ガリバフ辞任が映すイラン内部抗争
2026年4月24日、イラン国際(Iran International)が報じた独占情報が、世界の注目を集めている。イラン議会議長で交渉チーム責任者のモハンマド・バゲル・ガリバフ氏が、米国との協議で「核問題を交渉議題に含めようとした」として最高指導者周辺や強硬派から厳しく叱責され、交渉チームからの辞任を余儀なくされたという内容だ。後任候補として浮上したのは、超硬派のサイード・ジャリリ氏で、外務大臣アッバス・アラグチ氏も主導権争いに加わっているとされる。この報道はFOX Newsが4月26日に大々的に取り上げ、「イラン交渉チームの混乱」「ウルトラ強硬派の台頭」と位置づけ、トランプ大統領の「イラン内部の分裂」発言を裏付ける材料とした。
イラン公式側としては、即座に否定に動いた。議会報道官は「辞任報道は根拠なし」「新たな協議ラウンドも未定」と反論し、ガリバフ氏自身も 𝕏 などで「ファクション間の分裂などない」「全国民の結束」を強調する声明を出した。アルジャジーラやロイター報道もこうした否定を併記しつつ、イスラエルメディア(Channel 12)が「IRGC(革命防衛隊)の干渉が原因」と報じた点を指摘している。Critical Threats Project(CTP-ISW)のようなシンクタンクは、ガリバフ氏の挫折を「現実派の後退」「Vahidi派(IRGC系)の勝利」と分析し、4月23-24日に強硬派・現実派が一斉に「革命原則の統一」をアピールした背景に内部の緊張を読み取っている。
これらの多角的ソースを総合すると、辞任(または事実上の更迭)は単なる人事ではなく、核問題をめぐる「妥協派 vs 抵抗派」の構造的対立が表面化した象徴だと見て取れる。西側メディアが強調するのは、ジャリリ氏の「影の政府」運営歴や反西側ドグマであり、イラン体制の「方法論の違い」はあっても「核追求・権力維持」という核心目標は揺るがない点である。
イラン体制の脆弱性 ― 自壊の兆しと強硬派の逆襲
ガリバフ辞任劇は、先に指摘した第一のシナリオ「イラン体制の自壊(内部崩壊)」を象徴的に加速させる動きとみることができる。経済危機、2025年末からの全国抗議デモ、2月の米イス攻撃による最高指導者周辺の人的損失が重なり、ペゼシュキアン大統領(改革派寄り)のもとでさえ「少しの柔軟性」が許容されなくなっている。ガリバフ氏は比較的現実的な交渉派と見なされていたが、核ファイルを「交渉の軸」に加えようとしただけで即座に排除された事実は、超強硬派やIRGCの影響力が予想以上に強固であることを示す。イラン国民抵抗評議会のアリ・サファビ氏がFOXで語ったように、改革派・穏健派・強硬派の違いは「方法論」でしかなく、抑圧・テロ輸出・核兵器追求という「共通の道」は変わらない。ジャリリ氏の 𝕏 投稿(トランプ嘲笑や「アメリカ秩序の崩壊」予言)も、国内向けパフォーマンスに過ぎず、体制の結束を演出する道具に過ぎない。
しかし、こうした強硬派優勢こそが第二のシナリオ「米国・イスラエルの強行軍事使用」のリスクを高めている。トランプ政権はすでに「Operation Epic Fury」で核施設・IRGC幹部を標的とした大規模攻撃を実行済みで、現在もストレート・オブ・ホルムズへの海軍展開と石油制裁を強化中だ。
ジャリリ氏が核交渉を主導すれば、濃縮加速や代理勢力(フーシ・ヒズボラ)の挑発が再燃し、米イス側が「赤線越え」と判断する可能性は確実に上昇する。イスラエルは「軍事オプションは常にテーブル上」と繰り返し、トランプも「イランが電話してこい」と一方的に交渉を拒否する構えを見せている。第三の現実的道筋である「長期膠着+相互疲弊」こそが、現時点で最も蓋然性も高い。
ジャリリ主導でイランは「積極的抵抗」を叫びつつ核を「閾値ギリギリ」に留め、米国は制裁で経済を絞り、イスラエルは限定的空爆で抑止を続ける。抗議デモは散発的に続き、体制は「弱体化しつつ崩壊せず」という消耗戦に陥る。過去の最大圧力時代(2018-2020)と類似するが、すでに一度戦争を経験した今、イランの耐久力はさらに試されている。
今後の三シナリオ ― 膠着が支配する中東の現実
展開を三つのシナリオで見たい。第一は「イランの自壊」である。これは中長期(数年スパン)で徐々に現実味を帯びるが、即時崩壊は低いと見られるようになった。IRGCの弾圧能力と45年間の体制維持実績が強固である。第二の「米国・イスラエルの強行軍事活動」は、イランが明確に核突破を試みた場合に限定され、トランプの「勝てる戦い」志向から即時全面戦争は避けたいはずだ。
「長期膠着」のシナリオも重視されてきており、ジャリリ台頭でさらに鮮明になるだろう。核合意は幻に終わり、代理戦争は低強度で続き、石油価格高騰と地域不安定化が世界経済に影を落とすことになる。
ガリバフ辞任は「強硬派優勢=体制安定」ではなく、「分裂の加速と脆弱性の露呈」である。トランプの最大圧力はイラン内部の現実派を孤立させているが、逆に硬直化を招く二面性も持つ。イラン情勢は依然流動的で、本当のターニングポイントは次回交渉での核・ミサイル譲歩の有無、または国内抗議がIRGCの忠誠を揺るがすかどうかにある。希望的観測としては、「改革派勝利」や「早期交渉解決」が期待されるが、イラン体制は脆くても粘り強いかもしれない。
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