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2026.10.05

中国のコンビニは低迷

YouTubeで中国の夜の街を見ていると、美団の黄色と淘宝閃購の青を背負った配達員が、信号のたびに群れをなしている。飲み物も電池も解熱剤も、注文から10数分でマンションの入口に着く。

日本の住宅街で同じ光景に出会うことはほとんどない。足りないものは、セブン-イレブンかローソンかファミリーマートまで歩いて買う。この差は好みの違いというより、便利さの意味が違うことの表れだ。もっとも、画面に映るその群れは中国の全部ではない。地方までは同じ密度で届いていない。届かせている人の側にも、もう1つの中国がある。

街角が倉庫に変わる

中国の都市部では、コンビニエンスの定義を即時配送に書き換えてしまった。半分のコンビニチェーンが2026年上半期に売上減を報告したが、その注文は10分、1ドル未満で届く。中国連鎖経営協会が会員60社、12万7872店を調べた同じ半期では、純増は1391店にとどまった。2025年上半期の4093店、2024年通年の9570店から急減速している。来店が減った企業は71.7%、売上が減った企業は50%、純利益が減った企業は60%だった。畢馬威と協会の報告では、2025年の単店日販は4453元で前年比3.9%減、来店客数は8.7%減、純利益率は3%を下回る。

シェアを奪っているのは、美団閃購、淘宝閃購、京東小时达である。商務部の研究機関は、即時零售が2026年末に1.2兆元(約1780億ドル)へ達し、2030年まで年12.6%で伸びると見ている。コンビニ業界全体の売上は4000億元台だから、規模ですでに上回る。ロイターが報じた分析公司のデータでは、2026年第2四半期のシェアは淘宝閃購が45.7%、美団が45.3%、京東が7.7%と、食事の宅配から日用品へ主戦場が移っている。在庫の置き場も店頭から閃電倉へ移り、美団と淘宝だけで数万の小型倉庫が、回転の速い商品だけを置いて配送する。上海や広州では、店員が来店客よりピック作業を優先し、地下鉄の開通で地上に出ない通勤が増えた。街角には量販スナック店まで並び、北上広深は飽和に近い。

日本系も例外ではない。ローソンは中国1万店の目標を2025年末から2031年へ先送りし、100元均一の「ローソン100」は最盛期の約1200店から600店余へ縮小して生鮮寄りに転換した。セブン-イレブンも、景気の鈍さと現地勢の宅配攻勢で出店計画が未達になる公算が報じられている。店は残っても、客はアプリ上の倉庫から買っている。

普及は全体的ではない

地方は、この転換の前段にいる。地方では賃貸と人件費が低く、現代的なコンビニの浸透が遅れている。湖南の新佳宜は、県城では1杯の挽きたてコーヒーのために5分余計に歩く客がいる、ただし価格はチェーンカフェより安くなければならない。ローソンは川渝と広東で小型の「ローソン小站」を出し、美宜佳、十足、見福も県城の社区へ出店を移している。次の10年は都市の街角ではなく県城の社区を取る、という見立てができる。

即時配送の伸び率だけ見れば、地方の方が速い。美団は県レベルの利用者と地元サービス注文の伸びが大都市を上回るとしており、中国日報も同様に伝えている。県と郷鎮の消費財小売は、2026年1〜7月で全国の39.1%を占める。美団研究院の試算では、県域の即時零售は2022年の約843億元から、2026年に2400億元を超える見込みだった。選ばれる理由も都市と違い、近くの店に欲しい商品がない、営業時間を過ぎた、が市区より高い。供給の薄さそのものが需要になっている。

届く範囲はまだまばらである。辺境の県では美団に載っているのが古茗や蜜雪冰城と飲食数店だけで、最近の配送が20キロ先、という場所が残る。全国約1800の県は人口の半分超を抱えるが、10分配送が標準なのは、決済の習慣が厚い2線寄り、東部と南部の県城に偏る。美団の前置倉スーパー「小象超市」も57都市、前置倉2000超まで広げたものの、主戦場はまだ2線とその周辺だ。地方で先に店を埋めているのは、鳴鳴很忙のような量販スナックで、2025年末に2万1948店、約6割が県と郷鎮、1401県を覆う。鮮食はコンビニ、価格はディスカウント、急な不足は美団、という分担が県城から始まりつつある。

