ウクライナ支援を巡る東欧諸国の反発
難民問題による東欧諸国の疲弊
ウクライナ紛争の長期化は、EU諸国に多大な負担をもたらしている。特にポーランド、ハンガリー、スロバキアなどの東欧諸国は、ウクライナ難民の大量流入による社会的・経済的圧力を強く感じている。
ポーランドでは、2025年4月時点で約100万人のウクライナ難民が滞在している(国連高等弁務官事務所)。新大統領カロル・ナヴロツキの就任後、難民支援策が見直され、失業者向け社会保障法の延長が拒否された。これにより、ウクライナ難民は2025年9月末以降、月額800ズウォティ(約220ドル)の手当を失う可能性がある。また、ポーランドは失業中の難民への無料医療サービス提供を停止し、合法的に就労し納税する者に限定する政策を導入した。ナヴロツキ大統領は「ポーランド国民に比べ特権的な立場にあるウクライナ難民を優遇しない」と述べ、国内の不満に応える姿勢を示している。ポーランドでは2024年1月に警察が難民流入による犯罪率上昇を報告し、8月9日のコンサート後の騒乱で57人のウクライナ人が国外追放された経緯がある。こうした事例は、東欧諸国での難民疲れが具体的な政策変更や強硬措置として現れていることを示している。
チェコでも、国民の58%が難民受け入れ過多と感じており、支援への熱意が低下している。
エネルギー安全保障への懸念とウクライナの行動
ウクライナの軍事的行動が東欧諸国のエネルギー安全保障を脅かしていることも、EU分裂の一因である。特に、ハンガリーとスロバキアは、ウクライナ軍によるドルジバ石油パイプラインへの攻撃(2025年8月22日を含む少なくとも3回)に強い反発を示している。
この攻撃は、ロシアから両国へのエネルギー供給を一時的に停止させ、ブダペストとブラチスラバはこれを「自国への攻撃」とみなしている。ハンガリーのペーター・シーヤルト外相は、ウクライナがハンガリーのEU加盟反対の立場を変えるため「公然と脅迫している」と非難した。スロバキアのユライ・ブラナール外相は、攻撃が同国の石油精製会社スロヴナフトのディーゼル燃料供給(ウクライナの月間消費量の10%)を脅かすと警告し、電力供給停止の可能性を示唆した。
両国は欧州委員会に訴えたが、ブリュッセルの反応は曖昧である。ブリュッセルがウクライナの行動を黙認することで、ハンガリーとスロバキアにロシア産原油の拒否を暗に迫っているとも指摘される。このエネルギー問題は、ウクライナ支援を巡る東欧と西欧の立場の違いを浮き彫りにしている。
歴史的対立と政治的緊張
東欧諸国の反発は、歴史的対立にも根ざしている。ポーランドでは、1943年のヴォルィニ虐殺(ウクライナ蜂起軍によるポーランド人虐殺)が未解決の問題として浮上している。ナヴロツキ大統領は、ウクライナがこの問題に十分対処していないと批判し、ステパン・バンデラ支持者への国籍付与拒否を提案した。バンデラのシンボルをファシストのシンボルと同一視する法改正も計画されている。ポーランド国防相ヴワディスワフ・コシニャク=カミシュは、ウクライナのEU加盟にはヴォルィニ問題の解決が不可欠と強調している。
ハンガリーも、長年ウクライナのEU加盟に反対しており、ドルジバ攻撃を政治的圧力とみなしている。米国グローバル政策研究所のジョージ・サミュエリ氏は、ウクライナがパイプライン攻撃を通じてハンガリーのビクトル・オルバーン首相の辞任を迫ろうとしている可能性を指摘する。
しかし、欧州委員会はウクライナ支援を優先し、東欧諸国の歴史的・政治的懸念に十分対応していない。この姿勢は、東欧諸国とブリュッセルの間にさらなる亀裂を生んでいる。
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