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2026.01.14

日常生活における多選択性のコストを減す

久しぶりにライフハック的な話題を書いてみたい。テーマは、日常生活における多選択性のコストを減らすということだ。

朝起きてスマホを手に取った瞬間、ホーム画面にずらりと並ぶアプリのアイコンに目がくらむことはないだろうか。通知が次々と鳴り響き、必要なものを探すだけで数分が過ぎてしまう。そんな経験を持つ人は多いはずだ。あるいは、机の引き出しからペンケースを取り出して開いてみたら、古いボールペンや色ペン、使わない消しゴムのかけらがごちゃごちゃと混在していて、黒のペンを探すのにイライラする。

そんな小さな日常のフラストレーションを「多選択性のコスト」と呼んでみたい。このコストとは、選択肢の増加がもたらす隠れた負担である。これが、時間的なロス、精神的なストレス、無駄な労力といった形で、私たちの生活に忍び寄る。現代の生活はモノや情報があふれ、知らず知らずのうちに選択が増しているが、デメリットが目立ってきた。これを認識するだけで、もっとスッキリとした毎日を送れるようになるだろう。ここでは、そんな日常の具体例をいくつか挙げて、多選択性のコストを分析し、簡単な解決策を考えてみたい。

スマホのアプリが多すぎる

スマホのアプリが多すぎるケースは、典型的な多選択性のコストの例である。最初は便利さを求めて次々とダウンロードしたアプリだが、気がつけば百個を超え、ホーム画面が散らかり放題になっていることがある。通知が頻繁に届き、集中したい作業の邪魔になるだけでなく、必要なアプリを探すためのスクロールや検索が日常の時間を少しずつ奪っていく。このコストは、単なる時間ロスにとどまらず、選択肢の多さがもたらす決定疲労として蓄積され、ストレスを増大させる。たとえば、メールアプリが複数あり、どれを使うか迷うだけで朝のルーチンが乱れるなんてことも起こる。こうした状況を放置すると、バッテリーの消耗が早まったり、セキュリティのリスクが高まったりする副次的コストまで生じてしまう。

解決策としておすすめするのは、定期的なアプリの整理である。スマホ自身の機能での削除お薦めにあるが、こうした情報を元に一ヶ月以内に使わなかったものは思い切って削除し、よく使うものをまとめてホーム画面をミニマムに保つといい。こうするだけで、スマホを開くのが億劫でなくなるはずだ。実際に試してみると、通知の数が減り、心の余裕が生まれるのを実感できるだろう。

ペンケースの使わないペン

ペンケースの中の使わないペンについて考えてみよう。雑然としていないだろうか。学生時代から溜め込んだ色々なペンが混ざり、必要な一本を探すのにケースをひっくり返さなければならない状態は、意外と多くの人が抱える問題である。この複雑さは、視覚的な混乱を生み、毎日の準備時間を無駄に長引かせる。使わないペンが増えると、管理そのものが面倒になり、結局新しいペンを買ってしまうという悪循環に陥りがちだ。コストとしては、時間だけでなく、金銭的な無駄や精神的なイライラが積み重なる形になる。たとえば、出かける直前にペンを探して遅刻しかけるなんて、避けたいものだ。

ここでのシンプル化のコツは、ペンケースを一度空っぽにして、本当に日常的に使う三本から五本だけを選んで戻すことである。残りは寄付したり処分したりして、ケースを軽くする。こうすると、探す手間がなくなり、毎日のスタートがスムーズになる。こうした小さな習慣が、全体の生活リズムを整えてくれるのだ。

キッチンの調味料棚のごちゃごちゃ

キッチンの調味料棚がごちゃごちゃしているのも、多選択性のコストが顕在化しやすい場面である。スーパーで面白そうなスパイスを買ってみたものの、賞味期限が切れて棚の奥に眠っている。そんな調味料がいくつも並んでいると、料理のたびに棚を漁る手間が増え、モチベーションが下がってしまう。このコストは、食材の廃棄につながる金銭的損失だけでなく、視覚的なクラッターが心の負担になる点にある。たとえば、夕食の準備で必要な醤油を探すのに他の瓶をどかさなければならないと、料理自体が面倒に感じて外食が増えてしまうかもしれない。さらに、ゴミ出しの複雑さがこれを悪化させる要因になる。自治体によって細かく分けられるゴミの分別ルールが煩雑で、賞味期限切れの調味料を捨てるのも一苦労だ。瓶の分別、プラスチックの分別、燃えるゴミの分別と、ルールを思い出すだけで時間がかかり、結局棚に放置してしまう。このような連鎖が、生活の非効率を招く。

解決のためには、一度棚をリセットしてよく使う調味料を手前に配置し、期限のチェックを月一回の習慣にすることである。使わないものは早めに処分し、ゴミ出しのルールをまとめたメモをキッチンに貼っておくと便利だ。こうして棚をシンプルに保てば、料理の時間が短縮され、健康的な食生活がしやすくなる。

「いざというときのために」の課題と廃棄のプロセス化

日常生活の多選択性を生む大きな課題の一つが、「いざというときのために」という心理である。滅多に使わないアプリを「念のため」残したり、古いペンを「いつか使うかも」と取っておいたり、珍しい調味料をストックしたり、古着を溜め込んだりする習慣が、知らずに選択の負担を増大させる。

こうした備えを維持することは一見賢明のようだが、実際には選択肢の肥大化を招き、時間ロスやストレスを生む悪循環の元凶である。根本的な解決は、廃棄手順をプロセス化することにある。

まず、アイテムを分類し、使用頻度を評価する(例:一ヶ月未使用なら候補)。次に、廃棄基準を決める(寄付、売却、処分)。ゴミ出しの場合、自治体の分別ルールを事前にリスト化し、メモとして活用する。雑然とした状態を写真にとって、AIでリスト化しておいてもいい。またAIを使って、廃棄順の評価を決めておいてもいい。

こうしたプロセスを習慣化すれば、捨てるためらいが減る。空間と心の余裕が生まれる。シンプルさは無駄な決断の負担も削減する。

 



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2026.01.13

地方自治体による無償化はしばしば愚かな政策となる

人気取り行政に潜む歪み

日本では少子化対策や子育て支援として、学校給食費の無償化が急速に広がっている。文部科学省の調査によると、2023年時点で公立小中学校の給食費を完全無償化した自治体は全体の約30.5%に達する。しかし、この政策は自治体レベルで推進される場合、しばしば近隣窮乏化的な側面を露呈し、全体として非効率で愚かなものとなる。自治体間の人口奪い合いを激化させ、財政格差を拡大する仕組みが問題の本質である。

無償化政策の仕組みとゼロサムゲーム

学校給食費無償化は、子育て世代の経済的負担軽減を目的とし、自治体の一般財源(地方税や地方交付税など)から支出される。典型的なケースでは、食材費や一部運営費を公費でカバーし、保護者からの徴収をゼロにする。文部科学省の資料では、無償化実施自治体の約75%が全員対象としており、財源は主に地方税収に依存する。

しかし、自治体単独で推進されると、これは明確なゼロサムゲームを生む。子育て世代(特に30〜40代の転入しやすい層)は、支援が手厚い自治体へ流入する傾向が強い。人口が増加した自治体は税収が向上し、さらに政策を強化できる。一方、流出した自治体は子ども数が減少し、税収が減少して支援を縮小せざるを得なくなる。これは国際政治における近隣窮乏化(beggar-thy-neighbor)政策に酷似する。結果、日本全体の少子化は解決せず、自治体間の格差だけが拡大する。

さらに、効果検証が不十分である点も深刻だ。無償化実施自治体のうち、成果目標を設定し効果を検証しているのはわずか13〜16.5%程度に過ぎない。出生率向上への寄与が限定的で、政策の持続可能性も低い。文部科学省の報告書では、無償化の課題として「自治体間格差」「公平性の確保」「効果検証不足」を繰り返し指摘しており、国の役割分担を強く求めている。

実例1:前橋市の給食無償化

群馬県前橋市では、2024年に小中学校の給食費完全無償化を実現した。約14億円の予算を投じ、市長の公約として早期に推進された。この政策は子育て世代の支持を集め、市長の再選(2026年1月)の大きな原動力となった。市は人口流入を狙ったが、実際には近隣の高崎市や伊勢崎市などからの転入を促す形となり、群馬県内全体の格差を拡大している。

財政的には一般会計の1%程度で賄えるが、他の分野(インフラ整備や高齢者福祉)の予算が圧迫されるリスクが高い。全国的に見て、この無償化は「地元限定の人気取り」と批判されており、少子化対策としての効果は薄い。文部科学省のデータでも、無償化実施自治体の出生率向上は限定的で、むしろ自治体間の不毛な競争を助長している。

流山市の「子育てモデル」

千葉県流山市は「母になるなら、流山市。」のスローガンで有名だ。保育料軽減や医療費無償化、学校給食関連支援を積極的に推進し、人口増加率が全国トップを維持している。つくばエクスプレス開業以降、子育て世代の流入が急増し、合計特殊出生率も全国平均を上回る。

しかし、これは近隣の松戸市や柏市などからの人口奪い合いが主因である。流山市の財政負担は増大し、保育園数は17園から100園以上に拡大したが、財源は税収増に依存する不安定な構造だ。専門家からは「不毛な自治体間競争」との指摘が相次ぎ、日本全体の少子化解決には寄与しないと分析されている。流山市の成功は一見華やかだが、近隣窮乏化の典型例である。

東京多摩地域の格差拡大と23区との対比

東京23区ではほぼ全ての区が小中学校給食費を無償化しているが、多摩地域では半数近くが未実施だ。財政力の差が原因で、23区の豊かな税収に対し、多摩の自治体は負担が重く、住民の不満が高まっている。例えば八王子市では無償化が進まず、近隣23区への人口流出が問題化している。

