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2025.07.11

ウクライナの野党議員スコロホッド氏の声

 ウクライナの最高議会(ヴェルホーヴナ・ラーダ)議員アンナ・スコロホッド氏は、ゼレンスキー政権への批判的姿勢で知られる独立系議員である。元「人民の僕」党員で、現在は「未来のために」党に所属する彼女は、ウクライナの戦時下の課題を率直に語り、国民の不満を代弁する数少ない声の一つだ。2025年7月、ウクライナのオンラインメディア「Politeka Online」のインタビュー(参照)で、彼女は非常事態宣言の延長、動員の不平等、軍の課題、腐敗、人口危機、そして外交交渉の必要性について語った。ウクライナの野党的な視点から、戦争の現実と社会の分断を浮き彫りにする彼女の見解を紹介する。

背景と現在の状況

 ウクライナでは、2025年11月5日までの戒厳令と動員の延長について、来週、最高議会(ヴェルホヴナ・ラーダ)で投票が行われる可能性がある。政治学者のウラジミール・フェセンコ氏は、戦争が少なくとも2026年半ばまで続き、停戦が終結の唯一の手段であると述べているが、アンナ・スコロホッド氏は、戒厳令延長の具体的な議案はまだ確認しておらず、閣僚のローテーションに関する議論が進行中であると指摘する。戒厳令は現在2025年8月まで延長されており、8月にも議会が予定されている。ウクライナは2022年2月のロシアによる侵攻開始以来、戒厳令を繰り返し延長し、動員を継続しているが、国民の疲弊や社会の分断が顕著になっている。

戒厳令と動員に対する国民の反応

 多くのウクライナ国民は戒厳令の延長を「裏切り(ズラーダ)」と捉え、スコロホッド氏は、戦争が続く限り、戒厳令の解除で終戦が訪れるという幻想は誤りであると強調している。現状ウクライナでは、戦争の期間については、2~3年、最大5年など様々な予測が飛び交うが、正確な見通しは誰も持っていない。スコロホッド氏は、外交交渉による戦争終結を信じ、外交は専門の外交官が担うべきであると主張する。大統領府や大統領に都合の良い、外交や軍事史に無知な人物が交渉に関与することは避けるべきであると訴えている。

ウクライナの動員と軍の課題

 ウクライナにおける動員は強制的で平等性に欠け、金銭で免除されるケースが存在し、社会の分断を助長している。ローテーションや除隊の議論は最高議会で禁止されており、予備兵力の不足、前線と後方支援の人員バランスの悪さ、軍人の待遇の低さ、訓練の質の低さが問題である。優秀な司令官は部下の命を守るため追加訓練を実施するが、そうでない場合、兵士は単なる「統計」と見なされることもある。スコロホッド氏は、軍内の非効率な構造や、既存の旅団を統合せず新設することで予算を浪費する実態を批判する。これらの問題は、短時間の議論では解決できない複雑な課題である。

戦争の長期化と国民の信頼

 スコロホッド氏は、国民の軍、司令部、国家への信頼が著しく低下していると指摘する。動員は強制的に行われ、当初宣伝されたリクルーティングは実質的に存在しない。アキレス連隊のフェドレンコ司令官が「2023年に最終戦闘で戦争を終結させる」と発言したことに対し、スコロホッド氏は、10年も戦う人的資源はないと反論している。実際の損失は当局の発表よりも深刻で、墓地や赤十字への行方不明者問い合わせからその規模が伺える。国防省と軍の連携不足や、軍内の調整の欠如も大きな問題である。スコロホッド氏は、軍人の準備不足や前線の過酷な状況を、自身の知る司令官の証言に基づいて訴えている。

外交と和平交渉

 ウクライナ外務省のゲオルギー・ティヒー氏は、ウクライナがロシアとの交渉に参加するのは、平和を望まないと非難されないためだと述べたが、スコロホッド氏はこれを見せかけと批判し、ウクライナとロシア双方にとって本物の交渉ではないと指摘する。特に、2022年のイスタンブール交渉プロセスからの離脱を望む声が議会内で聞かれたことを明かし、どんな交渉の場も最大限に活用すべきだと主張する。人道的な問題(例えば、ロシアからの6,000体の遺体返還に対しウクライナ側は100体程度を返還)は、国民に否定的な影響を与えている。スコロホッド氏は、交渉がアメリカやトランプ大統領に向けたパフォーマンスである可能性も示唆する。

ウクライナ経済と社会の課題

 ウクライナの予算は赤字で、軍人の家族への支払い遅延や予算配分の不明瞭さが問題である。莫大な損失や行方不明者の増加が予算を圧迫し、借金依存が国の債務を増大させている。ダニロ・ゲトマンツェフ議員の「10代に3年で1着の服、女性に7年で2着のドレス」といった節約提案は、現実離れした政策として批判されている。スコロホッド氏は、権力者がプロフェッショナルではなく、自己の利益を優先し、戦争で儲けている実態を非難する。国民は軍支援のため10フリヴナの寄付を求められる一方、都市では無駄なインフラ整備(例えば、アスファルトの敷き直しや石畳の設置)が進む「シュールレアリスムの国」と化している。国外への出国者数は1400万人に達し、国境での出国車両の増加(例:夜中に70台)も報告されている。

議会の雰囲気と和平への展望

 最高議会では、動員や戦略の議論がタブー視され、真実を語る議員は「ロシアのために働く敵」と見なされる。スコロホッド氏が率いた徴兵問題の調査委員会の報告書は議会で審議されなかった。ゼレンスキー大統領が2022年に自ら平和交渉を禁じる決定を下し、国家安全保障会議で承認されたが、議会は停戦を支持する可能性が高いとスコロホッド氏は見る。プロフェッショナルな人材の不在が最大の問題であり、若者への期待も裏切られたと述べる。年配者はソ連崩壊時の豊かなウクライナを懐かしみ、現在の貧困(例:年金で肉を買えず鶴の骨セットを購入)を嘆く。戦争は一部の企業や個人にとって巨額の利益を生む一方、汚職や予算の不正流用が続いている。

戦争終結のレッドライン

 戦争終結の「レッドライン」について、スコロホッド氏は、個人や大統領が決めるべきではなく、国民投票で国民が決めるべきであると主張する。政治的、経済的、人口統計的な状況に基づき、国民が投票でレッドラインを定めるべきである。毎日の人的損失は計り知れず、命は無価で、取り戻すことはできない。スコロホッド氏は、固執した姿勢は許されず、命を最優先に守ることが最大の勝利であると訴える。
 以上、ウクライナ野党議員であるスコロホッド氏は、ウクライナが直面する軍事的・社会的・経済的課題を率直に語り、信頼の欠如や非効率な政策を批判している。戦争終結には本物の外交が必要であり、国民の命を守ることが最優先であるとのことだ。彼女は、国民が真実を知り、議論に参加することを促し、視聴者にコメントで意見を共有し、穏やかな一週間を過ごすよう呼びかけている。



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