ワクチン接種後症候群
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックで、mRNA医薬の「ワクチン」的活用は感染拡大を抑え、多くの命を救ったとされている。しかし、接種後に慢性的な症状に苦しむ人々がいるのも事実である。現状、彼らの声は社会にあまり届かず、支援も遅れている。そんな中、イェール大学の岩崎明子教授らが進める「ワクチン接種後症候群(PVS)」研究が注目を集めている(参照)。この研究から、被害者の苦しみを科学的に解明するきっかけとなることが望まれる。この問題の本質は「反ワクチン」や「陰謀論」ではない。被害者救済とレッテル貼りからの脱却でもある。
PVS研究が明らかにしたこと
岩崎明子教授とハーラン・クルムホルツ教授は、2025年2月19日にMedRxivでPVS研究のプレプリントを発表した。彼らは、接種後に運動に耐えられない状態や過度な疲労、頭のもやもや感を訴える42人と、症状のない22人の血液データを比較した。結果、PVS患者ではエフェクターCD4+ T細胞が少なく、TNF-α+ CD8 T細胞が多いことが分かった。さらに、一部ではSARS-CoV-2のスパイクタンパク質が接種後700日以上も体内に残存していた。通常、数日で消えるはずのこのタンパク質が長期COVIDとの関連を示唆する異常な持続性を見せたのである。再活性化したエプスタイン・バーウイルス(EBV)の痕跡も多く、自己免疫や組織損傷の可能性も探られている。岩崎教授は「スパイクタンパク質が症状の原因かは不明だが、一つのメカニズムかもしれない」と語っている。
日本では、厚生労働省のデータで2023年までにCOVID-19ワクチン関連の被害認定件数が過去45年間の全ワクチンを超えた。申請から認定まで1年以上かかるケースが多く、治療法がないまま苦しむ人が絶えない。PVS研究は、これらの症状が「気のせい」ではない可能性を示している。日本でも同様の研究が進み、診断基準が確立されれば、治療法開発につながる。例えば、モノクローナル抗体でスパイクタンパク質を除去できれば、被害者の救済に直結する。科学が被害者の声を裏付けることで、医療への信頼も回復するだろう。
NHKの問題事例とメディアの責任
こうした科学的な進展とは裏腹に、メディアの対応には課題が残っている。特にNHKの報道姿勢はさらに詳細な問題構造の解明が必要だろう。典型例は、2024年10月、NHKは「ニュースウオッチ9」による重大な誤報である。ワクチン接種後に亡くなった人の遺族を取材した映像を、新型コロナに感染して亡くなった人の遺族に見えるよう編集し放送した。この問題が発覚すると、NHKは謝罪し、報道局職員を懲戒処分にしたが、視聴者からは「意図的な印象操作だ」との批判が相次いだ。被害者団体の「つながる会」は、この誤報が遺族の苦しみを軽視し、ワクチン被害を隠してしまうと抗議した。また、NHKの番組「フェイク・バスターズ」では、コロナワクチンを「安全」と強調し、SNSの情報を「デマ」と断じる内容が繰り返された。2021年の放送では、専門家やタレントが出演し、「接種後の死亡はワクチンが原因とは限らない」と主張した。しかし、その後の超過死亡の急増やPVS研究の知見を考えると、この一方的な報道は誤解を招いた可能性があると言えるだろう。視聴者からは「薬害が明らかになった今、なぜ謝罪しないのか」との声も上がっている。2024年9月の「あさイチ」では、ワクチン健康被害救済制度の特集で、接種後の症状を訴える視聴者の声を紹介しながら、「ワクチンが原因とは言い切れない」と印象づける編集も批判された。これらの事例は、NHKが被害者の視点に立たず、公衆衛生優先の立場を押し付けた結果と言えるのではないか。包括的な反省が求めらる。
「反ワクチン」レッテルが隠してしまうもの
接種後に苦しむ人が「反ワクチン」や「陰謀論者」とみなされる傾向は強い。このレッテル貼りは問題の本質を見えなくする。すでに言及したように、「つながる会」のメンバーがNHKの取材を受けた際、ワクチン後遺症を訴えた内容が「コロナの特集」にすり替えられ、放送されなかったケースもある。彼らはワクチンを否定したいわけではない。苦しみを認め、支援を受けたいだけである。それなのに、「反ワクチン」と誤解され、社会的な対話から排除されてしまう。
この点、岩崎教授は「被害者の経験に耳を傾け、原因を調べるのが科学者の責任だ」と言う。クルムホルツ教授も「症状の経路は人によって違う。それを丁寧に探る必要がある」と述べている。この姿勢は、被害者を敵視せず、協力者として向き合うものである。NHKを含むメディアは、こうした科学者の態度を再検討する時期にきている。「反ワクチン」という枠組みで切り捨てるのではなく、PVS研究を参考に症状を客観的に報じれば、対立は協力に変わる。被害者と医師が話し合える場をメディアが作れば、理解が進むだろう。
日本社会とメディアにできること
PVS研究がどのように被害者救済に寄与するかはまだわからないが、被害が現実である状況では、具体的な行動が必要であろう。第一に、被害者救済を迅速化する仕組みを強化すべきだろう。今の救済制度は遅すぎる。認定データを基に治療研究に資金を投入すれば、とりあえず生活が改善される。また、情報公開の透明性を高める。政府やNHKが副反応データを詳しく公開し、地域ごとの状況を共有すれば、不信感が減り理解が広がる。
メディア、特にNHKは過去の誤報を教訓に、被害者の声と、PVS研究の成果を分かりやすく報じ、ワクチンの利点とリスクをバランスよく伝えなおすべきだろう。岩崎教授の指摘する「思いやりとオープンな心」をメディアが実践すれば、被害者への支援が進む。治療を受けた被害者が社会復帰できた事例を報じれば、他の人も希望を持てる。
| 固定リンク