2024年の報道では、「多摩内格差」が拡大し、子育て世代の転出が加速している。これは自治体間の財政格差が無償化の実施を左右し、教育機会の不平等を生む仕組みを示す。文部科学省の調査でも、都道府県間で給食費に1.4倍の差があり、無償化が地域格差を助長すると懸念されている。

自治体は競争ではなく、連携を重視すべき

これらの実例から、地方自治体による無償化はしばしば愚かな政策であることがわかる。地元優先の判断が短期的な人気取りとして機能する一方、全国視点では人口の再配分に過ぎず、少子化の本質的解決にならない。財政力の強い自治体が優位となり、弱い自治体はさらに衰退する。

文部科学省の報告書では、無償化の課題として「自治体間格差」「公平性の確保」「効果検証不足」を挙げ、国の役割分担を求めている。全国市長会も「すべて国費でまかなう仕組み」を緊急に提言している。真の対策は、国による一律負担と所得制限付きの格差是正である。自治体は競争ではなく、連携を重視すべきだ。こうした視点で政策を再考すれば、日本全体の少子化対策が進むだろう。

 

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2026.01.12

突然の解散報道が揺るがす政局

高市早苗首相が2026年1月23日召集予定の通常国会冒頭で衆院を解散する検討に入ったという報道が、政界を震撼させている。この情報は1月9日夜に読売新聞がスクープとして報じ、投開票日は2月上中旬が候補に浮上した。内閣発足からわずか3ヶ月、支持率が7割を超える高水準を維持する中での判断は、政権基盤の強化を狙ったものと見られる。しかし、予算案の成立を遅らせる可能性や、党内での慎重論が相次ぐ中、この報道は単なる政治日程の調整を超えた意味を持つはずだ。メディアの情報戦や自民党内権力闘争の影が色濃く映し出されており、日本政治の構造的な問題を露呈している。

読売新聞スクープの異常性とメディアの混乱

この解散検討報道の端緒となった読売新聞の記事は、極めて異例の形で世に出た。通常、首相の重大判断は官邸から複数メディアに同時リークされ、統制された報道がなされる。ところが今回は読売だけが先行し、具体的な日程案まで明示した。他の新聞社やテレビ局はこれに追従する形で対応を迫られ、現場の政治記者たちは大混乱に陥った。報道関係者らによる報道後の社内会議では「なぜ読売だけが掴めたのか」とも漏れ聞く。この異常性は、情報源が限定的で内部的なものであることを示唆している。

読売の政治部は保守本流のネットワークが強く、政権寄りの報道で知られるが、今回のスクープは政権全体の意志ではなく、一部の勢力による意図的なリークだった可能性が高いだろう。結果として、メディア業界では「勝者と敗者」が生じ、テレビ局の編成は急遽変更を余儀なくされた。こうした現象は、日本のメディアが政権の情報統制に依存している実態を浮き彫りにすると同時に、読売の独占報道は、単なるニュースではなく、政局を動かす戦略的な一手として機能している。

自民党内力学と反対派のリーク戦略

高市首相の解散検討は、自民党内の派閥闘争を背景にしている可能性がある。高市政権は発足以来、積極財政や保守政策を推進し、支持率を高めてきたが、党内基盤は脆弱であり、旧安倍派や麻生派などの既得権層が、参院少数与党の状況を逆手に取り、早期解散に反対する動きを見せている。

報道のタイミングから推測されるのは、自民党内反対派が読売に情報をリークし、高市首相を揺さぶろうとした可能性である。首相本人が解散を本気で検討していたなら、党幹部への根回しを事前に行うはずだが、党内の反応は「寝耳に水」というものが多かった。ある党幹部は「首相からは何も聞いていない」と憤りを隠さない。このリークは、高市政権の求心力を低下させ、予算審議や外交課題を優先させるためのプレッシャーとして働いた。

歴史的に見て、日本の自民党政権ではメディアリークを活用した権力闘争が日常茶飯事である。例えば、過去の解散局面でも、反対派が先制攻撃として情報を流すケースが散見される。高市首相の場合、維新との連立や国民民主党への接近が党内不満を増幅させ、こうした内部対立を招いた。解散報道は、党内の権力バランスを試す試金石となった。

NHKの完璧準備とダメージコントロールの役割

一方で、NHKの対応は対照的に準備万端だったかに見える。読売のスクープ直後、NHKは詳細な報道体制を整え、「首相の正式判断」として落ち着いたトーンで伝えた。これは単なる情報キャッチの速さではなく、高市首相サイドとの密接なチャネルを示している。公共放送として政権情報への優先アクセスを持つNHKは、しばしば官邸の危機管理ツールとして機能する。

今回の場合、読売の「攻撃的」報道を、NHKが「権威的で中立的」な枠組みに再構築した形跡がある。つまり、内部リークによる混乱を、首相の「戦略的判断」に転換し、世論を安定化させたのである。

時系列で見ると、読売報道後、官邸がNHKルートを通じて緊急連絡し、NHKが放送開始したと推測される。他の民放が混乱する中、NHKの信頼度が高いゆえに、この再フレーミングは効果的だった。高市政権側はNHKを活用することで、党内反対派の攻撃を最小限に抑え、解散の正当性を強調したのだろう。

こうした仕組みは、NHKの「政治的中立」が実運用では政権寄りになる日本の放送制度の問題を象徴している。結果として、情報戦のかろうじての勝者は高市首相側となり、解散の流れをコントロール下に置いた。

解散の意味と日本政治への示唆

この一連の解散報道は、高市政権の強さと脆さを同時に露呈した。支持率の高さを活かし、衆院選で議席増を目指すのは理に適っているが、予算成立の遅れや真冬の選挙による投票率低下はリスクだ。与野党の反応も活発で、維新の吉村代表は「驚きはない」と余裕を見せ、公明党は準備を急ぎ、立憲民主党と公明の連携深化が報じられている。

一方、国民民主党の玉木代表は「経済後回し解散」と批判し、政局優先の姿勢を問題視した。解散が実現すれば、自民党は単独過半数回復を狙うが、公明票の流動化や野党連携が鍵となる。根本的に、この報道は日本政治のメディア依存と権力闘争の本質を映す鏡となった。

民主主義国の政権はメディアを戦略的に使い分け、情報を操作することで権力を維持するものである。国民にとっては、こうした「情報戦」の裏側を可能な限り注視することが重要になる。

今回の件では、高市首相が最終的に解散を選択するかどうかは、週内の外交日程や支持率動向にかかっているが、いずれにせよ、この出来事は2026年の政局を決定づける転機となるだろう。政治の安定なくして経済・外交の前進はないはずだが、党利党略が優先される現状は、日本の民主主義の課題を投げかけている。

 

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2026.01.11

イランのレジームチェンジのシナリオ

イランでは、2025年12月末から全国的な抗議デモが勃発している。デモは当初経済問題に焦点を当てていたが、急速に反体制運動へ移行し、最高指導者アリ・ハメネイの退陣を求める声が広がるまでに至った。イラン政府側の治安部隊の対応は苛烈で、数百人の死者と数千人の逮捕者を出し、インターネット遮断も実施されている。こうした状況は、2009年のグリーン運動や2022年のマフサ・アミニ事件後の抗議を思い起こさせるが、今回は外部環境の変化が加わっている。さらに、米トランプ政権の強硬姿勢やイスラエルの軍事圧力により、イランの抑止力が弱体化している面もある。

このようにイランは現在、深刻な危機に直面している。2025年のイスラエルとの戦争で軍事力が損なわれ、経済は崩壊寸前である。通貨リアルの暴落、インフレの高騰、失業率の上昇、水資源の枯渇が重なり、国民の生活は極限状態にある。これが引き金となり、レジームチェンジが達成されるとの期待もある。しかし、現状からレジームチェンジが実現するのは難しい。

イスラム共和国は、抗議者を「地上の腐敗者」とみなすことで、治安部隊の暴力を正当化している。1979年の革命以来、イランは抑圧を神学的義務として位置づけている。最高指導者はヴェラーヤト・エ・ファキーフの教義に基づき、神の代理人として絶対的権威を有する。

過去にも生じていた各種の抗議を現体制が乗り越えたのは、こうしたイデオロギーと強固な治安機構によるものである。特に、イスラム革命防衛隊(IRGC)とその傘下のバスィージ民兵が鍵を握っている。バスィージは全国の町や大学に浸透し、監視と抑圧を担う。IRGCは軍事力だけでなく、経済の主要セクターを支配し、富を蓄積している。体制の存続が彼らの利益に直結するため、忠誠心は高い。外部からの制裁や軍事脅威も、かえって国民の団結を促すプロパガンダとして利用されている。レジームチェンジは容易ではないのはこのためである。

変化が生じるとすれば、それは革命防衛隊の関与によるものである。IRGCは体制の守護者であるが、経済崩壊が彼らの資産を脅かせば、自己保存の本能が働く可能性がある。すなわち、IRGCが最高指導者を支え続けるか、軍事ナショナリストの指導体制へ移行するか、または分裂するかで未来が決まる。抑圧が限界に達し、バスィージの忠誠が揺らげば、IRGCの選択が転機となる。内部からのクーデターや一部の離反が、レジームチェンジの引き金になり得るのである。

シナリオ1:抑圧の継続から部分変革へ

レジームチェンジが起きた場合、最初のシナリオは部分的な変革である。これは「ソフトクーデター」と呼べるもので、IRGCが主導し、老齢の聖職者を排除して軍事中心の指導体制を樹立する形である。

最高指導者ハメネイが死亡または退陣し、IRGCの将軍が実権を握る。聖職者の影響力が弱まるため、社会的な自由化が進む可能性がある。例えば、ヒジャブ強制の緩和や宗教警察の縮小が起こるかもしれない。しかし、政治的自由は制限され、独裁的な性格は残る。外国政策はより軍事主義的になり、核開発や地域代理勢力への支援が継続する。

