NHKと新聞社の世論調査差分から石破内閣の支持率を推定する
自民党がNHKの世論調査を根拠に総裁選見送りを主張
自民党内で、2025年秋の総裁選を見送る動きが活発化している。この根拠として、NHKの2025年8月世論調査が示す石破茂内閣の支持率38%、不支持率45%が引用される。この数字は、2025年7月(31%)や6月(39%)に比べやや上昇傾向にあり、党内では「政権の支持が安定している」との主張が広がっている。
NHKは無作為に選んだ電話番号に架電するRDD方式で、固定電話と携帯電話をそれぞれ約1,200件、計2,400件を対象に調査し、回答をそのまま合計する。この方法は、調査の透明性や過去の結果との比較を重視するが、すでに大きな問題点がある。固定電話の利用者は約1,277万加入(2022年、総務省データ)で、主に高齢層が中心。一方、携帯電話は約2億2,694万契約(2025年6月、総務省データ)で、若年層から中年層まで幅広い。現代では携帯電話が95%以上の国民に普及しているが、NHKは固定電話と携帯電話を同数で扱うため、高齢層の意見が過剰に反映される。このため、支持率38%が国民全体の意識を正確に表しているか疑問視され、若年層や携帯中心の層から「世間の感覚とズレている」との批判が強い。自民党がこの数字を基に総裁選を不要と主張するのは、国民の声を十分に捉えているか再考が必要である。
同じ実態を異なるウェイトで反映する
NHKの世論調査は、固定電話と携帯電話を同数で調査し、特別な調整をせずに1:1で結果を合計している。一方、朝日新聞と読売新聞は、固定電話を40%、携帯電話を60%の割合で調査し、年齢や性別などの人口構成に合わせて結果を調整する。2025年8月の朝日新聞調査(8月16~17日)では支持率36%、不支持率50%、読売新聞調査(8月22~24日)では支持率39%、不支持率50%と、NHKの38%と近いが異なる結果が出た。朝日は1,250人(固定497人、携帯753人、回答率50%と40%)、読売は1,043人(固定408人、携帯635人、回答率54%と35%)を対象にRDD方式で実施した。
これらの調査は、国民全体の意見を対象にしていると考えられるが、固定電話と携帯電話の割合の違いが結果に影響を与えている。NHKの方法では、高齢層が多く使う固定電話の意見が半分を占め、支持率が高めに出やすい。
朝日と読売は携帯電話の割合を60%に増やし、若年層の意見をやや反映するが、携帯電話が95%以上普及する実態にはまだ足りない。たとえば、朝日の調査では、50代以上の女性の支持率が約5割と高く、18~29歳(33%)や40代(34%)は低い傾向がある。ネット調査(例:楽天インサイト)では支持率15~25%とさらに低く、若年層の政権への批判が明確に表れる。
NHKや朝日・読売の調査結果の違いを分析すれば、固定電話と携帯電話の意見の差を推定し、より実態に近い支持率を計算できる可能性がある。
調査結果の差分から8:2の支持率を推定
NHK(固定電話と携帯電話を1:1)と朝日・読売(固定40%:携帯60%)の支持率の違いを利用し、携帯電話80%:固定電話20%(8:2)の割合で石破内閣の支持率を推定してみよう。
個別の回答データは公開されていないため、NHKの支持率38%と朝日の支持率36%を基に、固定電話と携帯電話の意見の差を推測する。NHKの38%は、固定電話と携帯電話の意見を半々で合計した結果であり、朝日の36%は携帯電話の割合を増やした結果である。この違いから、固定電話の利用者(主に高齢層)は内閣への支持率が高く、携帯電話の利用者(若年層や中年層)は支持率が低いと考えられる。
計算の結果、固定電話の支持率は約48%、携帯電話の支持率は約28%と推定される。これらの推定値は、過去の調査で高齢層の自民党支持率(40~60%)が若年層(10~30%)より高い傾向と一致する。不支持率についても同様に、固定電話は約30%、携帯電話は約58%と推定する。8:2の割合で計算すると、固定電話の意見を20%、携帯電話の意見を80%で組み合わせる。固定電話の支持率(48%)を20%、携帯電話の支持率(28%)を80%で計算すると、支持率は約32%になる。不支持率は、固定電話(30%)を20%、携帯電話(58%)を80%で計算し、約52%となる。読売の支持率39%を使うと、固定電話の支持率54%、携帯電話29%となり、8:2で支持率約33%、不支持率約51%となる。
この8:2の割合は、携帯電話が95%以上普及する実態に近く、若年層の政権への批判的意見を強く反映する。ただし、回答率の低さ(固定50~54%、携帯35~40%)や推定の限界があるため、結果は参考値である。
内閣の支持率は低く、国民の不支持は明確
携帯電話と固定電話の8:2の推定では、石破内閣の支持率は32~33%、不支持率は51~52%となる。
これはNHKの38%、朝日36%、読売39%より低く、国民の多くが内閣を支持していないことを示す。
携帯電話の意見(若年層や中年層、支持率28~29%)を80%の割合で重視することで、政権への批判が強く表れる。NHKの1:1の方法では、固定電話の意見(高齢層、支持率48~54%)が半分を占め、支持率が高く出る。たとえば、NHKの支持理由「他より良さそう」(45%)は、高齢層の現状維持を求める考えを反映している。朝日と読売の方法は、携帯電話の割合を60%に増やすが、携帯95%の実態には及ばず、高齢層の影響が残る。
朝日の調査では、50代以上の女性の支持率が約5割と高く、18~29歳(33%)や40代(34%)は低い。8:2の推定は、携帯電話の普及率に近い割合で、若年層の政権批判(不支持率58%)を強調する。
ネット調査(例:楽天インサイト、支持率15~25%)と比べ、8:2の32~33%は若年層の意見を反映しつつ、高齢層の意見も適度に含む妥当な推定である。個別の回答データがないため推定に留まるが、NHKと朝日・読売の違いから計算した8:2の結果は、高齢層の意見が過剰に反映される問題を軽減し、実態に近い指標を提供する。
自民党がNHKの38%を根拠に総裁選不要を主張するのは、国民全体の意識を正確に反映しているとは言い難い。8:2の推定は、石破内閣への不支持が広く存在する現実を浮き彫りにしている。
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