配送者が失業の緩衝材である

この速さを支えている労働も、画面の後ろにある。国家統計局の都市調査では、学生を除く16〜24歳の失業率は2026年8月に18.9%まで上がり、1年ぶりの高さだった。25〜29歳は7.5%で、30〜59歳の3.9%とは段差がある。この夏の大卒は過去最多の約1270万人だ。2023年6月に21.3%を記録したあと、当局は学生を分母から外して公表を再開しているので、体感より統計の方が低く出る。フィナンシャル・タイムズは、配食と配車で働く人を2025年時点で5300万人超と推計し、労働市場の巨大な緩衝材と呼んでいる。

配送人は若い方に寄っている。美団の職業報告では、18〜24歳の割合が2024年に上昇し、月によって25〜34歳を上回って最大の年齢層になった。業界集計の平均年齢は28歳前後、美団の男性騎手は30歳前後だ。全国総工会は網約配送の従事者を1400万人超とし、県城2000余まで広がっているとする。登録ベースでは、価格競争の間に2000万人近くまで膨らんだという推計もある。瑞銀は、日量1.1億件を回すのに必要な熟練騎手は約400万人で、登録の多くは余剰だと見ている。

中身は新卒の失業者だけではない。高頻度の配送者は農村戸籍の出稼ぎが多く、既婚で子のいる30代が厚い。45歳以上が1割を超え、女性も増えた。学歴は高校以下がまだ多数で、大専以上は2割台、本科は数%から7%程度という報告が並ぶ。卒業後の受け皿であると同時に、工場や建設からあふれた人の中継地でもある。高線都市の高頻度騎手の月収は、美団開示で7000〜1万元台だ。正社員より入りやすい代わりに、単価が下がればすぐ削られる。

つまり、若年の就職難が、10分配送を安く回せる人員を供給する。その人員が多すぎると、配送者同士の奪い合いで単価が下がり、同じ人がさらに長く走る。2025年の補助金合戦で騎手が急増したあと、注文がピークの日量2億件超から1.1億件前後へ戻ると、5人で1件を奪う状態になった、という報道はその帰結だ。即時配送は若者の失業から生まれたわけではない。その失業を吸収し、同時に安さの前提にしている。

日本コンビニ業態に影響しないだろう

このような変化が日本のコンビニで起きるとは考えにくい。まず人件費が違う。中国のモデルは、大量のギグワーカーが低単価で短距離を走り続けることで成り立つ。美団はピーク時に即時配送の日次注文が1.5億件に達したと公表したが、その裏では2025年に販売促進費が膨らみ、通年で234億元の純損失を出した。日本では最低賃金が上がり、配送を担う若年層は減っている。16〜24歳の失業率が常時2割近く、大卒1200万人超が毎年あふれる緩衝材もない。Uber Eatsや出前館、menuが食事の宅配を広げても、飲料1本に手数料を載せて全国で回す補助合戦は始められない。

それと、日本ではコンビニ店がすでに近すぎる。2026年8月末の国内店舗数は、セブン-イレブンが約2万1900、ファミリーマートが約1万6400、ローソンが約1万4600で、住宅から徒歩圏にほぼ隙間がない。中国の都市では店舗網が完成する前にアプリが飛び越え、地方では店の薄さ自体がアプリの需要になった。日本では、書き換える前の答えが角に残っている。少量の買い足しのためにアプリを開き、配達を待ち、手数料を払う動機が薄い。

そもそも日本の建物と道も中国風のコンビニ業態に向かない。中国の新区は同じ間取りの高層住宅が密集し、入口までの動線が短い。県城でも、商業施設の不足が配送の理由になる。日本の都市部は路地と一方通行が多く、オートロックのマンションでは最後の数十メートルが詰まる。電動自転車の規制も厳しく、歩道を群れで走るモデルは受け入れられにくい。密度が高いように見えて、10分圏の採算は中国より悪い。

日本でも食事の宅配は残るし、重いものや悪天候の日の即配も広がるだろう。ただ、それは日本のコンビニを空洞化させる主流にはなりにくい。中国で驚いた光景は、低賃金で走れる若年と出稼ぎの余剰、高層団地、未完成の店舗網、巨額の補助金が重なったときにだけ標準になる。地方ではその重なりがまだ斑で、本当に遠い鎮までは配達員の群れは例外のままだ。日本の1本の飲み物は、これからもそこのコンビニ店が担うだろう。

 

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育成就労の日本語教育は空転するだろう

2027年4月、技能実習に代わる育成就労が始まる。3年で技能と日本語を特定技能1号の水準まで育て、分野ごとに1年から2年の範囲で転籍制限を設けたうえで本人意向の転籍も認める、という制度だ。日本語は努力義務ではなく要件になった。就労開始前までに、日本語教育の参照枠でA1相当(JLPTのN5、JFT-Basicなど)の試験に合格するか、認定機関の就労課程などでA1相当の講習を100時間以上受ける。期間中はA2目標の講習機会を提供し、終了時には原則A2.2相当(N4程度)に到達させる。介護や鉄道は上乗せがあり、介護はA2.2に加えて介護の日本語評価試験が求められる。当初2年間の受入れ上限は分野合計で42万6000人。理念としては、言葉が通じないまま人数だけ増やすより筋が通っている。

