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2026.09.02

長期金利3%で、見落とされがちな「実効金利」

長期金利が3%に上昇すると、「国債の利払い費が増え、日本財政への懸念が強まる」といった説明がしばしばなされる。もちろん、金利上昇が財政にまったく影響しないわけではないが、長期金利が3%になったという事実だけから、直ちに財政悪化を論じるのはあまり適切ではない。重要なのは、「市場金利」と「実効金利」を区別することである。さらに、金利がなぜ上昇したのか、経済成長との関係はどうなっているのかまで見なければ、財政への影響を正しく評価することはできない。

市場金利3%と、政府が実際に払う金利は違う

「長期金利が3%になった」と聞くと、政府が抱える国債全体に3%の金利がかかるようになったかのような印象を受ける。しかし、実際にはそうではない。政府の財政負担に直接関係するのは、その時点の10年国債の市場金利ではなく、既に発行されている国債も含め、政府が債務全体について実際にどの程度の金利を支払っているかを示す「実効金利」である。

住宅ローンを考えると分かりやすい。世の中の住宅ローン金利が今日3%に上がったとしても、数年前に1%の固定金利で借りた人のローン金利が、その日から3%に変わるわけではない。国債も基本的には同じである。政府が過去に0.5%や1%といった低い金利で発行した国債は、市場金利が上昇しても、その条件のまま満期まで残る。3%という新しい金利が効いてくるのは、新たに発行する国債や、満期を迎えて借り換える国債からである。

そのため、市場金利が3%になったからといって、政府債務全体の利払い負担が一気に3%になるわけではない。高い市場金利が続けば、借換えが進むにつれて実効金利も徐々に上昇するが、その影響は時間をかけて現れる。したがって、「長期金利が3%になった。政府債務は巨額である。だから財政負担が急増する」という議論は、国債の満期構成と実効金利を無視したものである。

もちろん、「実効金利が低いから財政は安心だ」と言うことではない。市場金利が上昇すれば、いずれ実効金利も上昇する。しかし、財政への影響を考えるなら、現在の市場金利をそのまま政府債務全体に当てはめるのではなく、まず実効金利が今後どの程度の速度で上昇するのかを見る必要がある。

金利上昇は「財政不安」だけで起こるわけではない

こうした議論で問題となるのは、長期金利の上昇をそのまま「市場が日本財政を不安視している証拠」と解釈してしまうことである。長期金利は財政だけで決まるものではない。長期金利は、大まかに言えば、将来の短期金利がどの程度になると予想されているかに、長期間資金を貸すことに伴うさまざまなリスクを加えて決まる。したがって、経済成長や物価、日銀の金融政策について市場の見方が変われば、財政状況に大きな変化がなくても長期金利は上昇する。

内閣府の経済財政モデルでも、すでにそのような構造が組み込まれている。短期金利は、潜在成長率、物価上昇率、物価目標からの乖離、GDPギャップなどに反応する。経済活動が強まり、物価が安定的に上昇し、GDPギャップが改善すれば、中央銀行は政策金利をより高い水準にすることが合理的になる。その結果、将来の短期金利の予想が上がり、長期金利も上昇する。

こうしてみると、金利上昇には二つのまったく異なる場合があることがわかる。経済が弱く、政府の信用力に疑問が生じたために金利が上がる場合もあれば、経済が強くなり、デフレから脱却し、金融政策が正常化するために金利が上がる場合もある。表面上はどちらも「長期金利上昇」であるが、経済的な意味は正反対になる。

実際、内閣府の中長期試算では、成長率が高いケースほど長期金利も高くなる。高い成長が続けば、需要が強まり、賃金や物価が上昇し、政策金利も正常な水準へ向かうためである。それでも高成長ケースでは、政府債務のGDP比はむしろ低下していく。

本当に見るべきなのは「実効金利と経済成長の関係」である

財政の持続可能性を考えるうえで、本当に重要なのは長期金利の絶対的な水準ではなく、政府が実際に負担する実効金利と、経済全体がどの程度成長するかの関係である。

また、政府債務の負担を見るときには、債務残高そのものだけでなく、債務残高をGDPで割った「債務残高対GDP比」が重要になる。政府債務が増えればこの比率は上がるが、GDPがそれ以上に増えれば比率は下がる。

したがって、金利が上昇して利払い費が増えることは財政にとってマイナスであるが、それだけで財政の行方が決まるわけではなく、実質経済が成長すればGDPは増える。物価や賃金が適度に上昇すれば名目GDPも増える。さらに税収が増え、基礎的財政収支が改善すれば、債務そのものの増加も抑えられる。

これをあえて極端に単純化するなら、実効金利が2%であっても、名目GDPが4%程度で成長している経済と、実効金利が1%であっても名目GDPがほとんど成長しない経済では、必ずしも後者の方が財政的に健全とは限らない。前者では債務にかかる金利負担が増えていても、それ以上の速度で経済という分母が大きくなる可能性があるからである。

この点が、長年の日本経済を考えるうえでも重要になる。超低金利が続いていたからといって、それ自体が財政の健全さを意味していたわけではない。デフレや低成長によって経済全体が拡大しなければ、金利が低くても債務残高対GDP比は改善しにくい。一方、経済が成長して金融政策が正常化すれば、長期金利は上昇する。それでも名目GDPの成長や財政収支の改善が金利負担増を上回れば、債務残高対GDP比を引き下げることは可能である。

内閣府の中長期試算も、まさにこの関係を示している。高成長ケースでは、長期金利は上昇し、それに伴って実効金利も徐々に上がっていく。それでも、実質成長、物価上昇、財政収支改善の効果が金利上昇の悪影響を上回るため、債務残高対GDP比は低下する。逆に成長が弱ければ、金利が比較的低くても債務比率の改善は進みにくい。

だから日本財政について本当に問うべきなのは、「10年国債金利が3%になったかどうか」ではなく、「市場金利の上昇によって実効金利が今後どこまで上がるのか」「それに対して名目GDPはどの程度成長するのか」「基礎的財政収支はどうなるのか」という組み合わせである。



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