牛乳の生産過剰問題
話としてはやや古いのだがこの間なんとなく牛乳の生産過剰問題を考えていた。なんとなくというのは、私は個人的に牛乳が好きで愛着があるからだ。ラジオ少年である私にとって秋葉原駅のミルク・スタンドは記憶の初源的光景である。
ニュース的な部分については三月十七日読売新聞”JA道中央会など 生乳減産方針決める ホクレン、1000トン廃棄も=北海道”を引用する。
JA道中央会やホクレンなどは16日、生乳が生産過剰になっているとして、2006年度から減産する方針を決めた。生産量は前年比97%程度になる見込みで、減産は13年ぶり。同会によると、05年度の生産見通しは約377万トンで、減産量は11万トン程度になる。また、ホクレンは3月中に生乳1000トンを廃棄することも決めた。ホクレンが生乳を産業廃棄物として処理するのは初めてで、費用は約2000万円という。
千トン、牛乳パック百万パックというと、うぁもったいないと思う。二十五メートルプールだと三杯分というと圧倒感は少し減るか。しかし補償価格は二千万円ということなら農政としてはちょっとした失敗ということだろうか。なお、実際には九百トンの廃棄となった。廃棄は九州でも発生している。
つまり、単純に言えば、需要予測ミスということになる。これが予測できないものだったかというと、そうではないらしい。「産業廃棄物として処理するのは初めて」というのは嘘ではないが、すでに生産過剰を乳製品に回すということを近年繰り返しており、その面で言うなら、乳製品加工工場のキャパを超えたというだけのようだ。
なので、一部でもっと牛乳を飲みましょう論が上がっているのはちょっと違う感じがする。日本の牛乳飲料が減っているのは確かで、それを押しているのは他の清涼飲料だ的な議論もある。私としては、それはちと嘘くさいと思う。
ラジオで聞いたのだが、トン数で見るなら、日本人の米の消費量は八百五十万トンで、牛乳は千二百三十万トン。その側面で見るなら、日本人の主食は牛乳である。
いずれにせよ、いわゆる牛乳を飲みましょうは頭打ちだろう。
関連してほぉと思ったのだが、平成十六年度の牛乳の国内総生産は八百二十八万トンで、内、北海道が三百八十二万トンと約半分を占める。さすが北海道だと思ったのだが、これはどうやら飲用にはそれほど回ってないらしい。都府県の生産が四百四十六万トンでそちらが飲用の九割になっている。ということは、基本的に北海道の牛乳生産は乳製品用であり、都府県の飲用の欠落のバックアップとして位置づけられていたようだ。ここでも、需要構造、つまり情報産業的なミスのようでもある。
ついでにもうひとつほぉなんだが、需要予測が難しいなか、需要の鉄板化しているのがどうやら学校給食らしい。なるほどねぇである。
![]() カルピスバター |
また酪農は米とは違い、補助もそれほどすげーことになっているというふうではなさそうだ。WTOなどで関税を無理目に維持しなくても価格は国際競争に耐えそう。ありがたい。ブログとかで米国牛乳の話をずるっと日本にもってきて牛乳はホルモン漬けだとかそのホルモンで巨乳が出来るといったネタが上がって馬鹿だなと思うが、日本の牛乳はそんなことはないよ。ってうか、その面でも日本の牛乳を守ったほうがいい。
あとは、脱脂粉乳を作る工場を増やして、アフリカとかに送ってほしい。
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コメント
> なお、実際には九百万トンの廃棄となった。
「九百トン」の誤植でしょうか?
投稿: akdamar | 2006.05.26 10:24
akdamarさん、ご指摘ありがとうございます。コメントをもって修正歴に代えます。
投稿: finalvent | 2006.05.26 10:33
>あとは、脱脂粉乳を作る工場を増やして、アフリカとかに送ってほしい。
賛成!