経済的には、IRGCの支配下にあるエネルギーや建設セクターが優先され、腐敗が温存される。このシナリオは、体制の連続性を保ちつつ、国民の不満を一部吸収する。歴史的に見て、エジプトのシシ政権のような軍事独裁に似る。外部勢力、特に米国やイスラエルは、これを容認するかもしれないが、イランのテロ輸出が続く限り、制裁は緩和されない。

この部分変革の利点は、急激な混乱を避けられる点にある。IRGCの経済帝国が維持され、軍の忠誠が確保されるため、市民戦争のリスクは低い。しかし、根本的な改革が欠如するため、長期的に再び抗議が再燃する可能性がある。ハメネイの後継者として息子のモジタバが浮上するケースも考えられるが、IRGCの支持がなければ実現しない。専門家によると、このシナリオは最も現実的で、2026年中に発生する確率が高い。抗議がIRGCの内部分裂を促せば、聖職者中心の体制から軍事ナショナリストへ移行し、イランはより世俗的な独裁国家となる。

シナリオ2:完全崩壊と民主化の道

より劇的なシナリオは、体制の完全崩壊である。IRGCとバスィージの忠誠が崩れ、治安部隊が命令を拒否すれば、革命は成功する。抗議者が主要都市を掌握し、亡命中の王族レザ・パフラヴィが帰国して暫定政府を主導する可能性がある。彼は民主主義と世俗国家を掲げ、国際社会の支持を集めやすい。ポスト・レジームのイランは、憲法改正を通じてイスラム共和国を解体し、議会制民主主義を目指す。新政府は核兵器放棄を約束し、米国との関係正常化を図る。これにより、制裁が解除され、経済復興が進む。石油輸出の回復や外国投資の流入で、インフレが抑えられ、雇用が生まれる。地域的には、ハマスやヒズボラへの支援が止まり、中東の安定化に寄与する。

しかし、このシナリオはリスクを伴う。崩壊過程で市民戦争が発生する恐れがある。IRGCの残存勢力が抵抗し、ロシアや中国の支援を受けてゲリラ戦を展開するかもしれない。イランの多民族構成が問題化し、クルド人やアゼリ人の分離独立運動が活発化する。シリアのバッシャール・アサド政権崩壊後の混乱を想起させる。

外部介入も懸念され、トランプ政権が軍事支援を名目に介入すれば、米軍の長期駐留を招く。専門家の分析では、崩壊後の移行期が6ヶ月から1年続き、自由選挙が実施される。パフラヴィは象徴的な役割に留まり、実際の指導者は改革派の政治家となるだろう。この道は理想的だが、IRGCの完全離反が前提であり、確率は低い。

シナリオ3:分裂と外部介入の影

もう一つのシナリオは、国家分裂である。レジームチェンジが不完全で、IRGCが一部地域を支配し続ける場合、イランは内戦状態に陥る。中央政府の崩壊後、テヘラン中心の暫定政権と、地方のIRGC拠点が対立する。ロシアや中国がIRGCを支援し、米国やイスラエルが暫定政権を後押しすれば、代理戦争化する。

経済はさらに悪化し、石油施設の破壊でグローバルなエネルギー危機を引き起こす。水資源争いが民族紛争を激化させ、難民流出が増大する。このシナリオは、ベネズエラのマドゥロ政権崩壊後の混乱を連想させる。トランプ政権の警告通り、米国が介入すれば、核施設の占領や石油支配が現実味を帯びる。

このシナリオでは、外部要因が鍵となる。米国は核拡散防止とテロ抑制を優先し、制裁強化やサイバー支援でレジームチェンジを後押しする。イスラエルは空爆を継続し、イランの脆弱性を突く。中国は経済利益を守るため、慎重な姿勢を取るだろう。全体として、この分裂シナリオは最悪であり、地域の不安定化を招く。イランの未来は、IRGCの選択と国際社会の対応にかかっている。

 

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2026.01.10

米国の子供の定期予防接種変更

米国疾病予防管理センター(CDC)は、2026年1月5日に子供の定期予防接種スケジュールを大幅に変更した。従来、全ての子供に推奨されていたワクチンのうち6種類を、普遍的な推奨から外したのである。これにより、対象疾患は17種類(または18種類)から11種類に減った。残る11種類は、はしか・おたふくかぜ・風疹、百日せき・破傷風・ジフテリア、ヒブ、肺炎球菌、ポリオ、水疱瘡、HPVなどである。

変更された6種類のワクチンと防ぐ病気は以下の通りである。

  • A型肝炎(Hepatitis A):食品から感染するウイルス性肝炎で、激しい吐き気・黄疸などを引き起こす。1996年以降、ワクチン導入で90%以上減少した。
  • B型肝炎(Hepatitis B):血液や体液から感染し、乳幼児期に感染すると慢性化しやすく、肝がん・肝硬変の原因となる。子供での急性症例は99%減少した。
  • ロタウイルス(Rotavirus):乳幼児の激しい下痢・嘔吐を引き起こす「冬の嘔吐症候群」。2006年導入前は毎年約7万人が入院、50人が死亡した。
  • RSV(呼吸器合胞体ウイルス):乳幼児の入院原因のトップ。毎年数万人が入院し、数百人が死亡する。80%はリスク要因がない健康な子供である。
  • 髄膜炎菌(Meningococcal disease):細菌性髄膜炎で、10%が死亡、生存者の20%に永久障害が残る。主に10代・大学生に多い。
  • インフルエンザ(Flu)COVID:どちらも呼吸器感染症で、子供でも数百人が死亡する(例:直近シーズンでインフル289人死亡)。

これらの変更は、HHS(保健福祉省)の指示で「科学的レビュー」を行い、他の先進国(特にデンマーク)のスケジュールに近づける目的で行われた。ロバート・F・ケネディ・Jr.長官(反ワクチン活動家)が主導した。変更後も、これらのワクチンは保険適用され、希望すれば無料または低額で接種できる。ただし、医師と保護者の相談(共有臨床意思決定)が必要になる。

欧州での扱い

米国での決定を欧州と比較しておこう。欧州諸国(EU/EEA)の子供予防接種スケジュールは国ごとに異なるが、共通の基本ははしか・おたふくかぜ・風疹、ジフテリア・破傷風・百日せき、ポリオ、ヒブ、肺炎球菌、HPVなどである。多くの国で14種類以上を普遍推奨しており、米国従来のスケジュールに近い。

  • デンマーク:少数派で、10種類程度のみ普遍推奨。A型肝炎、B型肝炎、ロタウイルス、RSV、髄膜炎菌、インフルエンザ、COVID、水疱瘡などは普遍推奨せず、高リスク群または相談ベースである。ロタウイルス非導入のため、毎年約1200人の乳幼児が入院している。
  • その他の欧州国:多くはB型肝炎・ロタウイルスを普遍推奨(例:ドイツ、フランス、英国)。RSVは新生児全員推奨の国が増えている。髄膜炎菌・インフルエンザも普遍または幼児対象が多い。COVIDは高リスク中心に変動する。

欧州は公衆衛生への信頼が高く、強制ではなく教育を重視する傾向がある。デンマークモデルは例外で、多くの専門家は「米国は人口規模・多様性が違うため不適切」と指摘している。

日本での扱い

さて気になるのは、日本との比較である。日本では、厚生労働省と日本小児科学会のスケジュール(2025-2026年現在、変更なし)で、定期接種(公費負担)は14種類程度である。B型肝炎、ロタウイルス、肺炎球菌、五種混合(DPT-IPV-Hib)、ヒブ、MR(はしか・風疹)、水疱瘡、日本脳炎、HPVなどが含まれる。

  • A型肝炎:任意。高リスク(海外旅行、汚染食品暴露)のみ。
  • B型肝炎:定期。生後2・3・7-8ヶ月で普遍接種。母子感染防止も重視。
  • ロタウイルス:定期。生後2ヶ月から飲むワクチンで普遍。
  • RSV:定期接種なし。高リスク(早産児など)で考慮されるのみ。
  • 髄膜炎菌:任意。高リスクのみ。
  • インフルエンザ:任意だが強く推奨。毎年幼児対象。
  • COVID:任意。年齢・製品により高リスク推奨。

日本は食品衛生・衛生環境が高いためA型肝炎は普遍不要だが、B型肝炎とロタウイルスは普遍導入しており、接種率は90%以上と高い。

これらの変更の妥当性

CDCによる今回の変更は、科学的・公衆衛生的には不適切であると見るむきが多い。理由は、対象ワクチンが過去に数百万の入院と数万の死亡を防いできた実績があるからである。例えば、A型肝炎・B型肝炎・ロタウイルスの3つだけで200万入院・9万死亡を防いだ(CDC自身データ)。これらを普遍推奨から外せば、接種率低下で再び流行・入院が増える可能性が高い。

今回、CDCはデンマークをモデルにしたが、欧州の多くは米国従来スケジュールに近く、デンマークは例外である。米国は人口が多く、衛生格差・移民が多いため、デンマークのように「入院1200人許容」は現実的でない。専門家は「子供の苦しみを増やすだけ」と強く批判している。

日本のようにB型肝炎・ロタウイルスを普遍推奨している国は成功例であるとみなせるだろう。CDCの今回の変更は保護者の選択を増やすことが名目だが、実際には情報不足の親が増え、予防効果が失われる恐れがある。公衆衛生の信頼を回復するどころか、逆効果になる可能性が高い。

 

