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2026.08.19

米国のICC制裁を日本は容認できない

2026年8月18日、米国務長官マルコ・ルビオ氏は国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長(日本人)と上級裁判弁護士アブドゥライエ・セエ氏に対する制裁を発表した。資産凍結、渡航禁止、米国企業との取引制限であり、ドル基軸体制の下では、事実上の国際金融排除に近い措置である。BBC報道も伝えるように、これはトランプ大統領の「突発的な反応」ではない。2025年2月の大統領令に基づく、計画的かつ体系的な「ICC解体」キャンペーンの最新段階である。

すでに11人以上のICC職員が制裁対象となり、ルビオ長官は「レンガを一つずつ崩すように解体する」と公言する。理由はアフガニスタンでの米軍捜査と、ガザ戦争をめぐるネタニヤフ首相らへの逮捕状である。米国とイスラエルはICC非加盟国であることを盾に、「管轄権を超えた権限乱用」「主権侵害」と位置づける。大国が自国や同盟国に不都合な国際司法を、制裁という力で無力化する。これが「米国による国際司法への挑戦」の実態である。

この事態を、日本は「他国の問題」として看過できるだろうか。答えは、日本国憲法前文にある。

「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」

前文が示す「信頼」は、感傷ではない。戦後日本が武力による威嚇や行使を放棄し、安全と生存を国際公共財に委ねた、制度的な前提条件だ。ICCはまさにその「公正と信義」を体現する常設機関の一つである。

日本は最大の分担金拠出国であり、赤根智子氏は日本人として初めての所長だ。同盟国である米国が、自国民である所長を「制裁対象」に指定した事実は、象徴的に深刻である。

外務省は「大変残念だ」との報道官談話を出し、ICC支持を再確認した。しかし、超党派の人権外交議連などは「日本国民に対する制裁」「法の支配に対する重大な侵害」と強く非難し、首相・外相名での明確な抗議を求めている。沈黙は、前文の決意を自ら空洞化させる行為にほかならない。

日米同盟は日本の安全保障の柱だが、同盟国が国際司法を公然と攻撃する状況で「友好」を優先すれば、日本国憲法の前文が依拠する規範的抑止は弱体化する。結果として軍事的抑止への依存が強まり、日本の戦略的自律性は損なわれる。中国やロシアが「選択的適用」を正当化する先例にもなりかねない。

日本国憲法に示される「公正と信義に信頼する」とは、信頼に値する秩序を維持するために自ら関与する義務を伴う。日本は同盟関係を維持しつつも、国際司法の独立性を守る明確な立場を示すべきである。赤根氏の職務を守り、ICCの権威を支えることは、憲法前文が宣言した「われらの安全と生存を保持しようと決意した」その決意を、現代において実践することである。

大国よる「公正と信義に信頼する」挑戦を看過すれば、日本が依拠する前提そのものが崩れる。憲法前文は、私たちに問いかけている。

 

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