中国のコンビニは低迷
YouTubeで中国の夜の街を見ていると、美団の黄色と淘宝閃購の青を背負った配達員が、信号のたびに群れをなしている。飲み物も電池も解熱剤も、注文から10数分でマンションの入口に着く。
日本の住宅街で同じ光景に出会うことはほとんどない。足りないものは、セブン-イレブンかローソンかファミリーマートまで歩いて買う。この差は好みの違いというより、便利さの意味が違うことの表れだ。もっとも、画面に映るその群れは中国の全部ではない。地方までは同じ密度で届いていない。届かせている人の側にも、もう1つの中国がある。
街角が倉庫に変わる
中国の都市部では、コンビニエンスの定義を即時配送に書き換えてしまった。半分のコンビニチェーンが2026年上半期に売上減を報告したが、その注文は10分、1ドル未満で届く。中国連鎖経営協会が会員60社、12万7872店を調べた同じ半期では、純増は1391店にとどまった。2025年上半期の4093店、2024年通年の9570店から急減速している。来店が減った企業は71.7%、売上が減った企業は50%、純利益が減った企業は60%だった。畢馬威と協会の報告では、2025年の単店日販は4453元で前年比3.9%減、来店客数は8.7%減、純利益率は3%を下回る。
シェアを奪っているのは、美団閃購、淘宝閃購、京東小时达である。商務部の研究機関は、即時零售が2026年末に1.2兆元(約1780億ドル)へ達し、2030年まで年12.6%で伸びると見ている。コンビニ業界全体の売上は4000億元台だから、規模ですでに上回る。ロイターが報じた分析公司のデータでは、2026年第2四半期のシェアは淘宝閃購が45.7%、美団が45.3%、京東が7.7%と、食事の宅配から日用品へ主戦場が移っている。在庫の置き場も店頭から閃電倉へ移り、美団と淘宝だけで数万の小型倉庫が、回転の速い商品だけを置いて配送する。上海や広州では、店員が来店客よりピック作業を優先し、地下鉄の開通で地上に出ない通勤が増えた。街角には量販スナック店まで並び、北上広深は飽和に近い。
日本系も例外ではない。ローソンは中国1万店の目標を2025年末から2031年へ先送りし、100元均一の「ローソン100」は最盛期の約1200店から600店余へ縮小して生鮮寄りに転換した。セブン-イレブンも、景気の鈍さと現地勢の宅配攻勢で出店計画が未達になる公算が報じられている。店は残っても、客はアプリ上の倉庫から買っている。
普及は全体的ではない
地方は、この転換の前段にいる。地方では賃貸と人件費が低く、現代的なコンビニの浸透が遅れている。湖南の新佳宜は、県城では1杯の挽きたてコーヒーのために5分余計に歩く客がいる、ただし価格はチェーンカフェより安くなければならない。ローソンは川渝と広東で小型の「ローソン小站」を出し、美宜佳、十足、見福も県城の社区へ出店を移している。次の10年は都市の街角ではなく県城の社区を取る、という見立てができる。
即時配送の伸び率だけ見れば、地方の方が速い。美団は県レベルの利用者と地元サービス注文の伸びが大都市を上回るとしており、中国日報も同様に伝えている。県と郷鎮の消費財小売は、2026年1〜7月で全国の39.1%を占める。美団研究院の試算では、県域の即時零售は2022年の約843億元から、2026年に2400億元を超える見込みだった。選ばれる理由も都市と違い、近くの店に欲しい商品がない、営業時間を過ぎた、が市区より高い。供給の薄さそのものが需要になっている。
届く範囲はまだまばらである。辺境の県では美団に載っているのが古茗や蜜雪冰城と飲食数店だけで、最近の配送が20キロ先、という場所が残る。全国約1800の県は人口の半分超を抱えるが、10分配送が標準なのは、決済の習慣が厚い2線寄り、東部と南部の県城に偏る。美団の前置倉スーパー「小象超市」も57都市、前置倉2000超まで広げたものの、主戦場はまだ2線とその周辺だ。地方で先に店を埋めているのは、鳴鳴很忙のような量販スナックで、2025年末に2万1948店、約6割が県と郷鎮、1401県を覆う。鮮食はコンビニ、価格はディスカウント、急な不足は美団、という分担が県城から始まりつつある。
配送者が失業の緩衝材である
