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2026.07.08

パトリオットは「作れ」と言われて作れるか

現在、ウクライナが運用するパトリオット・システムは、迎撃弾の深刻な不足に陥っている。そこで、ウクライナのゼレンスキー大統領は、2026年7月8日、トルコ・アンクアラで開催されたNATO首脳会議の合間、トランプ大統領と個別に会談し、ウクライナが防空の要としてパトリオットを求めていると訴えた。

トランプ大統領はこうである。「われわれはあなたにパトリオットを製造するライセンスを与えるつもりだ。これはなかなかいいことだと思う。これで、われわれが十分に与えていないと文句を言うことができなくなる」。

さらにトランプ大統領は、「パトリオットを製造する権利を与える。どうやってやるか教える」「彼らはかなり早く生産できると思う」とも述べた。

前向きな提案のように聞こえる。しかし、この発言はウクライナが現在直面している深刻な防空危機を、すぐに解決するものではないだろう。むしろ、西側全体が抱える「パトリオットという防空システムの限界」を、象徴的に示したものとなった。

現在、ウクライナは、パトリオット・システムによる迎撃弾の深刻な不足に現在直面している。特に高性能なPAC-3型の迎撃弾が足りていない。米国側の年間生産能力は約600〜650発程度とされ、2025年時点での全世界への供給量も620発にとどまったとされる。すでにウクライナは1,600発以上の迎撃弾を受け取ったとされるが、それでもロシアの攻撃ペースに追いつかない。米国自身も中東方面での需要を抱えており、世界全体で迎撃弾の在庫が逼迫している状況である。

この状況にトランプ大統領は応えたことになるだろう。パトリオット・システムは生産面での制約も大きい。生産は技術的にも複雑で、迎撃弾を製造するには特殊な部品と高度な工程が必要となる。実際、今回ライセンス供与が発表された時点でも、実際の製造企業であるLockheed MartinやRTX(旧Raytheon)には、まだ正式に通知すらされていなかった。仮にウクライナがライセンスを得たとしても、工場を建設し、技術者を育成し、サプライチェーンを整えるまでには年単位の時間がかかる。すぐに自国で大量生産を始めることは、現実的に難しい。数年を要するだろう。

また、今回の戦争で戦争のあり方そのものも変化し、防空技術の限界も見えてきている。パトリオットPAC-3は、キンジャールのような空中発射型の弾道ミサイルに対を迎撃に成功した実績がある。しかし、中距離弾道ミサイルであるオレシュニクに対しては、設計上対応が極めて困難である。オレシュニクは複数弾頭と欺瞞目標を搭載しており、高速かつ高高度で再突入するため、PAC-3の能力を超えるケースが多い。ウクライナ軍のシルスキー総司令官も、中距離・大陸間弾道ミサイルを迎撃できるシステムは現時点で存在しないと認めている。そして、ロシアはオレシュニクの生産強化に向かっている。

しかし、現下、深刻なのは、ロシアが多用する「ドローンとの組み合わせ攻撃」であろう。安価なドローンを大量に先行投入してレーダーや迎撃資源を消耗させた上で、キンジャール級の弾道ミサイルを撃ち込むこの戦術は、パトリオットの弱点を突いている。結果として、ウクライナの防空全体の効率が著しく低下している。

西側全体で見ても、パトリオットを中心とした防空体系はすでに疲弊している。長期間にわたるウクライナ支援で迎撃弾が大量に消費され、生産が追いつかない。欧州諸国も自国の在庫を切り崩しており、グローバルな需給バランスは崩壊している状況である。

結局、トランプ大統領が提示した生産ライセンスは、ウクライナに長期的な自立の可能性を示したという点では意味を持つが、現在のキーウを脅かしている即時的な脅威に対しては、ほとんど効果を発揮しない。ロシアはすでにこの限界を理解した上で、攻撃の形態を調整している。西側が「ない袖を振る」状態にある以上、パトリオットに依存した防空戦略には、根本的な見直しが求められている。どうすればよいかについては、わからない。

 

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