高市政権はどうなるか?
高市政権はどうなるか?
高市早苗氏が2025年10月4日、自民党総裁に選出され、日本初の女性首相就任が目前に迫る中、高市政権の行方が注目される。党内基盤の脆弱さ、公明党との連立の危機、靖国問題、対米関係と経済政策の制約という4つの主要ポイントから、考察したい。
党内基盤の脆弱さと麻生派との力学
高市氏は総裁選で党員・党友票の過半数を獲得したが、議員票では小泉進次郎氏との決選投票を僅差で制した。党内では派閥解消が進む中、旧安倍派や岸田派の残党との融和が課題である。
しかし、麻生派の支持が勝利の鍵となったことから、恩賞として幹事長に鈴木俊一氏(麻生派)、副総裁に麻生太郎氏を起用する人事案が浮上している。これにより党内安定を図るが、麻生派の影響力増大は「派閥回帰」との批判を招き、高市氏の独自色を薄める。また、麻生派は財務省とのパイプが強く、財政規律重視の政策が浸透する可能性が高い。
高市氏が掲げる積極財政(例えば、建設国債による防衛費増額)は、財務省の抵抗で赤字国債発行が抑制されるリスクがあり、党内非主流派の反発や、早期の党役員人事でのバランス調整失敗は、短命政権の懸念を高める。
結局のところ、麻生派の政治的支援は政権維持に寄与するが、高市氏の政策の曖昧さは失速原因となり、強行は党内分裂の火種となる。
公明党との連立の危機
現下、高市政権の最大の不安定要因は公明党との連立である。公明党の斉藤鉄夫代表は、高市氏の靖国参拝や外国人政策への懸念を表明し、「懸念が解消されなければ連立は組めない」と牽制した。高市氏の保守色(例えば、 外国人地方参政権反対)は、公明党の中国重視姿勢や創価学会の価値観と相容れにくい。公明党は自民党の選挙基盤である創価学会票を背景に、連立離脱をちらつかせて圧力をかける。
連立が崩れれば、自民党は衆院選での議席減リスクに直面する。代替として、国民民主党との「自公国連立」も模索されており、麻生氏と国民民主の榛葉賀津也幹事長が会談、積極財政での親和性を確認している。しかしそうなると、日本維新の会との連携は困難となるだろう。。公明党離脱は高市政権の保守色を強めるが、少数与党の不安定化を招く。
靖国問題と右派支持層の期待
また、靖国神社参拝は、高市政権にとって公明党との連立の「踏み絵」となる。高市氏は過去に参拝継続を主張したが、総裁選では「適時適切に判断」と曖昧な姿勢を示した。参拝強行は中国・韓国との外交摩擦を再燃させ、公明党の連立離脱を加速させるリスクがある一方、参拝回避は右派支持層の離反を招き、旧安倍派を中心とする党内基盤を揺さぶる。
そうしたなか、高市氏は右派層の期待に応えるため、防衛費増額やスパイ防止法制定を推進するだろう。中国のスパイ活動を「全中国国民の義務」と批判する高市氏のスタンスは、党員票の原動力となった右派層に訴求する。もちろん、過度な右傾化は中道層の支持を失い、参政党や日本保守党との連携模索も、選挙での議席拡大に直結しない。いずれにせよ、靖国問題は政権の外交姿勢と党内結束を試す試金石となる。
対米関係と経済政策の制約
対米関係では、トランプ米大統領との良好な関係が予想される。高市氏の対中強硬姿勢は米国の対中包囲網と親和性が高く、女性首相として「強硬すぎない」との評価も得やすい。
防衛費増額や敵基地攻撃能力の整備は、米国との同盟強化を基軸とする。しかし、トランプ政権の「自国優先」政策、特に自動車関税などの通商圧力は日本にとって受け入れがたい。高市氏の内需重視姿勢は関税問題で摩擦を生むが、対中戦略での協力が緩和要因となる。
経済政策では、アベノミクス継承として大胆な金融緩和と財政出動を掲げるが、麻生派・財務省の影響で独自論戦は制限されるだろう。
物価高対策や国土強靭化を優先し、市場は内需株の上昇を予想するが、円安圧力増大が懸念される。経済安全保障担当相時代の実績を活かし、半導体・AI投資を推進するが、いずれにせよ、財政規律との調整が政権の試金石である。
高市政権は、初の女性首相として歴史的意義を持つが、党内調整、公明党との関係、右派支持層とのバランス、対米・経済政策の制約が絡み合う複雑な局面に直面する。
次の衆院選を控え、政策実行力と野党連携の成否が政権の命運を左右する。女性議員登用を宣言しジェンダー格差解消への期待もあるが、保守色が強いため中道層の支持拡大は課題でありうる。
高市政権の船出は、国内の政治力学と国際環境の狭間で試練を迎えている。率直なところ、右派左派といった浮き世離れした議論を終えてみるなら、日本の政治課題は複雑で、若手の小泉進次郎が実質、総裁選の決戦投票で一気に回顧・感謝モードに入って撤退したのも、それを見据えたものであっただろう。
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