数字が先に破綻している。出入国在留管理庁が2026年6月時点で日本語教育機関に行った調査を日本経済新聞が分析したところ、育成就労向けに同時に受け入れられる人数は全国で約7500人だった。来日規模は年15万人程度が見込まれる。一度に7500人ずつ回しても、単純計算で年間9万人前後にしか届かず、就業前教育が必要とみられる12万人前後には3万人足りない、という試算もある。席の偏りはさらに極端で、東京が約2200人、大阪が約980人。47都道府県のうち31は100人未満で、実習生の多い愛知・埼玉・千葉では教員不足が目立つ。地方の工場や介護施設に人を入れる制度なのに、教室は大都市にしかない。

本来の受け皿も育っていない。日本語教育機関認定法に基づく認定は留学課程が中心で、就労のための課程は申請自体が少なく、累積認定は数機関にとどまる。2026年春の審査では就労課程の新規認定がゼロだった、という整理もある。文部科学省が公表した2026年度1回目の申請でも、230機関のうち就労課程は4機関にすぎない。既存の告示校は全国800校超あるが、定員の多くは進学希望の留学生が占めており、育成就労の講習に空きを回す余裕は薄い。施行後5年程度の経過措置で、認定課程でなくても登録日本語教員が教え、教員1人あたり同時20人以下、オンラインは総時数の一定割合まで、といった条件を満たせば認められる。入管庁は2026年10月、告示校を含む講習提供可否の一覧も出した。ただしこれは供給不足の先送りで、登録教員のいない県では紙の上の緩和でしかない。

来春に起きるのは、円滑な移行ではなく要件と現実の大きなすれ違いだ。送出側はA1合格者を優先し、集まらなければ本国講習や形式的な100時間で穴を埋める。受入れ企業と監理支援機関は費用負担義務を負ったまま教室を探し、見つからなければ登録教員の巡回とオンラインに頼る。試験に受からない人、講習枠に入れない人、地方で講師が来ない人が同時に出る。1年後の転籍ではA2.1相当、3年後の特定技能移行ではA2.2相当が壁になる。人数枠42万6000人を維持したまま、同時7500人の教室しか用意していない以上、混乱を避ける解はいまのところ見えない。制度は来年始まる。受け皿は、その速度では追いつかない。どうにもならないだろう。それだけは、確実である。

 

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2026.10.04

ドニプロ川橋梁への攻撃

ロシア軍は10月1日から、キエフ市内でドニプロ川にかかる主要な橋を相次いで攻撃している。橋がこれまで攻撃を受けたことはなく、2022年2月の全面侵攻開始以来、首都の主要な道路橋が標的になるのは初めてである。ただし、橋はまだ落ちておらず、川の横断も絶たれていない。攻撃の狙いは橋の破壊そのものというより、橋の機能を繰り返し止めることにあるように見える。

最初に狙われたのは南橋(ピヴデンニー橋)である。南橋は道路と地下鉄の緑線を併設する全長1キロ超の幹線で、1日には3回の攻撃があり、うち1回は橋脚付近だった。2日の夕方には、この橋への攻撃は2日間で5回目に達した。橋脚、ガードレール、路面、地下鉄線路沿いの防護コンクリートが損傷し、車両も地下鉄も止まった。3日には標的が北橋(ピヴニチニー橋)に移り、路面とトロリーバスの電力設備が損傷して、2人が負傷した。4日にも北橋が被弾し、橋への攻撃は4日連続となった。ロシア国防省は橋が部隊や軍事物資の移送に使われていると主張し、主要都市のインフラへの攻撃を強化すると表明している。

被害の出方には一貫した特徴がある。壊れているのは路面、欄干、架線、防護コンクリート、橋脚の付け根付近で、主桁が折れて橋が落ちるような損傷は出ていない。南橋については、専門家が致命的な損傷はないと判断した。ウクライナ側の専門家も、ドローンだけで橋を落とすのは難しいと見ている。それでも機能は落ちる。安全が確認できない間は、当局が自ら通行を止めるからだ。橋は壊れなくても、使えない時間が生まれる。

