学校制服の価格
BBCのニュースを見ていたら、北アイルランドで中高生の制服が高価すぎるという話題を見かけた。「息子の制服代に400ポンド(約7万円)かかった。心臓が止まるかと思った」とも語られるほど、親たちの経済的負担が深刻な課題となっているそうだ。制服は本来、生徒間の格差をなくし、学校の規律を保つためのものとされてきた。しかし、近年ではむしろ家庭の経済的負担を増大させ、教育の公平性を損なう要因になっている。
この問題は、日本ではどうか。近年、日本政府は高校の授業料無償化を進めているが、制服代は依然として親の負担となっている。文部科学省の調査によれば、公立高校の制服代は平均26,110円、私立高校では36,086円に上る。北アイルランドの半分くらいかと言えないことはないが、体操服や指定カバン、運動靴なども学校指定なので、これらを加えれば、総額は5万円から7万円に達することも珍しくない。私立高校によってはデザインにこだわった制服が採用されることもあり、男子のブレザーだけで28,000円、スラックス15,000円、ワイシャツ4,200円、ネクタイ3,000円など、総額50,000円を超えるケースもあるそうだ。これに体操服も加わる。トータルの費用はさらに膨らむ。
なので、こうした状況の中、日本政府が高校の無償化を推進しても、存外にその恩恵を実感できないということになる。「授業料がタダになっても、制服や学用品の費用が高すぎるために、経済的負担が軽減されたとは感じられない」というのが親の実感である。特に問題視されるのは、制服の購入が学校指定の業者に限られるケースが多いことだ。価格競争がほとんど起こらない。こうした状況でも、日本と北アイルランドは似ている。英国全体でも学生服の価格高騰が問題視されているが、特に北アイルランドではその影響が顕著ということだが、イングランドやウェールズでは政府が制服価格の透明化を進め、スーパーや量販店で無地の制服を安価に購入できるようになった。北アイルランドでは依然特定の制服業者が市場を独占しているため、親たちは高額な制服を購入せざるを得ない状況が続いている。ジャージが30ポンド(約5,400円)、靴下が10ポンド(約1,800円)という価格設定なので、それほど高いという印象がないわけではないが、特定の業者からしか購入できないため、安価な代替品を選ぶことすらできない。こうした状況を受け、北アイルランド議会では制服の価格透明化と価格上限の設定を求める法案が提出された。
世界各国と比較すると、日本や英国は制服制度を厳格に運用する国の一つであるようだ。米国では、公立学校の多くが制服を採用せず、私立学校や一部のチャータースクールのみが制服を導入している。カトリック系の私立校ではブレザー+ネクタイの制服が一般的だが、カジュアルなポロシャツにチノパンといったスタイルも少なくない。制服を義務付ける公立校もあるが、その割合は20%程度にとどまる。
フランスやドイツでは、公立学校に制服の文化はほぼ存在しない。特にフランスでは、「服装の自由は個人の権利である」という理念が強く、制服の導入はほぼ見られない。ドイツも同様に、公立校では私服が一般的である。ただし、カトリック系やプロテスタント系の私立学校では制服を着用することがあるが、全国的な統一ルールはない。スウェーデンやノルウェーなどの北欧諸国では、学校制服の概念そのものが一般的ではない。教育の自由を重視する文化があり、生徒の個性を尊重するため、服装規定すらないケースも多い。そもそも制服代という負担が発生しないため、価格高騰が問題になることもない。
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