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2026.09.26

終わらなかった戦争――エチオピア北部で再び戦火

日本の報道ではほとんど扱われないようだが、アフリカ東部のエチオピアで、再び大きな戦争の影が広がっている。

2026年9月23日、北部ティグレ州で連邦政府軍とティグレ人民解放戦線(TPLF)の戦闘が本格化し、2022年11月の和平合意は事実上、崩壊しつつある。空港の掌握、州境を越えた攻撃、通信の遮断。2020年から2022年にかけて五十万人規模の死者を出した戦争の記憶が、現地では生々しく蘇っている。

遠い大国が、いま揺れている

エチオピアは、人口一億を超えるアフリカ第二の大国であり、首都アディスアベバにはアフリカ連合の本部もある。日本からは遠いこともあり、コーヒーやマラソン以外の話題は届きにくいが、この国の不安定化は、紅海の航路、隣国スーダンの内戦、エリトリアとの緊張と直結しており、アフリカの角全体を揺さぶる問題である。

今回の火種は、2020年11月から2022年11月にかけてのティグレ戦争が、核心部分を残したまま凍結されたことにある。

連邦政府とTPLF、さらに当時は政府側についたエリトリア軍が絡む大規模紛争の末、南アフリカ・プレトリアでの合意によって停戦したが、西部ティグレの帰属、避難民の帰還、武装解除、地域政府の正統性は先送りされた。

今年に入ると、2026年5月、TPLFは戦前の州政府を復活させ、8月1日以降は小規模な衝突とドローン攻撃が続いた。9月20日、TPLFを含む複数の武装勢力が「生存のための同盟」を発表し、アビー・アハメド首相の政権打倒を掲げる。9月23日、ティグレ側がメケレ、アクスム、シレの空港を掌握し、戦闘は隣接するアムハラ州とアファール州へ広がった。

北部はティグレ、その南と西にアムハラ、東にアファールが接する。ジブチへ向かう物流回廊もこの一帯に近く、戦闘が長期化すれば経済の動脈にも影響する。

敵同士が手を組む、新しい構図

四年前と違うのは、かつての敵同士が一部で共闘している点である。2020年戦争では政府側だったアムハラのファノ民兵が、今回はティグレ側と並ぶ場面が報じられている。オロモ解放軍など他地域の勢力は同盟に名を連ねつつも、足並みは揃っていない。

9月24日、政府軍はアムハラ州北ウォロでTPLF戦闘員272人を殺害したと発表したが、数字は独立検証されていない。政府軍は「戦略的な抑制」を強調し、全面戦争を避けたい姿勢を見せているものの、双方が相手の先制を非難し、情報は大きく食い違う。

政治面では、少し振り返るが、2026年6月1日の総選挙で与党繁栄党が大勝し、6月21日に開票結果が発表され、アビー首相の続投が決まったものの、ティグレなどでは投票自体が行えず、野党のボイコットも目立った。選挙の圧勝と北部の戦火が同時に存在するのが、いまのエチオピアのねじれである。

経済は走り、北部は崩れる

奇妙なことに、エチオピアの経済は別の軌道を走っている。

IMFは2025/26年度の成長率を9.2パーセントと見込んでおり、金とコーヒーの輸出、債務再編、為替改革が進む。9月24日にはジブチとの燃料パイプライン構想の起工も報じられた。

それでいて、北部ではすでに現金不足、通信障害、援助トラックへの攻撃が起きている。国連は9月25日、ドローン使用と民間人被害、人道支援の停滞に深刻な懸念を表明した。アファールでは十万人規模の避難も伝えられる。戦争が拡大すれば、改革の成果は一気に吹き飛ぶ。

現状、メケレの街は、表向きは日常が続いているように見えても、住民の不安は深い。前回戦争では封鎖によって食糧と医療が途切れ、死者の多くは戦闘そのものより飢餓と医療崩壊であった。同じ悲劇を繰り返さないためには、戦闘の早期停止と人道回廊の確保が急務である。

残された三つの道

エチオピアの今後の展望は三つに分かれるだろう。第一は、政府が限定的な反撃で抑え込み、国際仲介で再び停戦に戻るシナリオである。第二は、北部が長期の低強度紛争になり、国全体の資源を削り続けるシナリオである。第三は、エリトリアやスーダンが深く巻き込まれ、地域戦争化する最悪のシナリオである。

2026年9月26日時点では第一と第二の間にあり、まだ第三へ落ち込む前の段階だ、というのが多くの観察者の見方である。

日本にとって遠い話に聞こえるかもしれないが、紅海の安定、アフリカの成長市場、難民と食糧危機は、いずれも無関係ではない。

エチオピアは「終わった戦争」の国ではなく、「終わらせきれなかった戦争」の国である。ウクライナ戦争やイランの戦争に国際状況の関心が無垢が、エチオピアの状況は看過できない。なぜ和平が壊れたのかを丁寧に見ることである。抑制と対話の余地が、まだ残されているうちに対応が望まれる。

 

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