外交官ホセ・トリージャ氏の見解
2月21日のNeutrality Studisのチャネルの元ホセ・トリージャ外交官(José Antonio Zorrilla)のインタビュー(参考)は興味深いものだった。ホセ・トリージャ氏はスペインの著名な外交官であり、1973年にスペイン外交団に加わり、ミラノ、上海、モスクワで総領事を務めた後、2011年にジョージア駐在大使に就任した経歴を持つ。
ウクライナ危機の起源
ホセ・トリージャ氏は、このインタビューで現在のウクライナ危機についての見解を語った。核心は、この危機が米国主導のNATO拡大政策から始まったというものだ。1990年、ソ連崩壊後の世界秩序が議論される中、ドイツはユーラシア全域を包括する集団安全保障構想を提示したが、米国はこれを実効性に欠けるとして退け、NATO拡大の道を選んでしまった。この決定の背景には、イギリスの帝国主義者マッキンダーの地政学理論があった。この理論は、ドイツとロシアの提携を阻止することを主眼とするものだ。米国によるNATO拡大の選択には、さらに思想的背景もあったと氏は説明する。それは「マニフェスト・デスティニー(明白な運命)」という、19世紀以来米国が掲げてきた世界征服の使命感である。この思想に基づき、米国はロシアの封じ込めを目指してNATOの東方拡大を進めていった。こうした動向が、ウクライナへの介入という形で表れた。米国は1990年以降、NGOや諸機関を通じて資金を投入し、2014年のマイダン革命へと至る政変を準備した。同年、イスタンブールで和平協定が結ばれたにもかかわらず、ワシントンはこれを認めなかった。そればかりか、ウクライナに対して、NATO加盟を目指して戦争を継続するよう指示したという。トリージャ氏の分析は、ここで一つの結論に達する。米国の真の目的は支援ではなく、ロシアを消耗させることにあったのだと。米国は自国の覇権維持を優先し、ウクライナを代理戦争の手段として利用した。その結果が、現在の悲惨な紛争なのである。
外交コミュニティの認識
トリージャ氏は、今回のウクライナ危機におけるヨーロッパの対応にも厳しい見解を示した。氏によれば、ヨーロッパの政治指導者たちは米国の戦略に従うあまり、自らの地政学的現実を見失っていた。重大な問題は、EUが掲げる平和主義の理念に反して、ミンスク合意をウクライナの武装化と戦争準備のための時間稼ぎに利用したことだ。氏はこれを驚くべき裏切り行為と呼ぶ。とりわけドイツの方針転換は理解し難いという。ドイツは当初、包括的な対話路線を提案していたにもかかわらず、一転して対ロシア強硬策を支持した。氏はその原因を現在の指導者層の無知に求めている。また現在のEU戦略を主導するバルト諸国やポーランドについても、ロシアへの憎しみに基づく非合理的な政策を展開していると指摘する。氏は、戦略とは国益を守ることだと強調し、憎しみに基づく政策を満足を得られない過食症に例えた。しかし、その陰となる外交の現場では異なる認識が共有されていた。例えば、米国が10年かけてウクライナでのクーデターを準備していたことや、ヤヌコーヴィチが東西の調和を目指していたことは、外交官や軍関係者の間では周知の事実だった。しかし政治家への従属から、これらの真実を公に語ることはできなかった。結局のところ、スペインを含むヨーロッパ諸国は、米国の「プーチンは悪」という主張に表面的に同調せざるを得なかったが、外交の内部では別の見方が存在していた。氏はこうした真実と公式見解の乖離に強い苛立ちを示し、それはヨーロッパが主体性を欠いていた証左だとしている。
ロシアへの歴史的敵対心
トリージャ氏は、ヨーロッパとロシアの関係を250年の歴史を通して提示し、ナポレオンやヒトラーによる征服の試みが、今日のロシアへの敵対心の源流となっているとした。また、氏は、12のタイムゾーンにまたがるロシアの巨大さこそが、世界支配を目指す勢力にとっては欲望の対象となってきた理由だと説明する。クリミア戦争の例は、その構図を象徴的に示している。イギリスはロシアによるコンスタンティノープルのキリスト教都市としての奪還を阻止した。氏はこれを「西洋史における陰険で悲しい瞬間」と呼び、イギリスが覇権維持のためにキリスト教的価値観を犠牲にしたと強く非難する。米国もまた、ロシアを変わることのない脅威とみなしてきた。氏はその例として、第二次世界大戦後のトルーマン大統領の発言「2000万人の死ではロシアを弱体化させるのに十分でない」や、ソ連崩壊後のブレジンスキーの警戒的な姿勢を挙げる。こうした対ロシア敵対心の本質は、単なるロシア恐怖ではない。それは征服欲と憎しみに根ざしている。氏の分析では、ヨーロッパは自らの歴史的失敗から目を背け、メディアを通じてロシアを悪者とする単純な物語を受け入れた。その結果、現実的な政策立案の視点を失ったのである。かつてドイツが提案した楽園的なヨーロッパ構想は、米国の覇権主義的野心の前に敗れ、ヨーロッパはその渦に巻き込まれていった。
紛争解決へ
トリージャ氏は、ウクライナ危機の解決とロシアとの関係修復について、現実的な提案を示した。氏の出発点は明快だ。地理が変わらない以上、ヨーロッパはロシアと友好関係を築き直す以外に道はない。そして今、米国がロシアとの対話を再開した機会を捉え、ヨーロッパ諸国もモスクワへ赴いて関係修復を始めるべきだという。その具体的な手順として、まずビザ規制の緩和など、小さな一歩から始めるべきだとする。数年をかければ、相互の信頼を取り戻すことも可能だと氏は見る。実際、歴史を振り返れば、ナポレオンの侵略後でさえフランスとロシアは同盟関係を結んだ。「何も永遠ではない」という氏の見方には、こうした歴史的な根拠がある。しかし氏は、EUの現在の指導者層には厳しい評価を下している。彼らは自身の名声やキャリアのために、また非合理的な判断を下しかねないというのだ。特に懸念されるのは、バルト諸国とポーランドの動向である。米国の支援を失った今、彼らが莫大な資金を投じた対ロシア政策は無意味に終わる可能性が高い。氏は、それが指導者たちの「恥」の感覚をさらに強めると予測している。対照的に、ジョージアの現実的な判断を氏は評価する。ジョージアは第二戦線を開くという提案を拒否したが、これは賢明な選択だったという。その一方で、EUがジョージアにロシア非難を強要する姿勢は批判に値すると氏は指摘する。トランプ政権による紛争終結の可能性を歓迎しつつ、氏は真の解決に向けた課題も示す。それは、ヨーロッパの指導者たちが米国への依存から脱却し、自律的な政策を築くことである。ただし、次世代が権力を握るまでの15年から20年の間、現指導者層が大陸を混乱に陥れる危険性は依然として残る。最後に、氏はこの問題の解決には民衆による選挙を通じた大幅な指導者層の刷新が必要だと結論づけている。
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