少ない橋に負担が集中する

この仕組みが効くのは、キエフの橋が少ないからである。ドニプロ川の橋は8本とされ、9本と数える報道もある。そのうち南橋は、キエフとオデーサ、ハルキウなどを結ぶ幹線につながり、2019年の情報では1日に10万〜11万台が通る。侵攻前は市民300万人の3分の1超が東岸に住んでいたが、勤務先の大半は西岸にあるため、通勤の流れは橋に偏っている。南橋が止まると、ほかの3本も規制され、残る橋に車が集中する。6日朝にも南橋、パトン橋、メトロ橋で大きな渋滞が発生した。南橋は車両が通れる状態に戻ったと報じられたが、北橋は一部車線の封鎖が続いている。

代替策も用意され始めている。復興・インフラ相は、土手状の横断路と浮橋を当面の策とし、将来は川底トンネルも検討するという。しかし浮橋は車線数、耐荷重、速度が本橋に及ばず、水位の変化や再攻撃にも弱い。フェリーは容量がさらに小さく、空襲警報中は止まりやすい。本橋の規制が続くかぎり、応急策では穴を埋めきれない。

橋が標的になりうることは、以前から知られていた。2022年にはウクライナ軍がヘルソン方面のドニプロ川の橋を攻撃し、ロシア軍の補給を断っている。意外なのは、攻撃の手段のほうだ。インフラ攻撃の主力はこれまで巡航ミサイルや弾道ミサイルだった。高価で数に限りがあり、首都圏の防空で一定数は迎撃できる。橋は点目標で、外れれば川に落ちるため、高価な兵器を何発も使うのは割に合わないと見られていた節がある。実際、3年以上にわたって、キエフの主要道路橋は直接の標的にならなかった。

今回使われたのは、高速のジェット推進型ドローンである。1発で橋は落とせなくても、路面に当たれば通行は止まる。安価なので、同じ場所を何度でも狙える。損傷が修復しやすい部位にとどまるのは、弾頭の力の限界でもあるが、開通したあとにまた閉鎖できるという効果とも合致する。ロシアが修理しやすい部位だけをあえて選んでいると断定できる公開情報はない。それでも結果として、修理が終わるかどうかより、開通と閉鎖の繰り返しのほうが、都市機能にとって重い負担になっている。

示威の意味も大きい

軍事上の実利だけでも、攻撃は説明できる。南橋は主要幹線につながっており、トラックと地下鉄を止めれば、兵站にも通勤にも響く。それでも示威の色合いは濃い。侵攻開始から手を付けなかった首都の橋を、主要幹線から順に叩き、着弾の映像が残っている。4日の攻撃は、ドイツのメルツ首相がキエフを電撃訪問した日に起きた。首相はジーメンス・エナジーなどの幹部を伴い、約11億ドルの軍事支援と約3.94億ドルのエネルギー復旧支援を発表する予定だった。首相は、ドイツはロシアに威嚇されないと述べた。ロシアはその前日、外国の外交官や国民に首都から退避するよう警告している。

ゼレンスキー大統領は、プーチン大統領が9月に、空爆で戦争のルールを無視するよう軍司令官に命じたとの見方を示している。キエフでは空襲警報と爆発音が約4時間おきに続いている。冬を前に、電力、通信、港湾への攻撃も並行して進んでおり、単発の報復とは考えにくい。

現時点で確実に言えるのは、横断は絶たれていないが、限られた橋の機能を安価に止め直せる手段が実証された、ということだ。今後、ほかの橋や発電、通信への攻撃が同じテンポで続くなら、今回の攻撃は威嚇というより、都市機能を消耗させる攻撃の初手だったと、後から読めるだろう。規制は警報の状況と修復の進み具合で日ごとに変わる。見るべきなのは閉鎖が続いているかどうかではなく、橋が使えなかった時間の累積である。



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2026.10.03

中国の過剰生産は止まらない

10月2日、米国のグリアUSTR代表は、中国などの過剰生産を「受け入れない」と言い切り、数週間以内に対抗措置を出すと告げた。同じ日のG20議長声明では、対応を強める案を数か国が拒み、米国は失望を表明している。言葉は強い。だが10月6日現在、過剰生産を理由とする新しい関税は、まだ出ていない。

米国は強硬そうに見えて、手の内は思ったより狭い。土台は3月11日に始めた301条調査である。これは米国の通商法に基づき、相手国の不公正な慣行を調べ、関税で対抗できるようにする制度で、中国を軸に16の国・地域が対象になった。7月24日には強制労働を理由とする12.5%がすでに上乗せされ、8月にはさらに7.5%を足して計20%にする案も漏れた。9月30日には、中国を呼ばない鉄鋼フォーラムで、関税の強化と赤字工場への補助金抑制がまとまっている。しかしUSTRが握っているのは、米国向けの出口を狭める関税だけだ。中国の地方のしくみを作り変える権限は、どこにもない。

