ライス元国務長官のFOX出演とイラン攻撃評価
コンドリーザ・ライス元米国務長官は2026年3月4日、FOXニュースの看板番組「特別報告」に出演し、トランプ政権が展開中の対イラン大規模軍事作戦「壮大な怒り作戦」について明確な支持を表明した。
番組で彼女は、米イスラエル共同攻撃によりイラン最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイが殺害されたことを「イランの軍事力を内外で無力化(neuter)する試み」と位置づけ、作戦の正当性を力説した。
ライス氏は「イランは少なくとも47年間、米国と戦争状態にある」と繰り返し、1979年の米国大使館人質事件、1983年のベイルート米海兵隊爆破事件、そしてイラク戦争でのイラン製即席爆発装置による米兵死傷者の75〜80%がイラン由来だった事実を具体例に挙げた。さらに、イランがヒズボラとハマスに武器と資金を供給し、国境を超えた軍事投射能力を構築している点を強調し、「代理勢力との連携を断ち、軍事行動を不可能にする」ことが作戦の核心目標だと述べた。核問題については「外交交渉の失敗」がきっかけになったと触れるにとどめ、主眼を47年にわたる代理戦争の実態に置いた。
フォックスニュースがライス氏を起用した政治的意図
Foxニュースがこのタイミングでライス氏を「特別報告」に招いた背景には、明確な戦略的意図があった。作戦開始からわずか5日目という時期に、民主党や国際社会から「拡大戦争」「違法攻撃」との批判が殺到する中で、Foxは保守層の世論を固め、トランプ政権の行動を歴史的・道義的に正当化する必要に迫られていた。ブッシュ政権で国家安全保障補佐官・国務長官を務め、イラン政策の最前線に立ったライス氏は、共和党支持者にとって「タカ派の権威」であり、彼女の発言は単なるコメントを超えて「専門家の太鼓判」として機能する。
番組ではブレット・ベイヤーがアンカーとしてイラク戦争時の経験を丁寧に引き出し、ライス氏の「ahistorical(歴史無視)」という強い言葉を繰り返し引用することで、視聴者に「これは新戦争ではなく、47年間続いていた戦争の終結だ」というナラティブを植え付けた。
Foxの報道姿勢は、作戦の成功イメージを強調しつつ、議会承認なしの軍事行動に対する国内反対を封じ込め、中間選挙を控えた共和党の結束を強化する狙いが透けて見える。
ライス氏の長期的イラン観と「テロの中央銀行」概念
ライス氏のイラン認識の根底には、核開発よりも「イランが実質的な軍を中東全域に撒き散らしている」という現実がある。
2006年頃、彼女は国務長官として繰り返しイランを「central banker for terrorism(テロの中央銀行)」と呼んだ。当時の議会証言やインタビューで「イランは世界中のテロリズムの資金源であり、レバノンのヒズボラ、パレスチナのハマス、イラク南部の民兵に資金と武器を供給する中央銀行のような存在だ」と明言した。
この表現は単なる修辞ではなく、イラン革命防衛隊(IRGC)のコッズ部隊が代理勢力を「前方展開部隊」として運用し、米国に直接的な損害を与えているという分析に基づくものだった。
イラクでの米兵死傷の大部分がイラン製爆弾によるものだった事実は、ライス氏にとって「すでに起きている戦争」の証左であり、核兵器保有はあくまでその戦争を決定的に不利にする「仕上げ」に過ぎない。
今回の発言でも、この認識は一貫しており、彼女は「イランは国境を超えた軍事能力を開発した」と指摘し、代理勢力の武装・訓練・資金提供を「イランの実質的な軍事力」と定義した。
代理勢力拡散がもたらす実質的脅威とライス氏の戦略的判断
ライス氏にとって、イラン問題の本質はテロ支援国家の枠を超え、「一つの国が複数の実質的な軍隊を中東に展開している」状態にある。ヒズボラには毎年数億ドルの資金とミサイル技術が流れ、ハマスにはロケット弾と訓練が提供され、イラクやシリアの民兵組織も同様に操られている。
このネットワークはイラン本土の正規軍を補完し、米国や同盟国に対する非対称戦争を可能にしている。2006年の「テロの中央銀行」発言は、まさにこの構造を指しており、ライス氏は当時から核問題と並行して代理勢力対策を外交・制裁の柱に据えていた。
「壮大な怒り作戦」では、この認識が作戦の優先順位に直結している。彼女は「イランを軍事的に無力化し、代理勢力との連携を断つ」ことを「worthy(価値ある)」目標と位置づけ、現在イランが「事実上防衛不能」状態にある今こそ、根こそぎ無力化すべきだと主張する。
ライス氏の思考は、核施設破壊を手段としつつ、最終的に「撒き散らされた軍」を根絶することにあり、47年間の歴史を無視した「イランは脅威ではない」という言説を「ahistorical(歴史無視)」と切り捨てる根拠となっている。この視点は、単なる過去の回顧ではなく、現在の軍事行動を支える戦略的判断そのものだ。
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