同化はその後、相手を替えて進んだ。琉球銀行は第3の銀行、沖縄海邦銀行と折半出資で「ゆいパートナーサービス」(浦添市、資本金1,000万円)を作り、2023年12月から現金輸送と行内メール便を任せ、2025年1月には現金整理まで寄せた。統合ではなく、ライバルのうち1行とだけ裏方を共有した、という結果である。相続届の書式だけは、海邦とコザ信金も加えて4者で揃えた。

そもそも3行の出自はかなり違う。琉球銀行は1948年、米軍布令で通貨発行まで担う特殊銀行として開業し、復帰で普通銀行になった。沖縄銀行は1956年、県内初の市中銀行としてできた。海邦銀行の前身は1949年の無尽で、1964年に中央相互銀行となり、1989年に普通銀行へ転換した。本店はいずれも那覇の久茂地周辺に集まる。2026年3月末の海邦は総資産8,202億円、預金7,674億円、貸出5,823億円、従業員737人、拠点は店舗内店舗を含めて37だ。メインバンクのシェアは、東京商工リサーチの調査で琉球41.6%(6,489社)、沖縄39.0%(6,081社)、海邦12.7%。上位2行が合併すれば8割を超える。東北の3行が足しに出るのと、向きが逆である。

他県で再編が進むのは、貸出のパイが縮むからだ。沖縄では縮み方が違う。2025年の入域は1,075万5,800人で暦年過去最高、2025年度の観光収入は1兆747億円と初めて1兆円を超えた。外国人約284万人のうち台湾が112万人、約4割を占める。2025年度の地銀3グループはそろって大幅増益で、理由に挙げられたのはこの観光と、日銀の利上げである。

誤解する人も多いが、沖縄の米軍基地そのもののからの所得は小さい。県の推計では2019年度の基地関連収入は2,712億円、県民総所得の5.5%で、復帰直後の15.5%から落ちている。大きいのは名目の方だ。2026年度の沖縄振興予算は2,647億円。辺野古では、沖縄防衛局が2023年度に発注した大浦湾側のC1護岸が、当初契約から約3倍の780億円まで変更契約で膨らんだ。変更は入札を経ない。元請けは本土のゼネコンである。県内に残るのは下請けと賃金と、地権者の用地料だ。

そして、ダークサイド。雇用は別帳面になっている。2026年7月の完全失業率は3.0%で全国2.4%、15~29歳は4.9%と前年より1.3ポイント悪化した。有効求人倍率は0.9倍台まで落ちる月がある。最低賃金は2025年12月に1,023円で初めて1,000円を超え、2026年12月2日発効分で1,086円、高知と並ぶ45位タイまで来た。1人当たり県民所得は2023年で約231万円のままである。

銀行が3行で黒字なのは、この外部需要が貸出を支えているからで、雇用を見てもわかるが、県内の産業が活発だからというわけでもない。かりゆしがコロナで手放した那覇のホテル2棟を、琉球銀行系のファンドが一旦持ち、2025年に買い戻させたのは、抜けていく資産を県内に引き戻す動きだが、これは例外に近い。

北東北が県境を越えて一つの持ち株会社を目指す日に、沖縄で統合の話が出ないのは、免除があるからではない。現金すら共同化できなかった2行が、国費と海外、特に台湾からの観光客で、まだ各自の帳簿を埋められているからである。

 

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