その中国では、国内の需要が足りないのに、工場が閉まらない。住宅不況で建材は売れず、家計の消費も弱いため、作ったものを国内で売りきれないのだ。その分は輸出に回り、2025年のモノの貿易黒字は約1.2兆ドルに膨らんだ。それでも設備は余っている。工業の稼働率は74.4%まで下がり、とくに自動車と電気機械で落ち込みが大きい。需要が減れば生産も減るのが普通だが、中国ではそうなっていない。

実際、2026年前半は、輸出が伸びても在庫が積み上がるばかりで、生産は大きく絞られなかった。EVでは各社が値を削り合い、売っても儲からない「内巻」と呼ばれる消耗戦に入っている。それでも中国商務部は7月28日、これは過剰ではなく競争力だと述べ、そもそも米国に認定する権限はないと退けた。数字が悪いことと、設備を減らすことは、中国の論理では別の決定なのである。

なぜ過剰生産が抑えられないのか。問題の出発点は、地方の幹部にある。彼らの成績は、利益ではなく投資・雇用・税収で測られるからだ。たとえば隣の市が電池工場を誘致したとしよう。自分の市が手をこまねけば、投資も雇用も隣へ逃げる。だから土地と電力と融資を差し出して、同じ工場を建てる。これが全国で繰り返されれば、総量が需要を超えるのは当然であり、「ここで止めよう」と言える立場の者は、地元には一人もいない。しかも地方政府は、かつて土地使用権の売却収入に大きく頼ってきた。不動産不況でそれが細るほど、企業誘致は貴重な財源になる。工場を畳めば税と雇用が同時に消え、自分の任期中の数字が悪化する。残して輸出に回すほうが、評価の上では合理的なのだ。

企業と銀行も、同じ方向を向いている。主な銀行は国有で、失業と不良債権が表面化することを嫌い、赤字の会社にも融資を続ける。国有企業や政策分野の企業は、市場なら退出する水準でも操業を続けられる。損失は銀行と地方政府が分け合い、安値のしわ寄せは外国の同業に出る。しかも中央政府は、EV、電池、太陽光、半導体を戦略産業と位置づけ、国内の買い手が現れる前に生産能力を作らせている。地方は補助金でそれに応える。需要が追いつかなければ、余った分は輸出に回る。雇用を急に減らさないことが成長率より上に置かれているので、大規模な閉鎖は、そもそも選択肢に入りにくい。

余った生産能力を国内で吸収してくれるはずの家計も、頼りにならない。所得が家計に残りにくく、消費の比率は低いままだ。住宅不況で鋼材や建材の内需が落ちても、その分を消費が埋めることはない。余った能力は国内の値下げだけでは消えず、外へ押し出される。思い返せば、米国は2018年から対中関税を重ねてきたが、幹部の評価基準も、銀行の延命も、中央の産業リストも変わらなかった。関税は工場の門ではなく、売り場の入り口にしか触れない。

だから、10月2日にUSTRが予告した措置がどのような形で実行されても、変わるのは米国の棚である。米国向けが細った分は、すでにEUへ流れ込んでいる。中国は新興国にも売り先を広げ、第三国で最終加工をして原産地を変え、米国に戻すこともあるだろう。当面は米国以外に売れるので、工場は動き、雇用は残る。

それでも受け皿は無限ではない。安値は利益を削り、在庫はすでに積み上がっている。他国が扉を開けたままなら生産能力は減らず、扉を閉め始めれば、摩擦が世界に広がるだけだ。しかも関税は、輸入する米国の川下産業にもかかる。米中が関税の引き上げを互いに見合わせている休戦の期限、11月10日が、交渉の天井になるだろう。つまり、数週間以内に出てくるのは、過剰生産の終わりではない。次の関税の日付である。

 

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2026.10.02

なぜ沖縄の地銀三行は統合しそうにもないのか

2026年10月2日、盛岡で記者会見があった。青森みちのく銀行を傘下に持つプロクレアホールディングス、岩手銀行、秋田銀行が、経営統合の協議を始めると発表した。目指すのは2028年4月。合併はせず持ち株会社方式で、合算した総資産は13兆円規模、東北最大になる。人口減少が全国に先んじる北東北で、県境を越えて規模を足す、という説明だった。2025年には第四北越フィナンシャルグループと群馬銀行が統合で合意し、しずおかフィナンシャルグループと名古屋銀行も続いている。地銀再編は、同一県内の整理から、隣県どうしの陣取りに移っている。地方銀行は大変だ、そうなのか?沖縄では、その話が一度も表に出ない。

なぜ沖縄では地銀統合の話が出ないのか。理由は、観光が好調だからではない。現金を一緒に運べなかったから、というのが暫定的な答えだが、どういうことか?

