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2025.08.04

ウクライナ戦線崩壊とキエフの政治的混乱

 ウクライナ東部の戦線は、ロシア軍の進撃により危機的状況にある。ロシア国防省は、2025年7月31日にドンバス地域の要衝であるチャソフヤールが完全に制圧されたと発表した(ウクライナ側は現状否定している)。チャソフヤールは高台に位置し、コンスタンティノフカやクラマトルスクを見下ろす戦略的要地である。
 報道によれば、ロシア軍は数か月前に町の中心部を掌握していたが、周辺の高層住宅地の掃討に時間を要していた。この制圧により、ロシアはスラビャンスク、クラマトルスク、コンスタンティノフカへの進軍を加速させる可能性が高いと推測される。
 さらに、ポクロフスクでもロシア軍の進撃が予想以上の速さで進んでおり、ウクライナの防衛線は2014年以降に構築された強固な陣地にもかかわらず、崩壊の危機に瀕している。ウクライナ軍の陣地が持続不可能となり、ドニプロ川までのロシア軍進軍が現実味を帯びる状況は、ウクライナにとって壊滅的な打撃となるだろう。

キエフ政権の内部軋轢
 キエフでは、ゼレンスキー政権の内部に混乱と不安定の兆候が広がっている。反汚職機関(NABU)がゼレンスキーの側近や、コロモイスキーやイェルマクとのビジネス取引を調査しているとの噂が浮上しているが、これらは未確認情報であり、慎重な検証が必要である。
 それでも、こうした噂は政権の正当性と信頼性を揺さぶる要因となっている。ロシアの情報機関が流したとされる情報ではあるが、ゼレンスキーの参謀長イェルマク、元軍司令官ザルジニー(現ロンドン大使)、情報機関長ブダノフが英米と共謀してゼレンスキー排除を計画したと主張する。ただし、この話は信憑性が低く、3者の敵対関係からみても現実的でないかもしれない。それでも、キエフの政治構造が不安定化していることは、複数の報道から妥当に推測できる。ゼレンスキーは議会の承認を得て大統領職を継続しているが、2024年5月の任期切れ後の正統性は脆弱であり、クーデターや強制排除のリスクも報じられている。

ザルジニーの台頭とその予想
 この間、元軍司令官ザルジニーは、7月末、ウクライナのメディア(Vogue Ukraine Leaders 2025)で積極的に露出を増やし、自身を「ウクライナの救世主」として位置づけ出している。英国がザルジニーをロンドン大使に任命した背景には、ゼレンスキーの不安定な政権に代わる指導者として彼を準備する意図があると推測される。
 ザルジニーは米国防総省や情報機関とも良好な関係を持ち、ゼレンスキーに比べて「予測可能で信頼できる」人物とみなされていることが、複数の情報源から裏付けられている。
 仮に、ザルジニーが非合法的に権力を握った場合、戦時中の重大な意思決定を行う権限が欠如し、キエフの政治的中心はさらに脆弱化すると予想される。つまり、ゼレンスキーの排除がクーデターとして実行されれば、国民の不信感が高まり、さらなる政治的混乱を招く可能性が高い。

西側の混乱とロシアの不変の姿勢
 西側諸国、特に米国と英国は、ウクライナの政権交代を模索している兆候がある。噂段階であるが、トランプ大統領はゼレンスキーを嫌い、ザルジニーのような人物への交代を支持する可能性が高い。加えて、英国はザルジニーを情報機関や政府と連携させることで、ゼレンスキー政権の崩壊に備えていると推測する向きがある。
 EUとしては、ゼレンスキーへの支持を続けてきたが、資金提供の遅れや汚職疑惑に関する報道により、支持が揺らいでいる現状にある。EUやNATOは、2027年までに軍備を増強し、ロシアとの対決に備える計画を掲げるが、これは核戦争のリスクを冒さずにロシアに勝利することが不可能であるため、非現実的であるとの分析が支配的である。
 また、西側がゼレンスキーをザルジニーに交代させても、ロシアとの停戦交渉を容易にすることはない。基本的にロシアはゼレンスキーやザルジニーの個人に関心を示さず、自身の条件に基づく交渉を優先する姿勢を崩していない。
 EUの政治的優先事項は、経済停滞や地政学的失敗を背景に、対ロシアの敵対姿勢を通じて国内の支配力を維持することにあると推測される。
 西側としてはウクライナ支援という大失態を糊塗するためにはウクライナ紛争の長期化が望ましいが、現実的には紛争の継続はこれ以上は困難であるため、欧州全体の不安定化を招く危険性が高まっている。

 

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