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2025.07.19

直前予想:2025年参議院選挙

 2025年7月20日、今日投開票される参議院選挙は、日本の政治に大きな変化をもたらす可能性を秘めている。参議院の総議席は248で、今回はその半分に近い125議席(選挙区74、比例代表50、東京選挙区補欠1)が争われる。物価高(消費者物価指数3.1%上昇、2024年統計)や自民党・公明党への不信感が選挙戦を揺らし、例年になく予測が難しい状況だ。自民党と公明党は非改選議席を75(自民55、公明20)持つが、参議院の過半数(125議席)を維持するには、今回の選挙で50議席以上が必要となる。しかし、世論調査(Jiji Press、7月17日)では自民党の支持率が20.9%、公明党が4.5%と低迷し、投票先を決めていない無党派層(有権者の約40%)の動向が注目される。投票率は55%以上と、2010年以来の高水準が予想され、特に18~29歳の若年層の関心の高まりや、YouTube、X、TikTokなどのSNSの影響力が選挙の流れを左右する。このコラムでは、選挙の3つの特徴—(1) 自民党・公明党の過半数割れ、(2) 参政党の躍進、(3) 野党間の競争と再編の兆し—を詳しく分析し、無党派層の新しい動向との関係を考察したい。

自民党・公明党の過半数割れ

 自民党と公明党が参議院の過半数を失う可能性は、今回の選挙の最も大きな特徴である。JX通信社の米重克洋氏は、過半数割れの確率を80~85%とも予測しているが、ありうる線だろう。
 自民党と公明党の改選議席は43~45議席(自民30~34、公明5~9)と見られ、非改選の75議席を加えても118~120議席で、過半数の125議席に届かない(朝日、7月15日)。この苦戦の背景には、生活必需品の値上がりによる生活不安がある。2024年の消費者物価指数は3.1%上昇し、食料品やエネルギー価格の高騰が家計を圧迫している。さらに、2024年衆議院選挙で自民党と公明党は215議席(過半数233)しか獲得できず、石破茂政権への信頼が揺らいでいる。特に、2024年3月の「ギフト券問題」など、政権のスキャンダルが有権者の不満を増幅させた。

 自民党は、32の1人区(1議席を争う選挙区)で苦戦している。世論調査では12選挙区でリード、9選挙区で野党が先行、11選挙区が接戦だ(朝日、7月15日)。たとえば、東北や九州の地方選挙区では、物価高への不満から立憲民主党や国民民主党に票が流れている。公明党も、神奈川、愛知、福岡などの複数人区(複数の議席を争う選挙区)で、従来確実だった議席を参政党や国民民主党に脅かされている。神奈川の4議席目や福岡の3議席目は、参政党の候補が公明党を猛追している。無党派層の約40%が投票先を決めていない中、若年層(18~29歳)の投票率が55%を超える見込みで、反与党感情が自民党と公明党の議席をさらに減らす。石破政権は「少数与党」として、予算案(高校無償化や社会保険料軽減)や法律の成立で野党との交渉を強いられる。Xでは、過半数割れが「ほぼ確実」との声や、自民党が30議席を切る可能性も上がっているが、あながち無理な予想とも言い難い。この状況は、2007年参院選(自民37議席の大敗)に続き、2009年の政権交代を思わせる政治の転換点となりうる。

参政党の躍進

 参政党の急激な伸びは、選挙のもう一つの特徴だ。専門家らの予測では、参政党は10~15議席を獲得し、10%の確率で15議席を超える。時事(7月17日)の調査では、支持率6.9%で、自民党(20.9%)、立憲民主党(11%)に次ぐ3位。特に18~29歳で12.3%、30代で10.3%、50代で10.2%と高い支持を集める。2022年参院選では176万票(3.33%)で1議席だったが、今回は比例で10~12議席、東京や愛知の選挙区で0~3議席が見込まれる。参政党の強みは、YouTube(登録者40万人)、X、TikTokを活用したネット選挙にある。たとえば、神谷宗幣党首の街頭演説動画や政策の短い切り抜き動画が、若年層や地方の保守層に広く拡散している。

 参政党は、元安倍政権支持層(特に群馬、鹿児島、岡山などの地方保守層)や若年層を動員。「日本ファースト」や外国人への厳しい政策(例:移民規制)は保守層に強く支持され、積極的な財政出動(国による大型支出)の主張は、低所得層や一部令和新選組の支持者に響く。この「右派と左派の要素を併せ持つキメラ的」支持構造が特徴で、保守的な価値観(伝統や文化重視)と経済的な支援策(生活支援)を組み合わせ、幅広い層に訴えている。ただし、女性無党派層への訴求力は弱いと見られ、支持は20~50代男性に偏る。無党派層の70~80%(若年層や保守層)は参政党に流れ、投票率上昇(55%超)を後押しするが、女性のマジョリティ層やリベラル層は立憲民主党や日本維新の会に投票する傾向がある。他方、参政党の躍進は、自民党の保守票や公明党の議席を奪い、過半数割れを加速するだろう。SNSで散見する予想では、8~9議席から15~20議席まで分かれる。このネット選挙と新たな支持の成功は、2026年の地方選挙や2028年の衆議院選挙でさらなる影響力を示唆する。