2021年1月、琉球銀行と沖縄銀行は「沖縄経済活性化パートナーシップ」を結んだ。事務の共同化で3年に約20億円を削る、という中身で、経営統合は最初から外してある。発表の場で沖縄銀行の山城正保頭取は「経営統合はありえない」と言い、琉球銀行の川上康頭取は「競争が弱まって客が損をするかどうかが線だ」と答えた。目玉は現金輸送の共通化だった。2年後の2023年1月、日経はこれが頓挫したと報じている。幹部の言葉は「意外とできないことが多いと分かった」だった。

共同化はその後、相手を替えて進んだ。琉球銀行は第3の銀行、沖縄海邦銀行と折半出資で「ゆいパートナーサービス」(浦添市、資本金1,000万円)を作り、2023年12月から現金輸送と行内メール便を任せ、2025年1月には現金整理まで寄せた。統合ではなく、ライバルのうち1行とだけ裏方を共有した、という結果である。相続届の書式だけは、海邦とコザ信金も加えて4者で揃えた。

そもそも3行の出自はかなり違う。琉球銀行は1948年、米軍布令で通貨発行まで担う特殊銀行として開業し、復帰で普通銀行になった。沖縄銀行は1956年、県内初の市中銀行としてできた。海邦銀行の前身は1949年の無尽で、1964年に中央相互銀行となり、1989年に普通銀行へ転換した。本店はいずれも那覇の久茂地周辺に集まる。2026年3月末の海邦は総資産8,202億円、預金7,674億円、貸出5,823億円、従業員737人、拠点は店舗内店舗を含めて37だ。メインバンクのシェアは、東京商工リサーチの調査で琉球41.6%(6,489社)、沖縄39.0%(6,081社)、海邦12.7%。上位2行が合併すれば8割を超える。東北の3行が足しに出るのと、向きが逆である。

他県で再編が進むのは、貸出のパイが縮むからだ。沖縄では縮み方が違う。2025年の入域は1,075万5,800人で暦年過去最高、2025年度の観光収入は1兆747億円と初めて1兆円を超えた。外国人約284万人のうち台湾が112万人、約4割を占める。2025年度の地銀3グループはそろって大幅増益で、理由に挙げられたのはこの観光と、日銀の利上げである。

誤解する人も多いが、沖縄の米軍基地そのもののからの所得は小さい。県の推計では2019年度の基地関連収入は2,712億円、県民総所得の5.5%で、復帰直後の15.5%から落ちている。大きいのは名目の方だ。2026年度の沖縄振興予算は2,647億円。辺野古では、沖縄防衛局が2023年度に発注した大浦湾側のC1護岸が、当初契約から約3倍の780億円まで変更契約で膨らんだ。変更は入札を経ない。元請けは本土のゼネコンである。県内に残るのは下請けと賃金と、地権者の用地料だ。

そして、ダークサイド。雇用は別帳面になっている。2026年7月の完全失業率は3.0%で全国2.4%、15~29歳は4.9%と前年より1.3ポイント悪化した。有効求人倍率は0.9倍台まで落ちる月がある。最低賃金は2025年12月に1,023円で初めて1,000円を超え、2026年12月2日発効分で1,086円、高知と並ぶ45位タイまで来た。1人当たり県民所得は2023年で約231万円のままである。

銀行が3行で黒字なのは、この外部需要が貸出を支えているからで、雇用を見てもわかるが、県内の産業が活発だからというわけでもない。かりゆしがコロナで手放した那覇のホテル2棟を、琉球銀行系のファンドが一旦持ち、2025年に買い戻させたのは、抜けていく資産を県内に引き戻す動きだが、これは例外に近い。

北東北が県境を越えて一つの持ち株会社を目指す日に、沖縄で統合の話が出ないのは、免除があるからではない。現金すら共同化できなかった2行が、国費と海外、特に台湾からの観光客で、まだ各自の帳簿を埋められているからである。

 

