日台韓のエネルギー政策の問題
韓国のエネルギー政策は、華やかな表層の下に深刻な矛盾を抱えていると、ブルームバーグ論説は「KPop デーモン・ハンター」という映画に喩えた。かっこいいボーイズバンドが表向きで、人類を地下の怪物に捧げる陰謀を隠す物語である。現実の韓国も同様だというのだ。李在明大統領はイラン情勢を挙げ、「化石燃料依存は危険」と再生可能エネルギーへの急速移行を宣言し、2030年までに電力の30%以上を再生可能エネルギー、70%以上をクリーンエネルギー(原子力含む)とする目標を掲げた。駐車場の太陽光パネル義務化など、国際的に注目を集める施策も目立つ。
しかし実態は異なる。一人当たりの石炭消費量はカザフスタン、中国、オーストラリアに次ぐ世界4位である。再生可能エネルギーの発電シェアは10%未満で停滞しており、電力の約60%が依然として化石燃料に依存している。国家独占企業の韓国電力公社(KEPCO)は、送電網の制約を理由に再生可能エネルギーが豊富な東部と済州島への新規発電接続を2032年まで全面禁止した。これは事実上の既得権益防衛策であり、再エネ拡大を阻む最大の障壁となっている。
加えて、地元反対の感情と複雑な規制が事態を悪化させている。済州島の大規模洋上風力プロジェクトは住民反対と巨額の地域還元要求により投資家が撤退した。陸上風力の許可には平均10年を要し、8省庁・22の規制が絡む。結果、南韓の再エネコストは主要国で最高水準となった。イランによるホルムズ海峡封鎖の脅威は、こうした化石燃料依存がもたらす安全保障リスクを露呈している。北朝鮮や中国による機雷・ミサイル攻撃で輸入燃料ルートが断たれれば、大規模火力発電所は格好の標的となる。分散型再エネこそが解決策であるにもかかわらず、政策は「悪魔の取引」の域を出ていない。
台湾も同じ危機に直面している
この論説は台湾の「台北タイムス」の2026年4月21日付社説に全文掲載された。理由は明らかである。台湾自身が韓国と全く同じ脆弱性を抱えているからである。同記事は「台湾と同じく」と明記し、両国が輸入燃料に全面依存し、北朝鮮や中国の非対称戦で容易に供給が断たれるリスクを指摘した。
台湾はLNGと石炭のほぼ100%を海外に頼り、半導体産業(TSMCなど)が国家経済の生命線である。ホルムズ海峡の緊張は台湾のエネルギー価格を直撃し、供給不安を現実化させている。同紙が一貫してエネルギー安全保障を重視する親米・親民主派メディアであることも背景にある。中国の軍事圧力下で、台湾は「他山の石」として南韓の失敗を自らの警告に変えたのである。南韓の教訓は、台湾にとって単なる他国の話ではなく、明日の自国問題そのものである。
日本も直面するエネルギー安全保障の課題
日本も同様の課題を抱えている。一次エネルギーの84~90%を輸入に依存し、石炭発電シェアは2025年時点で27~28%と高水準を維持する。一人当たり石炭消費量も世界的に見て突出している。再生可能エネルギーのシェアは2024年26.7%、2025年も24~27%程度で推移し、旧来の2030年目標(36~38%)は事実上不可能となった。第7次エネルギー基本計画では2040年に40~50%へと大幅後ろ倒しされている。
洋上風力の遅れは顕著で、入札中断やコスト倍増が相次ぐ。電力会社の送電網制約と地方の漁業権・景観反対が南韓のKEPCO問題に酷似する。2026年のイラン情勢では、政府が直ちに石炭火力の稼働規制を緩和し、化石燃料回帰を余儀なくされた。原子力は福島事故後の低迷から15基が再稼働し、2040年20%目標を掲げる点で南韓と共通の成功事例となっているが、全体として輸入依存体質は韓国以上に根深い。
ホルムズ危機は日本の中東依存(石油95%)を浮き彫りにしつつある。分散型再エネと原子力の本格拡大こそが安全保障の鍵であるにもかかわらず、NIMBYと規制の壁がそれを阻む。華やかな先進国イメージの裏で、日本もまた化石燃料依存という「悪魔の取引」に縛られているのである。
南韓・台湾・日本三国は、表向きのクリーンエネルギー志向と現実の化石燃料依存という矛盾を共有する。イラン情勢は、輸入燃料ルートの脆さを全世界に示した。政府、企業、社会が痛みを伴う決断を避け続ける限り、エネルギー安全保障は守られない。真の転換とは、単なる目標設定ではなく、既得権益と感情的な反対を乗り越える実行力であることを、三国ともに直視すべき時期に来ている。
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