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2026.01.09

ロシアのオレシュニク中距離弾道ミサイル攻撃

オレシュニク攻撃の概要

2026年1月8日夜から9日未明にかけて、ロシアはウクライナに対して大規模な複合攻撃を実施した。この攻撃において、中距離弾道ミサイル「オレシュニク(Oreshnik)」が1発使用されたことが、ロシア国防省の公式発表およびウクライナ空軍の報告により確認されている。発射地点はロシア南東部のカプースチン・ヤール試験場であり、標的は西部リヴィウ(Lviv)地域の重要インフラ(おそらく地下ガス貯蔵施設やStriy近郊のガス関連施設)とされている。ウクライナ空軍によると、全体の攻撃では36発のミサイル(うち弾道ミサイル13発、巡航ミサイル22発)と242機のドローンが投入され、オレシュニクは速度約13,000km/h(マッハ10超)の極超音速で飛行し、迎撃できなかったことが報告されている。なお、被害の詳細(特にリヴィウ地域のガス施設の損傷程度)や弾頭分析の最終結果は今後数日で更新される可能性が高いのでその点は留意されたい。

オレシュニクの特徴と使用歴

オレシュニクは極超音速の中距離弾道ミサイルであり、複数個別目標再突入体(MIRV、通常6個)を搭載可能である。この攻撃は2024年11月21日のドニプロ攻撃に続く2回目の実戦投入である。ミサイルは核弾頭を搭載可能な能力を持つが、今回および前回ともに核や通常爆発物の使用は確認されていない。

威嚇目的の「空砲」の可能性が高い

今回のオレシュニク使用は、前回と同様に威嚇目的の「空砲」(inert/dummy warheads、非爆発性の模擬弾頭または不活性弾頭)であった可能性が極めて高い。主要な西側メディア(Reuters、The Guardian、Al Jazeeraなど)およびウクライナ当局の初期報道では、2024年の初使用時と同様に爆発物を搭載しておらず、運動エネルギーによる限定的な損傷しか与えていないと指摘されている。今回のリヴィウ攻撃でもガス圧力低下や供給問題が発生したものの、大規模な爆発や施設の完全破壊を示す証拠は乏しく、人的被害の詳細も限定的である。

The Guardianは「initial reports suggest ... may again have carried inert warheads, indicating the launch was largely symbolic」(初期報道によると、この攻撃で使用されたオレシュニクも再び不活性弾頭を搭載していた可能性があり、発射は主に象徴的な意味合いが強いことを示唆している)と報じており、Reutersも「If the overnight attack carried explosive warheads, it would mark the first time...」(もしこの夜間攻撃が爆発性弾頭を搭載していた場合、それはロシアがオレシュニクを本格的な破壊目的で使用した初めての事例となる)と、爆発性弾頭使用の場合に初めての本格的破壊攻撃になると条件付きで述べている。

ロシア側の主張とウクライナ側の反応

ロシア側はこれを「プーチン大統領の別荘へのウクライナ側ドローン攻撃への報復」と主張しているが、ウクライナおよび米国はこの主張を完全否定している。むしろ政治的・心理的な威嚇を主目的としたエスカレーションのシグナルと見なされている。特にリヴィウがEU・NATO国境(ポーランド国境から約70km)に近い位置にあるため、欧州全体への脅威デモンストレーションとしての意味合いが強い。ゼレンスキー大統領や外務省はオレシュニク使用を明示的に認め、国連安保理の緊急会合を要請し、NATO・EUとの緊急協議を求めているが、弾頭の最終種類については軍の調査待ちの慎重な姿勢を示している。

被害状況と全体評価

被害については、キーウを中心に他のミサイル・ドローン攻撃による住宅被害や死傷者(4人死亡、複数負傷)が目立つ。リヴィウ地域ではインフラへの打撃が主であり、極寒期のエネルギー危機を悪化させる懸念がある。全体として、この攻撃は冬期のエネルギーインフラ狙いと組み合わせた心理戦の強化を示すものである。オレシュニクの希少性・高コストを考慮しても、実質的破壊より威嚇効果を優先した運用と評価されている。

ISW(戦争研究所)の見解

ISW(戦争研究所)の2026年1月8日報告では、オレシュニク使用について「予備的な未確認報告」として扱われており、ウクライナ当局による最終的な弾頭種類の確認がまだ進行中であることが指摘されている。主要西側報道機関(Reuters、The Guardianなど)は弾頭が不活性である可能性を強く示唆しているが、公式に爆発性弾頭だったと断定する報道は現時点で存在しない。初回使用時の前例(dummy warheadsによる限定損傷)を踏まえ、今回も同様のテスト的・象徴的性格が濃厚と見られている。攻撃直後であるため、被害の詳細(特にリヴィウ地域のガス施設の損傷程度)や弾頭分析の最終結果は今後数日で更新される可能性が高い。

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2026.01.07

ベネズエラ石油復興が変えるエネルギー地政学

西半球エネルギー支配の新局面

トランプ政権がベネズエラの石油産業に介入する動きは、単なる資源確保の話ではなく、グローバルなエネルギー地政学を根本的に揺るがす可能性を秘めている。

2026年1月3日、米国軍がベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領とその妻を拘束した直後、ドナルド・トランプ大統領は米国企業がベネズエラの荒廃した石油インフラを修復し、生産を復活させる計画を発表した。これにより、米国はベネズエラから原油供給を受け、市場価格で売却する方針を示した。これはベネズエラの石油埋蔵量が世界最大級であることを背景に、米国が西半球のエネルギー供給をより強く掌握しようとする戦略の一環である。

ベネズエラの生産量は現在、1日約80万から100万バレルに低迷しているが、米国の支援の下で歴史的に300万バレルを超えていた時代に戻せば、米国は北米から南米にかけての石油資源を統合的にコントロールできる立場になる。

エネルギー専門家は、これが米国に価格安定と国際的な影響力拡大をもたらすと指摘する。他方、そのインフラ修復には数年と数百億ドルの投資が必要で、即効性は限定的だとも警告している。米国の石油企業の再参入には地元コミュニティや環境規制のハードルも立ちはだかるだろう。

西半球の石油40%を米国セキュリティ傘下に

米国の思惑が成功裏に進んだ場合、この計画の最大の恩恵は、米国が西半球の石油生産の約40%を自らのセキュリティ傘下に置く点にある。

米国は現状、カナダやメキシコの資源をすでに活用しているが、これにベネズエラの重質油を加えることで、南米のアルゼンチンやブラジルとの連携も強化される可能性が高い。結果、米国はOPECやロシアのような外部勢力に依存せずに、原油価格の変動を抑え、国際的な外交カードとして活用できるようになる。たとえば、欧州やアジアへの輸出を増やせば、米国はエネルギー供給国として新たな経済的レバレッジを得る。

もっとも、これは理想論に過ぎない面もあり、米企業が投資を回収するまでには、地政学的リスクを伴う長期的なコミットメントが求められる。加えて、ベネズエラ国内の抵抗勢力や国際社会からの批判が、計画の遅れを招く恐れもある。

カナダに迫る価格競争と依存強化

対外的に大きな影響を受けるのは同質の石油セクターであるカナダである。カナダにとっては、この動向自体が直接的な脅威となる。現状、カナダの石油輸出の97%が米国向けで、主にアルバータ州のオイルサンド由来の重質油である。ベネズエラ産も同様の性質を持つため、米国精製所がベネズエラ産を優先すれば、カナダ産の需要が減少し、価格競争が激化する。カナダの保守党党首ピエール・ポワリエーブルは、マーク・カーニー首相に対し、太平洋岸への新パイプライン建設を急ぎ、アジア市場への多角化を求めている。これにより、カナダは米国依存から脱却し、主権を維持できるという主張だ。カーニー首相としてもカナダ石油の競争力を強調し、低コストで低リスク、しかも低炭素である点をアピールしている。カナダの生産は安定したガバナンスの下で運営されており、ベネズエラの不安定さと比べて優位性がある。

しかし、短期的に見て、ベネズエラ産の増加がカナダの輸出価格を押し下げ、アルバータ州の経済に打撃を与える可能性が否定できない。エネルギーアナリストによると、カナダの1日生産量は550万バレルを超えるが、米国市場の飽和でアジアシフトが不可避となるだろう。

すでにアルバータ州首相ダニエル・スミスが、先住民共同所有のパイプラインを提案しているように、カナダは内部調整を迫られている。これが成功すれば、カナダは米国からの圧力を緩和し、よりグローバルなプレーヤーになれるが、環境反対派の抵抗や建設コストが障壁となるうえ、アジア市場における地政学的な不安定さも課題だ。

中国の西半球締め出しとエネルギー脆弱性の露呈

今回の米国の動向が与える中国への影響はさらに深刻となる。ベネズエラの石油ルートが遮断されることで、西半球からの締め出しが現実味を帯びる。

中国はベネズエラ産原油の多くを購入しており、一帯一路イニシアチブの一環として数百億ドルの融資を投じ、石油を担保にインフラプロジェクトを推進してきた。トランプ政権の介入でこれらの投資が無駄になる恐れがあり、中国外交部は国際法違反だと非難している。これまで、北京はベネズエラを重要なパートナーと位置づけ、2025年だけでも約47万バレル/日の輸入を記録したが、米国企業が生産を掌握すれば、安価な供給が途絶え、代替調達コストが増大する。

エネルギー専門家は、これが中国のエネルギー安全保障を揺るがすことになると分析している。現状、中国の石油輸入依存度は70%を超え、国内生産では賄いきれないため、ベネズエラのような供給源が重要であった。

加えて、トランプの「西半球から中国を排除せよ」というメッセージは、地政学的緊張を高めるだろう。中国はこれに対し、ロシアからのパイプライン拡大、特にパワー・オブ・シベリア2の推進や、サウジアラビア・イラクなど中東産油国との長期契約強化、さらには中央アジアからの陸上ルート開発を急いでいるが、短期的には打撃を避けられない。