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2026.10.01

ロシアで放映されるテレビドラマ『731部隊』

2025年9月に公開された中国映画『731』(海外題 Evil Unbound)があったが、ロシアでも同じ部隊名を冠したドラマが作られ、2026年10月8日から国内の配信サービスで公開される。タイトルは『731部隊』(Отряд 731)。全8話、各話約50分の歴史ドラマで、配信先は KION と PREMIER である。制作国はロシア、制作は映画会社 Triix Media、支援はインターネット発展研究所(ANO IRI)と大統領直属の国立歴史記憶センターで、「時効なし」プロジェクトの一環として位置づけられている。監督はアルメナク・ナジキヤン。キャストには日本人俳優の木下順介、中国人俳優のワン・ビン、セルビア人俳優のペタル・ゼカヴィツァらが名を連ねる。木下は、1965年10月12日、香川県高松市生まれ。2010年からモスクワ在住で、ロシア映画やドラマに日本人役で出続けている。

中国映画と名前が似ているため混同されやすいが、中身は別物である。中国側は731部隊の人体実験そのものを描いた劇場映画で、2025年9月18日前後に中国、オーストラリア、ニュージーランドで公開され、その後米国とカナダでも限定公開された。公開日は1931年の満州事変(柳条湖事件)の記念日に合わせてある。ロシアのこのドラマは、1945年の満州と、あろうことか2022年のウクライナを往復させ、過去の戦争犯罪を現在の戦争の物語に接続する配信ドラマである。海外の放送局や劇場公開の予定は発表されていない。日本で普通に視聴できる作品ではない。

公式が置いている筋

制作側の説明では「実話に基づく」とされている。国内の情報機関が生物兵器と化学兵器の脅威と闘う物語だとされ、二つの時代を舞台にする。1945年、ソ連の情報機関は731部隊の存在と、日本が対ソ生物兵器の使用を準備していることを知り、対抗作戦を始める、というのだ。現代パートでは、2022年にロシア特殊部隊がウクライナにあるアメリカの研究所を制圧し、そこではスラブ系住民を選択的に殺害できる遺伝子兵器が開発されていた、という設定が置かれる。調査の結果、その開発は731部隊の記録に基づいていた、という筋である。PREMIER の作品紹介はさらに具体的で、標的をロシア人、ベラルーシ人、ウクライナ人としている。

監督はロシアの報道に対し、信憑性のため歴史コンサルタントと協力したと述べる一方、実写シリーズであるためドラマ上の課題にフィクションを入れたとも認めている。外国人俳優との仕事は初めてで、現場ではすぐに打ち解けた、という制作話も添えられている。歴史考証を前面に出しつつ、物語としての脚色を自ら認めている点は、後で触れる受け取り方に関係する。

史実として残る部分

当然ながら、731部隊そのものは創作ではない。正式には、関東軍防疫給水部で、ハルビン郊外の平房を拠点に、捕虜への人体実験と細菌戦を行った。対象には中国人、朝鮮人、ソ連人(ロシア人を含む)がおり、ペスト、コレラ、炭疽、凍傷、生体解剖などが記録されている。施設内の死者は少なくとも数千人とされ、中国本土での細菌戦による被害はそれを大きく上回るとの推計もある。1945年8月、ソ連軍の満州進攻の直前に日本側は施設を破壊し、幹部の多くは本土へ撤退した。ソ連は一部の要員を捕らえ、1949年のハバロフスク裁判で裁いている。

戦後、アメリカが石井四郎らを極東国際軍事裁判で訴追せず、実験データと引き換えに免責したことも、機密解除文書で確認できる。1947年、フォート・デトリックの調査官エドウィン・ヒルは、人体実験への良心の呵責ゆえに自国では得られない情報だと書き、支払いはその価値に比べればわずかな額だったと記した。1988年のロサンゼルス・タイムズ報道では、フォート・デトリックの広報が、情報をソ連の手に渡さないための共同決定だったと認めている。マッカーサー司令部の諜報責任者チャールズ・ウィロビーのメモも、情報を諜報経路に留めることが事実上の免責だと述べている。

とはいえ、ロシア側の紹介文にある「部隊とその実験結果の支配権を米軍が完全に掌握した」は正確ではない。施設は日本側が破壊し、現地はソ連が占領した。アメリカが得たのは日本での尋問と提出資料であり、部隊そのものを接収したわけではない。石井が戦後フォート・デトリックに常駐した、という流布話も確認されていない。彼は日本で1959年に死去している。

現代パートは別の話である

さて、困惑するのは問題は、1945年ではなく、2022年との接続にある。ウクライナの研究所でスラブ人だけを殺す遺伝子兵器が見つかった、という筋は、2022年春からロシア国防省が繰り返してきた主張そのものであり、当然独立した検証はない。