野党間の競争と再編の兆し

 野党間の競争と再編の兆しは、今後の日本の選挙構造の変化を暗示している。立憲民主党が28議席を割っても、野党第1党を維持する見込みはある。日本共産党や国民民主党との1人区での候補者調整に成功すればとりあえず、旧来型の与党的な位置と野党的な位置の構図となる。たとえば、東北や中国地方の1人区では、立憲民主党が野党統一候補としてリードするケースが多い。
 しかし、参政党(10~15議席)、国民民主党(21議席以上目標)、日本維新の会(6議席)、日本共産党(4議席)、令和新選組(3議席)となると、異なる支持層で票を争うだろう。立憲民主党は60代以上、国民民主党と参政党は20~50代男性、日本維新の会は大阪、日本共産党は70代以上、令和新選組は若年リベラル層を主に支持基盤とする(インタビュー)。

 参政党と国民民主党は、元安倍政権支持層や旧民主党を否定する層で支持が重なり、票の奪い合いが激しい。たとえば、国民民主党の「現役世代から豊かになろう」という経済政策(新三本の矢)は、参政党の積極財政と似ており、20~30代男性の票を分け合う。

 立憲民主党や日本共産党、令和新選組はリベラルな政策(例:子育て支援、格差是正)で高齢層や若年リベラル層を引きつけるが、この傾向は、立憲民主党のリベラル連合(日本共産党、令和新選組)との対立を深める。
 無党派層の多様性—若年層は参政党や国民民主党、女性は立憲民主党や日本維新の会、リベラル層は令和新選組や日本共産党—が競争をさらに複雑にする。なかでも参政党の躍進は、国民民主党や日本維新の会との保守系連携を促し、2028年衆議院選挙に向けた再編の兆しを生むだろう。たとえば、日本維新の会の大阪基盤(2024年衆院選で19議席)と参政党の地方保守層(群馬、鹿児島)が連合を模索する可能性がある。立憲民主党の主導力低下や、緊急事態条項(災害時の政府権限強化)を巡る憲法改正議論の加速リスクも浮上するが、従来の右派・左派の対立は薄れ、まるでパラパラ漫画を見るような感情的な訴求による不安定な政治が台頭しつつある。

無党派層の動向と3つの特徴

 無党派層の新しい動向—若年層の関心の高まり(18~29歳、投票率55%超)、女性の生活重視(子育てやジェンダー平等)、ネット選挙の加速(TikTok、Instagram)—は、3つの特徴を支える重要な要素である。若年層(18~29歳、参政党支持率12.3%)や保守層は、参政党のYouTube(40万フォロワー)やXでの発信に惹かれ、参政党の躍進を後押しする。たとえば、参政党の街頭演説動画やTikTokの短い政策動画が、若年層の反与党感情(物価高への不満)を刺激する。一方、女性無党派層は、立憲民主党の子育て支援(例:保育所の拡充)や日本維新の会の女性活躍政策(例:働き方改革)に流れ、野党間の競争を多様化する。ネット選挙の加速も、参政党や国民民主党のSNS発信(玉木雄一郎氏の経済政策ライブなど)が無党派層に影響を与えるが、立憲民主党や令和新選組も同様にネットを活用するしてはいる。

 無党派層の約40%が投票先未定の中、反与党感情は自民党・公明党の過半数割れを後押しするが、これらの動向が、参政党の躍進(若年層・保守層の70~80%を包含)と野党間の競争(女性・リベラル層の分散)に大きく含まれると、選挙全体を特徴づける独立した要素にはならない。
 選挙結果は、7月20日夜の開票速報で明らかになるが、まず、サドンデスで与党大敗と参政党躍進が示され、日本政治の不安定な方向性を示すだろう。

付記:予想議席数(改選125議席分)と改選前からの増減をリスト化。増減は改選議席(2025年改選分)のみを比較。


政党・団体
予想議席数
改選前議席(2022)
増減
自民党
30~34議席
54議席
-24~-20議席
公明党
5~9議席
7議席
-2~+2議席
立憲民主党
25~28議席
17議席
+8~+11議席
国民民主党
16~18議席
5議席
+11~+13議席
参政党
10~15議席 
1議席
+9~+14議席以上
日本維新の会
6~8議席
12議席
-6~-4議席
日本共産党
3~5議席
4議席
-1~+1議席
令和新選組
3~5議席
3議席
0~+2議席
社民党
0~1議席
0議席
0~+1議席
日本保守党
0~1議席
0議席
0~+1議席
チームみらい
0~1議席
0議席
0~+1議席
再生の道
0~1議席
0議席
0~+1議席
NHK党
0~1議席
1議席
-1~0議席

 

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