イラン新体制の内部分裂を加速させる米国情報戦
現下のイラン状況において米国によるイラン政権内への情報操作の匂いが濃厚である。
最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ死去後、息子モジタバ・ハメネイが象徴的な後継者となったイランでは、実権がイスラム革命防衛隊の強硬派に移り、政権は一見、より過激になったとも見られる。アメリカ・イラン協議会会長として長年イラン情勢を観察してきた人物であるアミラフマディ氏は、フォックス・ニュースの取材で「穏健派が交渉を推せば裏切り者とみなされ、排除・暗殺のリスクが高い」と語っていたが、この発言自体が、米国側が意図的にイラン国内の「深い亀裂」を世界に晒し、拡大させるための材料として機能しているように見える。
トランプ政権は軍事圧力だけでなく、こうした情報発信を通じてイラン内部の対立を加速させ、交渉を有利に運ぼうとしている。
ルビオ国務長官の「内部分裂」発言の戦略的意図
マルコ・ルビオ国務長官はABCの「グッド・モーニング・アメリカ」出演で、イラン内部に「亀裂がある」と明言し、交渉相手の具体名を「公表できない。彼らを危険にさらすから」と拒否したが、この発言は、単なる外交上の慎重さではなく、計算された情報戦の核心であろう。
ルビオはミュンヘン安全保障会議の場でも同様のニュアンスを残し、保守系のフォックス・ニュース記事を通じて世界中に「イラン新体制は分裂している」という印象を植え付けている。
先のアミラフマディ氏もこれを裏付け、「イランで交渉を口にする者はさらなる戦争と破壊の道を開くものと疑われる」と述べ、穏健派が「浸透工作員」と疑われる現状を強調している。つまり、米国があえて公の場で「内部分裂」を指摘することで、イラン国内の強硬派(革命防衛隊の軍人将校たち)は穏健派を「米国の代理人」として標的にしやすくさせている。結果、旧体制の官僚や改革派が孤立し、新体制の過激化がさらに進むという悪循環を生む。これは米国の古典的な「くさびを打ち込む作戦」そのものだ。
穏健派改革者の命がけの交渉リスク
そもそも、イランではイスラム共和国での暗殺は珍しい現象ではなく、内部粛清の歴史は長い。
そうしたなか、ハメネイ時代からの穏健派・改革派は今、マスード・ペゼシュキアン大統領やアッバス・アラグチ外相らを中心に交渉を望む声を出しているが、新体制の実権を握る革命防衛隊幹部である前内相アフマド・ヴァヒディ、ゴドス部隊司令官エスマイル・ガーニ、国会議長モハンマド・バゲル・ガリバフ、アヤトラ・ゴラムホセイン・モフセニ・エジェイらはこうした動きを「裏切り者」と断じ、排除対象にしている。
アミラフマディ氏は「新体制はより強硬な要素で構成され、他者を裏切り者と見なしている」と分析し、「戦場と戦争は強硬派の軍人将校たちの支配下にある」と警告ように、革命防衛隊の軍人中心の新体制は、大学や政府内の非軍事強硬派とも結びつき、政権を「極めて過激な体制」に変貌さつつある。
穏健派がトランプ政権との合意を推せば、即座に「さらなる戦争の道を開く」と疑われ、命の危険に晒されることになるだろう。
トランプ政権の二重戦略、合意と分断の同時進行
この連日、ドナルド・トランプ大統領は「新しくてより合理的な体制」と繰り返し述べ、国防長官ピート・ヘグセスも「イランが賢明なら合意を結ぶべき」「体制変革を経た新体制は前政権より賢明であるべき」と会見で強調している。各種ニュースが報じる通り、トランプは「体制変革はすでに達成した」と公言しつつ、交渉の扉は開けていると見せかける。
つまり、米国は表向き「合意をしたい」と言いながら、ルビオの内部分裂発言やトランプの「新体制」強調でイラン国内の対立を煽り、強硬派をさらに孤立・追い詰める二重構造を取っている。
イラン内部における強硬派・過激派と穏健派・改革派の深刻な溝は、元々存在した亀裂だが、米国による情報発信がそれを「深い分裂」へと変えつつあるが、これは当然ながら評価できる工作とも言い難いだろう。現在の混乱の沈静化後には、穏健派を支援するしかないはずだからだ。
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