高市内閣の支持率低下について
高市内閣の支持率がここにきて急落し、併せて国会の混乱を指摘する声が強まっている。読売新聞の直近調査では支持率が57%に落ち込み、発足以来最低を更新した。物価高対応への不満や重要法案に対する説明不足が主因とされる。が、その背景にある「混乱」の本質をどう捉えるべきか。私は、この混乱の多くが野党側の分裂と非統合に由来するものであり、政権がそれをあえて受け入れている点にむしろ成熟した統治の姿を見る。
まず、制度的な仕組みを確認したい。衆議院で3分の2を超える議席を握る高市内閣は、憲法第59条に基づき、参議院が否決または60日間採決しない法案を再可決で成立させることができる。予算案や条約についても衆院の優越が明確だ。2026年2月の衆院選で自民党が316議席を獲得したことで、この権力は戦後稀に見る強固なものとなった。極端に言えば、野党の審議拒否や態度硬化をほぼ無視し、数の力で法案を押し通す道は常に開かれている。
しかし、高市内閣はそれを全面的には使っていない。今国会終盤で焦点となった副首都構想関連法案や衆院定数削減法案、国旗損壊罪創設法案、さらには皇室典範改正案を巡る対応を見れば明らかだ。衆院で与党が圧倒的多数を背景に委員会付託や採決を強行する場面はあったものの、参院での野党の審議拒否が長期化するのを前に、会期延長を繰り返したり、一部法案の優先順位を修正したりする柔軟性を示した。野党が中道改革連合、国民民主党、参政党などに分かれ、足並みすら揃わない状況で、高市政権は「無視できるのにあえてしない」選択を取っている。
この選択は、現状を受け入れていることの表れだ。野党の自律的な統合が期待できない以上、国会が停滞して見えるのは避けられない。だが、政権が数の力を最大限に振りかざせば、手続きの軽視という批判がさらに強まり、支持率の下落を加速させただろう。実際、調査では「国会運営が強引だった」と感じる人が57%に達している。物価高という生活直結の課題を後回しにし、イデオロギー色の強い法案を一気に通すより、混乱を織り込みながら進める方が、長期的な正当性を守れるという判断が働いている。
具体的な事例を挙げよう。皇室典範改正案では、皇族数確保を目的とした旧宮家男系男子の養子縁組規定が盛り込まれたが、説明が「不十分」との声が62%に上った。政権は衆院で可決を急いだものの、参院での慎重審議を一定程度容認し、全面強行を避けた。また、維新の会との連立合意に基づく副首都法案では、野党の反発で会期末に混乱が生じたが、再延長を最終的に見送るなど、押し通す余地を残しつつも現実を優先した。国旗損壊罪法案に至っては、共同提出した国民民主党や参政党が採決を欠席するという異例の展開すら受け入れる形となった。
こうした対応は、権力を持つ者の抑制として評価できる。衆院の圧倒的多数は「決める力」を保証するが、それを常に行使すれば、民主主義のプロセスが形骸化し、有権者の信頼を損なう。野党の混乱と同質の非統合を政権が一方的に解消できるわけではない以上、現状を受け入れ、部分的な合意形成の余地を残すのは合理的だ。物価高対策を加速しつつ、重要法案は時間をかけて説明するスタイルを維持すれば、支持率の回復にもつながるだろう。
権力の行使を自制する選択は、弱さではなく強さの証左である。高市内閣がこの道を選び続けている限り、この範囲内の混乱は「仕方ない」ものとして受け止めるべきだ。
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