実在するのは、ソ連崩壊後の病原体管理と感染症監視のための公衆衛生施設である。米国防総省は、2005年以降の生物脅威削減プログラムで、ウクライナの約46の検査・診断施設に約2億ドルを投じたと説明している。目的は炭疽菌などの保管強化と診断能力であり、生物兵器の開発ではない。米国、ウクライナ、国連はこの兵器計画の存在を否定している。

民族選択型の生物兵器についても、当然だが、科学的な裏付けがない。ありえようもないが。2022年、モスクワ大学などのロシア人生物学者は公開書簡で、この主張を明白な虚偽であり、進化的に不可能だと批判したものである。ヒトの遺伝的差は、民族単位で兵器の標的にできるほど大きくない。「スラブ人のDNA」という区分自体が科学として成立しない。オーストラリアの研究者オリバー・ジョーンズも、DNA検査で分かるのはおおよその地域的祖先であって国籍や民族ではない、と述べている。ロシア側が証拠として出した菌株リストにも、通常の疫学実験室にある菌株が含まれ、一部はロシア企業から購入されたものだった。

つまり、このドラマは、文書化された戦争犯罪を入り口にしつつ、侵攻の正当化に使われてきた未検証の物語を「実話」の枠に入れているトンデモ作品である。

なぜ今、この題名なのか

支援元を見れば、娯楽としての偶発的な企画とは言いにくい。ANO IRI はロシアのインターネット上のコンテンツ政策に関わる機関であり、国立歴史記憶センターは大統領直属である。「時効なし」は、大祖国戦争の被害と加害の記憶を国家の物語として固定するプロジェクトで、ナチス犯罪の時効否定を旗印にしながら、対象はソ連に対する加害全般へ広がっている。731部隊は、その枠に入れやすい題材である。被害者が中国人、朝鮮人、ソ連人に及び、加害者が日本であり、戦後の免責にアメリカが関与した。三つの相手を一つの物語に並べられる。

同様に、中国映画『731』も国家的な記憶政治と無縁ではなかった。公開日を満州事変に合わせ、興行成績を愛国的な記録として報じるやり方は、被害の記憶を現在の国家物語に接続している。ただし描いている中心は、施設内の実験と細菌戦という、史料と生存者証言が積み上がった過去である。ロシアのシリーズはそこから一歩踏み出し、2022年の戦場で同じ脅威が続いている、と観客に信じさせる構造になっている。題名の共通性は、史実の共有ではなく、記憶の利用法の違いを隠す。

日本人俳優を起用し、歴史コンサルタントと協力したと強調するのも、同じ効果を狙っている。画面に日本語と中国語とセルビア語が混ざれば、国内向けの政治ドラマではなく国際的な歴史劇に見える。監督の「現場ではすぐに打ち解けた」という発言は制作の美談だが、作品の政治的機能とは別である。

日本としてどう受け止めるか

日本で配信されない以上、視聴者の多くが本編を見ることはない。日本では話題にもならないのではないか。だから、それでも無視してよい、ということには、まあ、ならない。題名だけが国境を越えて回り、紹介文の一文が引用される。そのとき必要なのは、作品を見ていないことへの弁解ではなく、何が史実で何が接続なのかを分けておくことである。

当然ながら、日本人としては、731部隊の事実から目をそらす材料にしてはならない。国内の教科書や映像作品がこの部隊を十分に扱ってこなかったことは、海外のドラマや映画が「日本が隠している話」として流通する余地を広げてきた。中国映画が興行的に成功し、ロシアが同じ名前で現代戦と結びつけるのは、その空白の上に乗っている。否認や矮小化は、プロパガンダ側の「日本は今も向き合っていない」という図式を補強するだけである。ハバロフスク裁判の限界、アメリカの免責取引、日本側の戦後処理の不十分さは、相手が誰であれ残る事実である。まあ、彼らは森村誠一の『悪魔の飽食』は読んでもいないだろう。

改めて述べるまでもないが、731部隊の被害者は中国人が最も多く、朝鮮人、ソ連人、一部の連合国捕虜も含まれる。その記憶は、どの国家の情報機関の所有物でもない。中国が自国の被害として映画にし、ロシアが自国の情報機関の英雄譚に書き換えるのは、基本的にはそれぞれの国内政治の話である。日本側が取るべき態度は、どちらの物語の脇役になることでも、両方を同じ単なる「反日作品」として片づけることでもない。実験と細菌戦の事実を確認し、免責の取引をアメリカとの戦後関係の暗部として置き、民族兵器の話は根拠のない接続だと分けなくてはならない。特に、1945年の犯罪が実在することと、2022年に民族選択兵器が開発されていたことは、いくらなんでも話がつながっていない。

 

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