この速さを支えている労働も、画面の後ろにある。国家統計局の都市調査では、学生を除く16〜24歳の失業率は2026年8月に18.9%まで上がり、1年ぶりの高さだった。25〜29歳は7.5%で、30〜59歳の3.9%とは段差がある。この夏の大卒は過去最多の約1270万人だ。2023年6月に21.3%を記録したあと、当局は学生を分母から外して公表を再開しているので、体感より統計の方が低く出る。フィナンシャル・タイムズは、配食と配車で働く人を2025年時点で5300万人超と推計し、労働市場の巨大な緩衝材と呼んでいる。
配送人は若い方に寄っている。美団の職業報告では、18〜24歳の割合が2024年に上昇し、月によって25〜34歳を上回って最大の年齢層になった。業界集計の平均年齢は28歳前後、美団の男性騎手は30歳前後だ。全国総工会は網約配送の従事者を1400万人超とし、県城2000余まで広がっているとする。登録ベースでは、価格競争の間に2000万人近くまで膨らんだという推計もある。瑞銀は、日量1.1億件を回すのに必要な熟練騎手は約400万人で、登録の多くは余剰だと見ている。
中身は新卒の失業者だけではない。高頻度の配送者は農村戸籍の出稼ぎが多く、既婚で子のいる30代が厚い。45歳以上が1割を超え、女性も増えた。学歴は高校以下がまだ多数で、大専以上は2割台、本科は数%から7%程度という報告が並ぶ。卒業後の受け皿であると同時に、工場や建設からあふれた人の中継地でもある。高線都市の高頻度騎手の月収は、美団開示で7000〜1万元台だ。正社員より入りやすい代わりに、単価が下がればすぐ削られる。
つまり、若年の就職難が、10分配送を安く回せる人員を供給する。その人員が多すぎると、配送者同士の奪い合いで単価が下がり、同じ人がさらに長く走る。2025年の補助金合戦で騎手が急増したあと、注文がピークの日量2億件超から1.1億件前後へ戻ると、5人で1件を奪う状態になった、という報道はその帰結だ。即時配送は若者の失業から生まれたわけではない。その失業を吸収し、同時に安さの前提にしている。
日本コンビニ業態に影響しないだろう
このような変化が日本のコンビニで起きるとは考えにくい。まず人件費が違う。中国のモデルは、大量のギグワーカーが低単価で短距離を走り続けることで成り立つ。美団はピーク時に即時配送の日次注文が1.5億件に達したと公表したが、その裏では2025年に販売促進費が膨らみ、通年で234億元の純損失を出した。日本では最低賃金が上がり、配送を担う若年層は減っている。16〜24歳の失業率が常時2割近く、大卒1200万人超が毎年あふれる緩衝材もない。Uber Eatsや出前館、menuが食事の宅配を広げても、飲料1本に手数料を載せて全国で回す補助合戦は始められない。
それと、日本ではコンビニ店がすでに近すぎる。2026年8月末の国内店舗数は、セブン-イレブンが約2万1900、ファミリーマートが約1万6400、ローソンが約1万4600で、住宅から徒歩圏にほぼ隙間がない。中国の都市では店舗網が完成する前にアプリが飛び越え、地方では店の薄さ自体がアプリの需要になった。日本では、書き換える前の答えが角に残っている。少量の買い足しのためにアプリを開き、配達を待ち、手数料を払う動機が薄い。
そもそも日本の建物と道も中国風のコンビニ業態に向かない。中国の新区は同じ間取りの高層住宅が密集し、入口までの動線が短い。県城でも、商業施設の不足が配送の理由になる。日本の都市部は路地と一方通行が多く、オートロックのマンションでは最後の数十メートルが詰まる。電動自転車の規制も厳しく、歩道を群れで走るモデルは受け入れられにくい。密度が高いように見えて、10分圏の採算は中国より悪い。
日本でも食事の宅配は残るし、重いものや悪天候の日の即配も広がるだろう。ただ、それは日本のコンビニを空洞化させる主流にはなりにくい。中国で驚いた光景は、低賃金で走れる若年と出稼ぎの余剰、高層団地、未完成の店舗網、巨額の補助金が重なったときにだけ標準になる。地方ではその重なりがまだ斑で、本当に遠い鎮までは配達員の群れは例外のままだ。日本の1本の飲み物は、これからもそこのコンビニ店が担うだろう。
| 固定リンク




