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2025.10.17

2025年10月17日、高市早苗氏の首相就任は未定

高市早苗氏の総理大臣就任に向けた動きが、衆議院解散総選挙後の政局で注目を集めている。2025年10月16日、自民党と日本維新の会(以下、維新)の幹部が極秘協議を重ねた結果、高市氏支援に向けた「協力の骨子」で合意に達したことが明らかとなった。この合意は、選挙後の首相指名選挙で高市氏が一次投票で過半数を獲得するための決定的な前進である。しかし、状況はまだまだ「依然として予測不能」と見るべきだろう。理由は、連立政権構築の舞台裏に潜む複雑な力学にある。

最初の関門は一次投票での過半数獲得

まず簡単な算数である。総理大臣の選出は、国会法に基づく「首相指名選挙」によって行われる。衆議院と参議院の両院で別々に投票を実施し、国会議員の票で最多得票者が指名される。また、衆議院の議席数が参議院を上回るため、衆議院の結果が優先される。具体的には、465議席の衆議院で過半数の233票以上を一次投票で獲得すれば、即座に総理に指名される。これが自民党執行部が掲げる明確な目標である。

自民党は総選挙後の議席予測で約230議席を確保すると見込まれるが、単独では233票にわずかに届かない。10月16日の最新試算(NHK報道)では、自民単独で231議席止まりである。一次投票で過半数に失敗すれば、上位2名による決選投票に移行する。この決選投票では、単純多数で勝敗が決まるため、公明党や維新以外の野党との駆け引きが発生し、共産党や立憲民主党の票が影響を及ぼす可能性がある。過去の例として、2009年の民主党政権交代時、こうした決選投票の混乱が政局を長引かせた。したがって、自民党にとって一次投票勝利は「生命線」であり、高市氏の運命を左右する第一関門なのだ。次に、この目標達成に向けた戦略を検討する。

維新協力が勝利の鍵

現状、自民党単独過半数が困難な以上、他党との連携が不可欠である。その最重要パートナーが維新となった。維新は総選挙後の議席予測で44議席から35議席に減らすものの、衆議院での影響力は依然大きい。10月16日夜、東京・永田町での自民党幹事長と維新代表の会談で、二点が正式合意された(朝日新聞10月17日朝刊)。

第一に、維新が首相指名選挙の一次投票から高市氏に全35議席を投じることを確約した。これにより、自民231議席+維新35議席=266議席となり、233票を大幅に上回る。第二に、選挙協力にとどまらず、将来的な「連立政権」構築を明記した。高市内閣発足後、維新を閣僚人事に5枠程度登用し、重要政策の共同責任を負う枠組みだ。具体例として、維新の看板政策である「教育無償化」の全面推進が盛り込まれた。この合意の背景には、高市氏の党内支持基盤がある。彼女は保守派の急先鋒として、安保法制や憲法改正を推進しt。維新の馬場伸幸代表も「高市氏なら改革派として共鳴する」と評価した(10月16日会談後の維新幹部コメント)。これにより、高市氏の就任確率は一気に50%超へ上昇したと試算される。とはいえ、この協力は紙一重の均衡の上に成り立つ。連立を阻む三つの本質的課題がある。

維新との連立を阻む三つの課題

離反リスクの内情

維新の35議席は一枚岩とは言い難い。党内では、自民党との連携に「強い異論」を唱える議員が少なくとも3人は存在するとみられる。具体的には、元代表代行の青柳仁士氏らで、「維新の独自性を失う」と公然と批判している(10月16日維新党内会議録)。彼らは過去、2021年の自民接近時に離党騒動を起こした経緯がある。仮に3票が離反すれば、総票数は263票に減少し、過半数233票を下回る危険が生じる。自民党側は「維新執行部が説得中」とするが、馬場代表の党内統制力に疑問符がつく。最新の党内調査(読売新聞10月17日)では、賛成派が28人、慎重派7人と分断が露呈している。この不確実性が、懸念の要因である。

協力の見返りとしてのポスト

連立の生命線は「見返り」である。大臣ポストの配分が未定な上、政策対立が深刻だ。ポスト面では、維新が求める外務大臣と財務副大臣の2枠を、自民が「公明優先」で渋る。10月16日合意では「選挙後1週間以内に調整」としたが、具体案はゼロ状態だ。これが自民党内の権力バランスと合わせて紛糾の火種になることは避けがたい。

公明党の残像

公明党は自民党の28年連続の連立パートナーであり、影響が残っている。公明は総選挙後23議席を維持し、とりあえず安定票源である。そこで自民としては、まず維新合意を固め、その上で公明に「3党連立」を提案したい。公明は福祉・平和政策で自民と密接に連携してきただけに、「格下扱い」との感情が募ると一気にご破産になる。過去、1999年の連立再編時、公明の不満が法案否決を招いた前例がある。公明が棄権すれば、投票数は240票を割り、高市政権は消える。最悪、野党との大連立すら視野に入る事態となる。

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