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2026.07.17

米国で広がるテストステロン検査と補充療法

米国防総省のピート・ヘグセス長官が7月15日、30歳以上の軍人を対象に、毎年の健康診断の一環としてテストステロン値を検査する方針を発表した。30歳未満の軍人も、希望すれば検査を受けられるとされている。この発表は日本では珍しく感じられるかもしれないが、テストステロン補充療法が広く普及している米国の状況を考えると、まったく突飛な政策とはいえない。

テストステロン補充療法は、一般にTRTと呼ばれている。本来は、血液検査でテストステロン値の低下が確認され、疲労感や性欲低下、筋力低下などの症状がある人に対して行われる治療だ。しかし近年の米国では、医学的な治療にとどまらず、活力や筋肉量、性的機能を高める手段としても注目されるようになっている。

米国におけるテストステロンの処方件数は、2019年の約730万件から、2024年には1,100万件を超えたとされている。また、処方監視データを提供した25州・地域では、2018年から2022年にかけて、処方を受けた人の数が約122万人から166万人へ増加した。ただし、このデータには診断内容や処方目的が不明なケースも含まれており、全米のTRT患者数をそのまま示すものではない。それでも、テストステロンの利用が大きく拡大している傾向は読み取れる。

特に目立つのが、比較的若い年齢層での増加だ。35~44歳では、処方を受けた人数が2018年から2022年までに約58%増加した。25~34歳や24歳以下でも、人口比で見た処方の増加率が高くなっている。ただし、24歳以下のデータには女性への処方や性別移行医療での使用も含まれている。そのため、この数字だけを根拠に、健康な男子ティーンエージャーへのTRTが急増していると結論づけることはできない。

若年層でのテストステロン補充

一方、若い男性の間でテストステロンへの関心が高まっていることを示す調査もある。米国の18~40歳の男性を対象とした調査では、約4割がテストステロン補充に関心を持っていると回答し、約14%がTRTやテストステロン・ブースター、筋肉増強を目的とした関連薬などを使用した経験があると答えている。もっとも、この14%には、医師から正式にTRTを処方された人だけでなく、さまざまな関連製品や薬剤を利用した人も含まれている。
こうした広がりの背景には、DTCと呼ばれる直接消費者向けクリニックや、オンライン診療の普及がある。従来は、医療機関で対面診療を受け、複数回の血液検査や症状の確認を経て治療を始めるのが一般的だった。現在は、インターネット広告をきっかけにオンラインで相談し、現金払いで薬を受け取れるサービスも増えている。その結果、テストステロン治療への心理的、経済的なハードルが下がっている。

若い男性の間では、テストステロンが筋肉、活力、性欲、自信などを高める「自己最適化」の手段として語られることがある。ソーシャルメディアでは、「現代の男性はテストステロンが不足している」といった単純化された主張も広がっている。筋肉質な身体や強い男性性を重視する文化が、若い世代の関心を後押ししている可能性はある。ただし、若年層での処方増加が、マッチョイズムだけによって生じていると統計的に証明されているわけではない。

中高年層でのテストステロン補充

中高年層では、疲労感、性欲の低下、筋肉量や骨密度の減少など、加齢に伴う症状への対処として利用される場合が多くなる。大まかにいえば、若年層では身体能力や男性性の向上、中高年層ではアンチエイジングや生活の質の改善が意識されやすいと考えられる。ただし、両者を明確に分けられるわけではない。若い人が疲労や性的機能の改善を求める場合もあれば、中高年が運動能力や筋肉量の向上を目的とする場合もある。

医学的には、テストステロン値が低いからといって、すぐにTRTが必要になるわけではない。テストステロン値は、時間帯、睡眠不足、肥満、ストレス、病気、薬の影響などによって変動する。そのため、通常は症状を確認したうえで、早朝の血液検査を複数回行い、総合的に診断する必要がある。症状のない成人男性全員を一律に検査することについても、医学界では意見が分かれている。

 

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