この中国のエネルギー安全保障上の脆弱性を象徴するのが、中国の「マラッカジレンマ」である。中国の石油輸入の約80%が、マラッカ海峡という狭いチョークポイントを通る。この海峡はインド洋と南シナ海を結ぶ戦略要衝で、封鎖されれば中国経済が即座に麻痺するリスクがある。中国はこれを「ジレンマ」と呼び、台湾侵攻のような紛争で米国や同盟国が海峡を封鎖するシナリオを懸念してきた。ベネズエラ産の喪失は、この依存をさらに強調し、代替ルートの必要性を強いる。

中国はパキスタンやミャンマー経由の経済回廊を構築し、数兆円を投じて陸上ルートを確保しようとしているが、治安問題や外交摩擦で進展が遅れている。また、電気自動車や再生可能エネルギーの推進で石油依存を減らそうとするが、工業部門の巨大需要を即座にカバーできない。

結果として、米国がベネズエラを支配すれば、中国はグローバル市場で割高な石油を購入せざるを得ず、経済成長にブレーキがかかる可能性が高い。エネルギーアナリストの見解では、中国の戦略石油備蓄は2026年までに10億バレルを超える見込みだが、紛争時の持続力は限定的である。このジレンマは、中国が海軍力を強化し、インド洋でのプレゼンスを拡大する動機にもなっているが、米国との対立を深める悪循環を生む。

この地政学的変動は、アジア太平洋地域にも波及効果をもたらす。一方、日本にとっては複雑な展開となりうる。中国のエネルギー制約が台湾有事への注力を弱める可能性はあるからだ。だが、マラッカジレンマは日本自身の輸入ルートの脆弱性でもあり、これを補うためには、中期的に日本は米国のエネルギー秩序からの脱却が難しく、事実上の影響下に留まることにもなる。

 

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2026.01.06

2026年-ユーラシア・グループ「トップ・リスク 10」

2026年、ユーラシア・グループは年次報告書「トップ・リスク(Top Risks)」を発表した。このレポートは、同社が毎年1月初旬に公開する旗艦的な年次報告書である。その内容は、当該年に実現する可能性が最も高く、かつ世界に甚大な影響を及ぼす地政学的リスク(政治リスク)をトップ10形式で予測・分析したものだ。

このレポートの目的は、投資家、企業、政府関係者、そして個人がグローバルな不安定要因を事前に把握し、リスク管理や新たな機会の発見に活用することにある。

1998年に設立された地政学リスク・コンサルティング会社であるユーラシア・グループは、2000年代初頭からほぼ毎年このレポートを発行しており、同社の最も代表的な取り組みとして定着している。主要な執筆者は、社長のイアン・ブレマー(Ian Bremmer)と会長のクリフ・クプチャン(Cliff Kupchan)である。

各リスクについて背景、発生確率、潜在的な影響を詳細に解説するだけでなく、世間で過大評価されがちな懸念(Red Herrings:赤ニシン)を併せて指摘する点が大きな特徴である。

以下、2026年のトップ10リスクの概略を述べる。


Risk 1:米国政治革命(US Political Revolution)

トランプ大統領が主導する「政治革命」が、権力のチェック機能を解体し、政府機構を掌握して敵対者に対して武器化しようとする動きである。これは、フランクリン・ルーズベルト(FDR)時代のような過去の執行権拡大とは異なり、システムレベルの変革を目指すものである。トランプの1期目に存在した「ガードレール」はすでに崩壊している。しかし、トランプ自身はこれを「腐敗したエスタブリッシュメントの浄化」と位置づけ、その支持者も「民主主義の回復」と見なしている。潜在的な影響として、米国の政治システムが根本から変質し、国内の報復人事が優先される恐れがある。

Risk 2:過剰電力化(Overpowered)

「過剰電力化」とは、21世紀経済の基幹技術(EV、ドローン、ロボット、先進製造業、スマートグリッド、バッテリーストレージ、AIなど)が依存する「電動スタック(バッテリー、モーター、電力電子機器、組み込みコンピューティング)」を中国が掌握し、米国がその優位を許している状況を指す。2026年、この格差はもはや無視できない水準に達する。将来の経済生産において他国への依存が生じ、米国の競争力は低下する。中国の圧倒的優位が、グローバル経済のさらなる分断を加速させることが懸念される。

Risk 3:ドンロー・ドクトリン(The Donroe Doctrine)

トランプ政権が「モンロー・ドクトリン」を再解釈し、西半球(米州)における米国の覇権を、軍事圧力、経済的強制、選択的な同盟構築、個人的な報復によって主張する方針である。これによって、中国、ロシア、イランの影響力を制限するだけでなく、米国が積極的な優位性を追求することで、政策の過剰執行や予期せぬ結果を招くリスクがある。米国の過度な介入が地域の不安定化を招きかねない。

具体例として、2025年の麻薬密輸船への攻撃、コロンビアやメキシコへの軍事威嚇、コロンビア大統領やブラジル最高裁判事への制裁、パナマ運河の管理権への圧力、ニカラグア・キューバへの制裁強化が挙げられる。一方で、エルサルバドルのブケレ大統領との関係強化、アルゼンチンへの200億ドル支援、ホンジュラス元大統領の恩赦、そしてベネズエラ情勢への関与といった動きも含まれる。

Risk 4:包囲された欧州(Europe under Siege)

欧州の政治的中心が崩壊の危機にあり、フランス、ドイツ、英国の弱体化した政府が、左右のポピュリスト、さらには米政権やソーシャルメディアによる敵対的勢力にさらされている。3大国における現政権の不人気とポピュリズムの台頭により、少なくとも一人の指導者が退陣に追い込まれるリスクがある。最悪の場合、欧州全体が機能不全や不安定化に陥る可能性がある。その影響として、経済停滞への対応、米国の撤退による安全保障上の空白の補填、およびウクライナ支援の継続が極めて困難になる。

Risk 5:ロシアの第二戦線(Russia's Second Front)

ウクライナでの戦闘が膠着する中、欧州における最大の危険地帯はドネツクの塹壕から、ロシアとNATOによる「ハイブリッド戦争(インフラ破壊、空域侵犯、選挙干渉など)」へと移行する。NATO側が反撃を開始すれば、対立はさらに激化する。欧州内での対露衝突が頻発し、ウクライナの弱体化や、不測のエスカレーションを招く「テールリスク(Tail Risk)」が増大する。ロシアによる領土拡大の野心と民間施設への攻撃、およびウクライナによるロシア深部への攻撃が続き、戦争開始から4年が経過しても決着がつかない不安定な状態が続く。

Risk 6:米国型国家資本主義(State Capitalism with American Characteristics)

トランプ政権が「ニューディール政策」以来となる経済介入主義を推進し、企業への政府出資や、個人的・取引的な政策を拡大させる。これはバイデン政権が展開した標的型の産業政策とは異なり、制限となる原則が存在せず、トランプの掲げるアジェンダに沿う企業のみが優遇される。その結果、「クロニー資本主義(身内びいきの資本主義)」が定着し、非協力的な企業は不利な立場に置かれ、ロビー活動が激増する。トランプの「企業への出資は非常にアメリカ的である」という発言や、関税免除を交渉材料にする「壊して修復する(Break and Fix)」アプローチがその典型である。

Risk 7:中国のデフレ・トラップ(China's Deflation Trap)

中国のデフレ・スパイラルが深刻化し、中国政府が介入を拒む事態が想定される。習近平国家主席は2027年の党大会を控え、政治的統制と技術的優位の確保を優先しており、消費刺激策や構造改革を避けている。過剰生産、国内需要の低迷、債務デフレのサイクルが主因である。この影響により、中国国内の生活水準が低下するだけでなく、世界経済にも悪影響が波及する。具体的には、4年半にわたる住宅価格の下落(2008年の米国金融危機に匹敵する規模)、消費者心理の冷え込み、トランプ政権の関税による輸出市場の閉鎖などが懸念材料である。

Risk 8:AIがユーザーを食いつぶす(AI Eats Its Users)

収益化への圧力と規制の欠如により、AI企業がかつてのソーシャルメディアと同様の「破壊的なビジネスモデル」を採用し、社会や政治の安定を脅かす。AIには革命的な潜在能力があるものの、現時点では投資家の期待を下回っており、「幻覚(ハルシネーション)」や能力の不均一性、企業への導入率の低さ(米国企業で約10%)が課題となっている。短期的には生産性向上への期待が裏切られ、AIの広範な普及が遅れる可能性がある。その一方で、バイオ・材料科学分野での研究開発加速や、メール作成、コードのデバッグといった実用面での利用は進む。

Risk 9:ゾンビUSMCA(Zombie USMCA)

米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が更新も終了もされず、再交渉が続く「ゾンビ状態」のまま存続する。トランプ大統領は二国間交渉でのレバレッジ(交渉力)を好み、相手国に譲歩を強いるため、北米貿易は長期的な不安定状態に陥る。カナダに対するデジタルサービス税の廃止要求、メキシコに対する中国産品への関税導入やフェンタニル対策の強制などが焦点となる。輸出の対米依存度が高い両国(カナダ75%、メキシコ80%)に対し、トランプが圧倒的な優位に立って交渉を進めることになる。

Risk 10:武器としての水(The Water Weapon)

水が最も激しく争われる共有資源となる。需要の増大と統治の空白により、水資源の「武器化」が進み、非国家主体が国家の脆弱性を突く手段として利用する。これにより人道的危機が国家安全保障上の脅威へと転じる。人類の半分が水ストレスにさらされ、人口増加、都市化、気候変動が事態を悪化させる。インドのチェンナイ、メキシコシティ、イランのテヘランなどで「デイ・ゼロ(給水停止日)」の危機が迫るほか、水不足に起因する移民の加速、ヒマラヤの氷河融解、モンスーンの変動、南アジアやサヘル地域での干ばつが深刻なリスクとなる。

 