国内用の料理に使えるのも安く生産してほしい。
スキムミルクが高いんだ。割りに会わない。
あと玉子も増産して、粉にしてアフリカに。
きなこも。
たんぱく質系の乾物は、国内の非常時にも有用だし。
備蓄しつつ、放出していけば、一石二鳥だと思う。
投稿: noneco | 2006.05.26 11:44
ちなみに、
脱脂粉乳と小麦粉で、お粥というかオートミルというか、
ようするにノリ状のものをつくり、
朝食にするとよさげ。
フレッシュな果物をつければ、なおよし。
朝食の時間がスゲー短縮できる上に、
脳にも体にもよいと思う。
投稿: noneco | 2006.05.26 11:53
ノリ状は、言葉が悪いな。
さっぱりスープだな。
投稿: noneco | 2006.05.26 11:54
うろ覚えなのですが、北海道は生乳を本土にはおくれないような規制があったはずです。
それの、抜け穴的な方策で生協が独自に四葉牛乳を本土に入れたの始まりで、距離的な不利もありますが、
北海道の生乳は入れさせないというところから、
乳製品への偏向が、最初からあるはずです。
投稿: ブラッキー | 2006.05.26 13:13
最後の一文についてはどーかなー?
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060524-00000169-kyodo-soci
投稿: Tomtom | 2006.05.26 17:47
最後の「アフリカに」の話ですが
脱脂粉乳などは水で溶かなければいけないので、
枯渇していたり衛生状態の悪い地域などではあまり有難がられていないようです。
投稿: もも | 2006.05.26 17:54
「日本の牛乳はなぜまずいのか」(草志社)という本をみると日本の牛乳は他の国に比べてかなりまずいものらしいです。
根本的な問題があまり表だって来ないのは、先の建築業界の問題と通じるところがあるのかもしれません。
投稿: gama46 | 2006.05.27 06:54
カルピスバターは良いですね.
HPによると,カルピスの大量生産をするにあたり脱脂粉乳を自社で生産する事になって,
「大量に出るバターをどうしよう?」
「レストランに卸そう」→大好評,
となったらしいです.
勿論ホクレンもそんな感じで有効活用を模索してはいたでしょうけど,
あれも内部事情を聞くとすごい官僚的で縦割りで小回りのきかない組織らしいですからね.
営業部が必死で売り込み先を探してきたら,生産調整部がもっと生産させてしまうと言う悪循環だったのでしょう.
半分同情,半分呆れるって感じですか.
それでも,政府が買い取って食糧不足の国に送るって言う手は無かったのかという思いはありますが.
投稿: ネオ筑摩屋松坊堂 | 2006.05.27 18:03
脱脂粉乳までは悪くないとは思うのですが、その、水が無いとどうにもならならいという状態を克服って出来ないんでしょうかね?
摂取しやすく、輸出にも耐えられる品質保持。
錠剤みたいな形で、美味しく手軽に口に入れられる物はできないのでしょうかねえ?
多くの技術がある国なのに、脱脂粉乳を脱脂粉乳以外の形態に変えられないのかなあ、と。素人の勝手な理想ですが。
凄く細かい粉状、錠剤、飴の様なもの、かじる脱脂粉乳バーとか、バカバカしいものから新しいものが出来るようになるといいなあ。
投稿: いつも見てます♪ | 2006.05.28 02:17
悲しいことですね。
ただ、
>つまり、単純に言えば、需要予測ミスということになる。
>これが予測できないものだったかというと、そうではないらしい
乳牛は定期的に搾乳しないと、
乳が出てこなくなる、そうです。
牛さんは生き物であり、物品(モノ)じゃないので、
需要予測っていわれてもなあ。牛も困るし人間も困る。
投稿: けろやん。 | 2006.05.28 10:22
カルピスバターの件にもありますが、脱脂粉乳は膨大な量のバターが副産物として生み出される側面があり、その処理に困り果てているので、脱脂粉乳の生産は増やせないという話を聞いたことがあります。下手に量産しすぎると、膨大な量のバターが生み出されて値崩れするそうでして。しかもバターは生鮮食料品でもあるので、保存が利きません。
ちなみに、バターの値段は海外は日本の4割程度の値段なので、海外に輸出することを目的化する事はほぼ不可能ではないかと。捨てるよりましと安値輸出すると、国際貿易何とかにひっかかるとか。
ただ、九州の乳業農家は結構うまく言っているところが多いので、もうちょっと営業分野を強化してほしい、かつほくれんを構造改革してほしいところではありますが。
投稿: うみゅ | 2006.05.28 19:11
おしどりミルクケーキにしちゃえば輸出できるんじゃないかしら。
あれなら日持ちするし軽いし食べるのも簡単。
投稿: 地元の土産ですが | 2006.05.29 03:04
余剰生乳を海外援助へって話が出てましたが
要望ないとこへ一方的に援助するってのは
WTOのなんとかルールに抵触するそうで
農相と首相のやる気ビンビン具合に対して
事務方は乗り気じゃないみたいです。
投稿: | 2006.06.02 23:59