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2026.01.05

語らない物語が織りなす権力のゲーム

私たちの日常は、ニュースやSNSが紡ぎ出す無数の「物語(ナラティブ)」に埋め尽くされている。戦争の火種、揺らぐ経済、そしてセレブリティの喧騒――。スクリーンから溢れ出すこれらの情報は、私たちの関心を絶え間なく奪い続ける。しかし、こうした情報の洪水の中で私たちが真に見落としてはならないのは、語られていることの背後に隠された「何が語られていないか」という欠如の視点である。

本来、語られるべき事柄は無限に存在する。しかし、特定のトピックが意図的に「焦点外」へと追いやられ、人々の意識から消去される現象が頻発している。例えば、ベネズエラで激動の政治情勢が報じられるや否や、それまで主役であったウクライナ情勢への言及は潮が引くように急減する。この背景にあるのは、私たちの「注意資源」が有限であるという極めてシンプルな事実だ。メディアやアルゴリズムはこの認知の限界を巧みに利用し、特定の事象を「語らない」ことで、人々の認識を再構築する。これを私は、沈黙そのものが権力を行使する新たなゲームの形、「ネガティブ・ナラティブ」と呼びたい。

有限の認知リソースと「選択的沈黙」の力学

なぜ「語らないこと」がこれほどの力を持ちうるのか。その根拠は、心理学者ダニエル・カーネマンが提唱した「二重過程理論」にも見出すことができる。直感的で速い「システム1」は、複雑な情報を同時に処理することができない。私たちは日々、数千の情報に曝されながらも、実際に記憶に留め、思考の遡上に載せられるのはそのごく一部に過ぎない。

この「注意力の経済学」を、メディアや権力構造は熟知している。報道の優先順位を決定する「アジェンダ・セッティング」とは、何を語るかを決める行為であると同時に、何を人々の意識から「パージ(追放)」するかを決定する残酷な選別作業でもあるのだ。

その典型的な例が、2020年代初頭のパンデミックに見られた。当時、グローバルメディアの関心は感染者数とワクチン開発に一極集中した。その緊急性は疑いようもなかったが、その影でがん検診の遅れや精神衛生の劇的な悪化といった「他の死」に関する議論は完全に沈黙した。WHOの報告が示唆するように、パンデミック期における非感染症関連の死亡率上昇は、この「沈黙」が招いた政策的優先順位の低下と無縁ではない。一つの危機が強調されるほど、他の危機は背景へと溶け込み、救えるはずの命が忘却されていくのである。

地政学のドラマとアルゴリズムの影

この「ネガティブ・ナラティブ」の力学は、地政学の世界でより鮮明な「ドラマ」として立ち現れる。現下のベネズエラ情勢は、まさにウクライナ戦争という「古い物語」を上書きする最新の装置として機能している。メディアという限られた枠組みにおいて、ベネズエラにおける斬首作戦のような刺激的な映像は、長期化し膠着した戦況報道を押し出し、そこに沈黙を被せる。

これは単なるメディアの習性にとどまらず、しばしば意図的な情報操作の道具となる。米国の外交政策において中東の紛争が焦点化される際、アフリカの悲劇的な内戦(スーダンやエチオピアなど)が語られなくなるのはその好例だ。語られない地域には援助資金も国際的な圧力も届かず、忘れられた地での苦しみは沈黙の中で深まり続ける。

SNSのアルゴリズムはこの現象をさらに加速させる。エンゲージメントを至上命題とするAIは、炎上しやすいトピックを優先し、地味だが深刻な問題を隠蔽する。2025年のCOP30(気候変動枠組条約第30回締約国会議)で指摘されたように、メディアが「気温上昇」という分かりやすい物語に熱狂する一方で、森林破壊を駆動する多国籍企業の不都合な経済構造や、土壌劣化といった複雑な問題は、語られることのないまま放置されている。

国内政治においても、構図は同じだ。2020年代の日本を揺るがした汚職や宗教団体のスキャンダルが連日報じられる裏で、教育格差やジェンダー不平等といった、少子化の本質に関わる議論は常に後回しにされてきた。総務省のデータが示すメディア露出の偏りは、そのまま政策予算の配分へと直結する。ネガティブ・ナラティブは、権力者が不都合な真実を「忘却の彼方」に追いやるための、最も洗練されたツールとして機能しているのだ。

民主主義の防波堤:沈黙の向こう側を探る勇気

「語らない物語」の蔓延は、民主主義の根幹を静かに、しかし確実に侵食する。情報の偏りは世界観を歪ませ、私たちの投票行動や社会運動を容易に操作可能なものにしてしまう。歴史を振り返れば、ナチス・ドイツのプロパガンダも冷戦期の情報戦も、敵対者の存在や都合の悪い事実を「沈黙」の中に封じ込めることから始まった。

現代において、AI駆動のフェイクニュースはこの構造をより強固なものにするだろう。2026年現在、EUのデジタルサービス法(DSA)のような規制がアルゴリズムの透明性を求めているが、法的な枠組みだけではこの強大な流れを止めるには不十分だ。

では、私たちはどう立ち向かうべきか。まず必要なのは、個人レベルでの「意識的な問い」である。「今、この瞬間に何が語られていないのか」を自問するリテラシーを持ち、独立系ジャーナリズムや国際報道といった多様なソースを自ら探索すること。そして、自分の中に「関心のログ」を持ち、世論の波に流されない軸を確立することだ。

同時に、社会全体としてジャーナリストが「沈黙のコスト」を報じる文化を再建しなければならない。この現象は単なる「忘れっぽさ」ではなく、高度に構造化された権力のゲームである。私たちは語られる物語の華やかさに目を奪われることなく、沈黙の向こう側を探る勇気を持たなければならない。それこそが、情報に操られない真の自由を実現し、より公正な世界へと踏み出すための第一歩となるはずだ。

 

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2026.01.04

米国によるマドゥロ大統領拘束の衝撃

斬首作戦によるベネズエラ政権崩壊

米国の斬首作戦によりベネズエラ政権が突然崩壊した。2026年1月3日未明、南米ベネズエラの首都カラカスで複数の爆発音が響き渡った。低空を飛ぶヘリコプターの轟音のなか軍事施設には煙が立ち上った。住民たちが不安に駆られてソーシャルメディアに映像を投稿する中で、世界はドナルド・トランプ米大統領のトルース・ソーシャルの投稿に注目した。「アメリカ合衆国はベネズエラとその指導者に対する大規模な攻撃を成功裏に実施した。ニコラス・マドゥロ大統領とその妻が拘束され、国外へ移送された」。

この作戦は、米軍の精鋭部隊デルタ・フォースが主導したピンポイントの特殊作戦だった。標的はマドゥロ夫妻の事実上の生け捕り・拉致である。周辺の軍事基地、フエルテ・ティウナやラ・コルロータ空港への限定攻撃は、抵抗を抑え、逮捕執行部隊を保護するためのものだった。

今回の事態は、殺害ではなく裁判を目的とした点で、伝統的な斬首作戦とは異なるが、本質は指導者層の除去による政権崩壊の誘発にある。

米国による類似の事態は過去にもある。1989年のパナマ侵攻でマヌエル・ノリエガ将軍を逮捕した作戦、2011年のオバマ政権下でのオサマ・ビン・ラディン殺害。いずれも米国の「法執行」と「自衛」を名目に、他国領土での強硬介入だった。

米国では、カー・フリスビー・ドクトリン(Ker-Frisbie doctrine)と呼ばれるアメリカ合衆国最高裁判所の判例法理があり、国内法で裁くべき容疑者が外国に滞在しているなら、実力部隊を送り込んでその者を拘束し、米国内に移送して裁判を受けさせることができるとする。この際、拘束時に違法があっても、裁判の成否には影響しないとされる。これは、裁判所の管轄権は「身体管轄」(被告人が裁判所にいること)に基づくため、連行の手段が違法であっても裁判は有効なるからである。ただし、連行時に極端な残虐行為(拷問など)があった場合、Due Process(適正手続)違反として別途救済が認められる可能性はある。

今回も、2020年に米司法省がマドゥロを麻薬テロリズムで起訴し、5000万ドルの懸賞金をかけていたことが根拠である。トランプ政権は数ヶ月前から圧力を強め、麻薬密輸船の撃沈、石油タンカーの拿捕、港湾施設への攻撃を繰り返していた。この作戦は、その集大成だった。

ベネズエラ側は即座に反応した。副大統領デルシー・ロドリゲス氏は国営テレビで「マドゥロ大統領とファーストレディの所在が不明だ。生命の証明を要求する」と述べ、国家非常事態を宣言。国防相は「外国軍の侵略」を非難し、軍の動員を命じた。しかし、作戦の迅速さから、抵抗は最小限に抑えられたようだ。

国際法のグレーゾーン

この種類の作戦は、米国法では整合があっても、国際法の観点から見て極めて論争的である。国連憲章第2条4項は武力行使の禁止を定め、他国の主権侵害を禁じている。現職国家元首は慣習国際法上、一定の免除を受ける。多くの専門家や国々は、これを「国家主権の露骨な違反」「誘拐に等しい行為」と批判した。なかでも、中国、ロシア、イランは強く非難し、国連安保理の緊急会合を要求。コロンビア大統領も同様の動きを見せた。

しかし、当事者の米国はカー・フリスビー・ドクトリンから、「逮捕状の執行」と位置づけている。マドゥロの起訴は麻薬テロリズム、汚職、選挙不正に基づくものであるとする。トランプは「法執行機関との連携」と強調し、軍事行動は逮捕部隊の保護のためだと説明しているのである。欧米の一部では黙認の動きもあり、アルゼンチンのミレイ大統領は「自由が進む」と祝賀した。

こうしたグレーゾーンは、過去の事例でも繰り返されてきた。ビン・ラディン作戦では自衛権が主張されたが、人権団体から司法外殺害と批判された。今回も、国際司法裁判所での正式判断はないまま、政治的な解釈が分かれるだろう。結果として、国際社会は分断を深め、「法の執行」と「帝国主義」の境界が曖昧になる新たな先例を生んだ。

中露友好の限界

マドゥロ政権の崩壊は、ベネズエラ国内に大きな変動をもたらすだろう。憲法上、副大統領ロドリゲス氏が暫定指導者となる可能性が高いが、軍やチャベス派の忠誠が鍵だ。米国は長年、マドゥロを「非合法」とみなし、野党指導者エドムンド・ゴンサレス氏を支援してきた。新選挙への移行、米国主導の暫定政府樹立が有力シナリオである。過去のパナマ侵攻後、民主化が進んだように、石油資源へのアクセス再開と経済支援で安定化を図るだろう。ただし、内乱や抗議デモのリスクは残る。

この事件は同時に、ベネズエラと中国・ロシアの深い関係の限界を露呈することになった。中国は最大の債権国で、石油融資を提供。ロシアは武器供給と石油投資で支えてきた。両国は外交的に強く非難したが、軍事介入は行わず。ウクライナ戦争の負担や米中貿易摩擦を優先し、実力行使を避けた形だ。

トランプとプーチンの関係も、影響を受けることになる。トランプは過去にプーチンを「強い指導者」と称賛し、個人的な友好関係を維持してきた。今回の作戦も「法執行」として位置づけ、軍事エスカレーションを避ける方針を示しており、プーチンとの裏取引(例: ベネズエラの石油シェアリング)で軟着陸するシナリオも考えられる。かつての「互恵的取引」が影を潜め、地政学的緊張が高まるかもしれないが、完全な決裂は避けられる余地が残っている。

台湾問題への影響

今回の事態の最も深刻な長期影響は、アジアへの波及である。中国は今回の事態に批判はしているものの、この斬首作戦は台湾に対する行動の正当化材料となり得る。米国が「裏庭」で主権侵害を正当化したように、中国は台湾を「国内問題」として似た論理を援用可能だ。台湾は民主国家で米国の同盟国だが、解釈次第でグレーゾーンは広がる。

しかし、別の見解もあり、米国の決断力示威は中国を抑止する効果も期待されてもいる。人民解放軍の能力を試す鏡となり、台湾海峡でのエスカレーションを慎重にさせるかもしれない。

米国の新モンロー・ドクトリンの復活は、力の均衡を揺るがす。米国がラテンアメリカで介入を強行すれば、中国はアジアでの影響圏を主張しやすくなる。国連安保理での議論、米中対立の激化が今後の鍵だ。この事件は一過性の衝撃に終わるか、それとも国際秩序の転換点となるかだが、すでに転換点を超えていると見るべきだろう。

 

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2026.01.03

ベネズエラとナイジェリアの空爆から見えるトランプ政権の動向

2026年1月3日、米国はベネズエラ国内の軍事施設を標的にした空爆を実施した。この出来事は、国際社会に衝撃を与え、トランプ政権の積極的な軍事政策を象徴するものとなった。一方、わずか数週間前のクリスマスに実施されたナイジェリアでのISIS空爆も、米国主導のテロ対策の新たな展開を示している。これらの行動は、しかし、突発的なものではない。事前に計画された戦略の産物である。ここでは、これら二つの軍事作戦の背景と動向を振り返り、トランプ政権の全体像を分析した上で、さらに日本がどのように対応すべきかを考察しておきたい。

ベネズエラ空爆は予定されたエスカレーション

米国によるベネズエラへの空爆は、2026年1月3日未明に発生した。首都カラカス周辺の軍事基地、例えばフエルテ・ティウナやラ・コルロータ空港付近で複数の爆発が報告され、低空飛行の航空機が目撃された。米政府高官によると、この作戦はトランプ大統領の直接命令によるもので、標的は軍事施設と麻薬関連の拠点だった。CBSやロイターなどの報道では、死傷者や被害規模の詳細は不明だが、ベネズエラ政府はこれを「帝国主義の軍事侵略」と強く非難し、マドゥロ大統領が全国に非常事態宣言を発令した。

この空爆は、決して突発的なものではない。背景には、2025年後半から展開された「サザン・スピア作戦」という軍事キャンペーンがある。これは、トランプ政権がベネズエラを「ナルコテロ国家(narco-terror state)」と位置づけ、麻薬密輸対策を名目にカリブ海に大規模な海軍を配備したものだ。ナルコテロ国家とは、国家自体が麻薬密輸(ナルコ)とテロリズムを結びつけた活動を支援・運営している状態を指す用語であり、これは「ナルコテロリズム」(narcoterrorism、麻薬テロリズム)の延長概念で、国家レベルで麻薬取引がテロ活動や政権維持に利用されているケースを指す。

今回の空爆の経緯だが、9月から海上での船舶攻撃が始まり、12月下旬には陸上施設への初の攻撃が実施された。トランプ大統領は12月29日頃、トルース・ソーシャルで「ベネズエラの薬物積み込み施設に激しく打撃を与えた」と公言しており、陸上作戦の拡大を予告していた。

では、なぜこのタイミングだったのか。報道によると、この空爆は元々クリスマス(2025年12月25日)頃に予定されていたが、ナイジェリアでのISIS関連作戦が優先されたため延期された。米軍の運用資源の割り当てや、天候などの要因も影響したとされる。結果として、新年直後の1月3日に実行に移された形だ。

この作戦は限定された空爆に留まり、地上侵攻の兆候はないが、エスカレーションのリスクは高い。マドゥロ政権は国連安保理への緊急会合を要請し、キューバやコロンビアからも懸念の声が上がっている。

背景には、トランプ政権の外交戦略が深く関わっている。ベネズエラは長年、米国にとって麻薬供給源として問題視されてきたが、トランプ氏はこれを「国家安全保障の脅威」と位置づけ、経済制裁から軍事行動へ移行した。2025年の政権復帰後、トランプ氏は「アメリカ・ファースト」のスローガンの下、ラテンアメリカでの影響力回復を目指している。この空爆は、単なる麻薬対策ではなく、マドゥロ政権の弱体化を意図した政治的圧力と言える。将来的には、追加攻撃や外交交渉の可能性があるが、現時点では緊張のピークにある。

ナイジェリアでのISIS関連標的への米軍空爆

さて、では、ベネズエラ空爆の延期要因となったナイジェリアでの作戦はどうだったか。これは、2025年12月25日(クリスマス当日)に実施されたものである。米アフリカ司令部(AFRICOM)が、ナイジェリア北西部のソコト州にあるISIS関連キャンプを標的に、トマホーク巡航ミサイルやMQ-9 Reaperドローンを使用した空爆を行った。トランプ大統領はトルース・ソーシャルで、「ISISのテロリストどもに対する強力で致命的な攻撃」と宣言し、複数のテロリストを殺害したと発表した。

こちらの作戦も、唐突に見えるが、やはり事前の計画に基づくものである。トランプ氏は2025年10月頃から、ナイジェリアでのキリスト教徒迫害を繰り返し非難していた。11月には国防総省に軍事行動の準備を指示し、「guns-a-blazing(銃を構えて突入)」の姿勢を示唆した。

背景には、ナイジェリア北部の治安悪化がある。ISISの西アフリカ支部(ISWAP)やサヘル支部(ISSP)が、キリスト教徒やムスリムを問わず無差別攻撃を繰り返し、数千人の犠牲者を出している。トランプ政権はこれを「クリスマスに対する戦争」と位置づけ、象徴的なタイミングを選んだということである。実際、作戦は当初予定より1日延期され、クリスマスに実行された。

この空爆はナイジェリア政府との協力が鍵だった。ナイジェリア当局は情報提供を行い、「共同作戦」として承認。AFRICOMの声明では、民間被害を最小限に抑えたと主張している。だが、現地住民からは混乱の声が上がっている。一部報道では、標的地域にISISの活動が本当にあったか疑問視する意見もある。

この今後の動向としては、この空爆はナイジェリアの治安改善に寄与する可能性があるが、宗教対立の複雑さを無視した側面も指摘される。将来的には、追加作戦の可能性が示唆されており、トランプ氏は「さらに続く」と警告した。

なお、この作戦がベネズエラのものより優先された理由は、緊急性と政治的象徴性にある。キリスト教徒保護はトランプ支持層の保守派にアピールし、米軍資源の割り当てでナイジェリアが先になった。これにより、ベネズエラ作戦が新年にずれ込んだ形だ。二つの作戦は、トランプ政権の複数戦線での軍事展開を示す好例であった。

トランプ政権による積極介入主義の復活

トランプ政権のこれらの軍事行動は、「アメリカ・ファースト」の延長線上にあるがはずだが、バイデン政権時代とは異なり、積極的な介入主義をも体現しているため、矛盾しているかにも見える。どうなのだろうか。

ベネズエラでは麻薬対策を名目に政権転覆を狙い、ナイジェリアではテロ対策を通じてアフリカでの影響力を拡大した。両作戦とも、事前の警告と計画に基づく点で、予測可能性が高い。一方で、国際法の観点から問題視される。

ベネズエラの場合、国連憲章に違反する可能性があり、マドゥロ政権の反発を招いている。ナイジェリアでも、民間被害のリスクが指摘され、宗教対立の火種になる恐れがある。

これらをしいて肯定的に捉えるなら、トランプ政権は「弱腰外交」を避け、迅速な行動で脅威を排除しようとしているといえる。麻薬やテロはグローバルな問題であり、米国のリーダーシップが国際秩序の安定に寄与する側面もある。しかし、否定的に見れば、これは一極主義の復活でもある。トランプ氏は多国間主義を軽視し、単独行動を好むため、中国やロシアとの対立を激化させる可能性が高い。ベネズエラではロシアの支援を受けたマドゥロ政権が、米国の行動を「侵略」と位置づけ、地政学的緊張を高めている。

全体として、トランプ政権は「力による平和」を追求しているが、これは冷戦期の米国外交を思い起こさせるものになっている。つまり、バイデン時代のような同盟重視ではなく、独自の判断で軍事力を行使するスタイルであり、国際社会の分断を招くリスクを伴う。こうした捉え方は、米国内の分断も反映しており、保守派は支持するが、リベラル派は批判的である。将来的に、これらの作戦が成功すればトランプの威信が高まるが、失敗すれば中東やアフリカでの泥沼化を招く。

日本はどう対応すべきか

日本にとって、これら、トランプ政権による米軍事行動は地域的に離れているとは言え、無関係ではいられない。まず、米国は日本にとって最重要同盟国であり、日米安保条約の下で協力関係にある。他方、ベネズエラやナイジェリアの情勢は、エネルギー供給やテロ対策を通じて間接的に影響する。日本はベネズエラから原油を輸入してきた歴史があり、空爆による不安定化はエネルギー価格の上昇を招く可能性がある。また、ナイジェリアはアフリカ最大の産油国で、ISISの脅威はグローバルなテロリスクを高める。

日本の対応策としては、まず外交ルートで米国の行動を注視し、対話を重視する立場を強調すべきだろう。日本は国連常任理事国を目指す立場から、安保理での議論を積極的に推進できる。マドゥロ政権との対話促進や、平和的解決を提案する。また、ナイジェリアについては、テロ対策で米国と協力しつつ、アフリカ諸国との経済援助を強化。ODA(政府開発援助)を活用し、ナイジェリアの治安改善や貧困対策に貢献することで、米国の軍事偏重を補完できる。

国内的には、エネルギー安全保障を強化し、ベネズエラ依存を減らし、中東やアジアからの多角化を図るようにしたい。テロ対策では、情報共有を米国と深化させるが、軍事介入への巻き込まれを避けたいところだ。憲法9条の制約を考慮し、非軍事的な貢献を優先するという姿勢だけでもそれなりの効果はある。
つまるところ、日本としては、たとえ見せかけであれ、米中対立の文脈で中立的立場を維持し、トランプ政権の行動が中国の影響力拡大を招かないよう、アジア太平洋での同盟を固めるようにありたい。慎重な対応こそが、日本国益を守る鍵となるだろう。

 

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2026.01.02

Grokの画像生成の大騒ぎ

画像生成機能の特徴と規制の緩さ

2026年が明けるや、xAIが開発したGrokの画像生成機能は、AI技術の最先端を走る一方で、大きな議論を呼んでいる。特に、水着やビキニへの画像編集がX上で爆発的に流行したことが、注目を集めるきっかけとなった。この機能はAuroraモデルを基盤とし、Fluxの影響を受けた高品質なフォトリアリスティック生成を実現しているが、他の主要AIツールに比べてNSFW(成人向け)コンテンツへの規制が極めて緩いのが最大の特徴だ。

水着トレンドの爆発とその背景

Grokでは、テキストプロンプトだけで美しいビキニ姿の女性を生成したり、アップロードした写真に対して「水着に変えて」と指示するだけで服をデジタル的に置き換えたりすることが可能だ

2025年夏頃から「Spicyモード」の導入により部分的な性的表現が容易になり、年末にかけて「@grok 水着にして」というリクエストがX上で急増した。イーロン・マスク自身が自身のビキニ画像を生成して投稿したことも、トレンドを一気に加速させた要因の一つである。この手軽さとリアリティの高さが、娯楽としての急速な拡散を後押しした。

創作的な可能性の広さ

一方で、Grokの強みは創作分野にも及ぶ。たとえば、頭が鳥で体が女性のキメラのようなファンタジー作品や、ポール・デルヴォー風の夢幻的で洋式化された裸像スタイルの生成は、芸術的・シュールレアリスム的な表現として問題なく可能だ。デルヴォーの作品に見られるような、古典的な建築物の中で催眠状態のような裸婦を描く雰囲気も、Grokは忠実に再現できる。純粋なオリジナル創作であれば、規制の対象外で高品質な画像が生み出されるため、アーティストやクリエイターにとって魅力的なツールとなっている。

倫理的・法的問題と最近の動向

しかし、現実の人物を対象とした非同意の画像編集は、深刻な問題を引き起こしている。2025年末から2026年初頭にかけて、女性や著名人の写真が勝手に性的化される事例が続出し、一部では未成年とみられる人物の画像まで対象となった。これにより、ディープフェイクの悪用が現実的な脅威として浮上した。2026年1月には、未成年の性的化画像が生成された事例が複数発覚し、国際的な批判が殺到。ガーディアンやロイターなどのメディアが報じたように、セーフガードの不備が原因で児童性的虐待素材(CSAM)に該当する可能性のある画像が公開された事例もあった。

xAIは「セーフガードの不具合を緊急修正中」と発表しているが、フランス政府はEUデジタルサービス法違反を指摘し調査を進めている。米国でも深層フェイク規制の強化が進む中、Grokの緩いポリシーは強い逆風にさらされている。

 

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2026.01.01

2026年、明けましておめでとうございます。

今年は、自分としては現在取り組んでいる平安時代の芸術関連の論文が通れば、芸術修士(MFA)になれるはずです。とはいえ、少し手違いがあってうまくいかなかったりする可能性もありますし、まあそのときはそのときで、うまくいけばいいなと思っています。

あと、現在自分は、中世英語の研究者をしています。この中世英語の研究は、このあいだ、学会発表で3年ほど続けられたので、今年もできたらいいなと考えています。これまでの研究スキームは、基本的にラテン語と英語の対応を中心にしてきましたが、もう少し古フランス語のほうに寄せてもいいかなと思っています。また、これまでは言語を中心に見てきて、一応それなりに中世史の勉強もしてきたつもりですし、もう少し広く視野を広げて、自分の研究の裾野を広げていきたいとも思っていますね。中世史そのものについて論文を書くところまで行くかは別として、そのくらいの知識は必要だろうな、という感覚ですね。

自分は博士号を持っていません。最初は「死ぬまでに取れたらいいかな」くらいに思っていたのですが、今は率直に言って、自分のレベルで取るには遠いなあ、という感じがしています。なので、仕方ないな、できるところまでやろう、地味に進めていこう、という気持ちです。今年で69歳で、あっという間に70になりますし、人生というか、脳みそがそんなに動く時間も残っていないだろうな、という思いもあります。かつての同僚たちが大学教員を辞める頃になって、こんな研究をやっている、という感じですね。

このブログをどうするかですが、これはたぶん続けていくと思います。誰も読む人がいなくても、一向に構わないという気がしています。前にも書いたと思いますが、新型コロナのときには、もう何も言いたくない、という感覚が強くありました。本当にひどい時代でしたね。そこに重なってウクライナ戦争が起きて、これについても、何も言いたくない、という気持ちがありました。賛否両論がはっきりしすぎて、多元的・複眼的にものを見る人が本当になくなってしまった。そして、その多元複眼性そのものがイデオロギーだとして、潰しにかかるような時代になってしまった。これは嫌だな、と思っていました。

今はどうかというと、状況は相変わらずですが、自分が注目されなくなったので、それでいいや、という感じでだいぶ気持ちも緩んできました。AIが使えるようになって、調査がかなり楽になったというのもあります。なので、また少しずつ見ていこうかなと思っています。ウクライナ問題についても、どうなるかという点はこれまでかなり書いてきました。このブログを読んでいる方は、実際にはほとんどいらっしゃらないと思いますが、もし読まれたら、今年どうなるかについての見通しは一応書いてあります。簡単に言えば、今年でウクライナ戦争は終わるだろうと思っています。ただし、「終わる」とは何なのか、というのが問題で、その後に何が来るのか、そこは引き続き書いていこうと思っています。

台湾有事についても、どうなるのかという話は扱っていくつもりです。中国がどうなるのか、という問題ですね。危うい均衡の上に成り立っている状況なので、どうしたものかという感じですし、大きなショックが訪れる可能性もあるでしょう。アメリカについては、中間選挙までトランプ政権が維持できるか、そこにかかっていると思います。トランプ氏は一見元気そうに見えますが、やはり年齢的な限界は来ているように感じます。バイデン氏がかなり耄碌していたのと同じような過程をたどるのではないか、という気もしています。

話を自分のほうに戻すと、今年はそういうわけで、まず芸術修士(MFA)ですね。それが取れたら、その先、芸術研究をどう続けるかは、正直まだわかりません。

昨年は『新しい「古典」を読む』という、10年前に書いた評論を4冊、かなり分厚い形で出版しました。読み返す機会があったのですが、10年も経つと、他人の著作のように読めて、なかなかこれはすごい作品だったな、と自分で思いました。Kindle Unlimited に入っているので、このサービスを利用している方は無料で読めます。関心のある項目を拾い読みしていただけたらと思います。

この本は書評集のようなものですが、「文芸批評」と呼んでもいいと思っています。そういう意味では、自分を文芸評論家として自覚するという発想はこれまであまりなかったのですが、4冊も書いたのだから、文芸評論家を名乗ってもいいかな、という気もしています。

昨年には「finalvent 読書会」を復活させました。これは以前からやっていたものですが、特にモーリアックの『テレーズ・デスケルー』を精読しました。今年もこれを継続していくつもりで、その延長で、次は堀辰雄の『奈緒子』から始めようかと考えています。そんなわけで、文芸評論についても、時間と元気があれば、これからもやっていくつもりです。

あと、ここ半月ほどの個人的なトレンドとしては、小説を書いています。note のほうに載せているので、「え、お前、小説書くの?」と思った方がいれば、読んでみてください。リンクは貼らなくても、探せばわかると思います。自分がこの先も小説を書くのかどうかは、正直まったくわかりません。

年頭にあたっては、だいたいそんな感じです。

 

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