繊維問題についてのメモ
日本のメディアから見えない国際的な問題でも英米メディアからはくっきり見えることが多いのだが、このところの中国関連の繊維問題はあまり見えてこないように思う。つまり、それは大した問題ではないのだよ、ということでもあるのかもしれないが、私の印象としてはなんか違う。なにか重要な変化が進行しつつあるようにも感じられる。とりあえず、考える手がかりとして少し書いてみる。
繊維問題はすでに四月からEU関連で話題になっていた。経緯は「繊維ニュース」”対中セーフガード発動で/EUが指針を発表”(参照)を引用する。
欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(EC)は現地時間で6日、対中繊維セーフガード発動のための指針を制定、発表した。ECによると、EU加盟国および中国双方に明確性と透明性を与えるため、対中繊維セーフガード発動の要件や手続きを定めた。被害の調査に当たっては、EU加盟国だけでなく地中海沿岸の繊維品生産国の状況まで考慮に入れる。米国はすでにセーフガード発動のための調査に向かっており、EUも発動に向けて体制を整えたと言える。
米国議会側では”米国:中国製繊維製品に対する輸入状況調査開始”(参照)といった動きがあるにはある。
当の中国もこうした動向がわかってないわけではない。九日付け日本経済新聞”中国、欧米への繊維製品輸出額の伸び鈍化・1―3月”(参照)が伝えるように「欧米各国が中国製品に対する緊急輸入制限(セーフガード)発動を検討している影響がはっきりと出てきた格好だ」という傾向はある。他方、毎度の中国様のことだから、”WTO元事務局長、「中欧繊維製品の貿易摩擦は中国側の責任ではない」 ”(参照)といった日本人のように狭い心の民族性では笑えないような豪快なユーモアも披露してくださる。
いずれにせよ、そうした、ある意味、よくある危ういバランスが続くのだが、たとえば一昨日の国内ニュースでふとこんなふうに顔をもたげるのは、多少違和感に近い印象を受ける。日本経済新聞”仏中、国連改革へ共通認識めざす・首脳会談で一致”(参照)など、標題を読むかぎり、国連改革ですかと受け取れるし、間違いでもないのだが、実態はこちらに比重がありそうに思える。
シラク仏大統領は9日夕(日本時間同夜)、モスクワ市内のホテルで胡錦濤中国国家主席と会談した。両首脳は日本が常任理事国入りを希望している国連改革問題で、共通認識をめざすことで一致した。大統領は中国から欧州連合(EU)への繊維製品の輸出が急増し、欧州繊維産業に打撃を与えている問題も取り上げ、懸念を伝えた。
つまり、この会談の主眼は前半ではなく後半なのではないか。と、すれば、フランスと中国のトップでなんとかなる問題なのだろか。フランスは現在月末のEU憲法投票を控えていろいろ不安定な情勢にあるし、私の予想としては転けるでしょう、なのだが、仮にEU憲法問題を乗り切り、EUの頭にフランスが立ったとして、さて、この繊維問題が暗示する全体構造はなんとかなるものなだろうか。
先の繊維ニュースでは問題をこう指摘していた。
この中国からの輸入は、EU諸国の繊維産業に厳しい競争を強いているだけでなく、繊維生産品の95%がEU市場に依存している地中海沿岸諸国(モロッコ、チュニジア、トルコなど)からの輸出にも脅威となっている。さらにバングラデシュなどの発展途上国からの対EU輸出にも後退を余儀なくさせているという。
つまり、EU自体というより、EUの底辺を支える基盤に構造的な影響を与えていると言える。米国や欧州の中心部にしてみると安価な繊維の輸入は消費者のメリットすら言えるだろうし、実際のところ、こうした中心部では国家産業ではなく周辺への投資ということの関わりが大きい。話を少し飛ばすが最大の問題はこうした周辺域の雇用の構造に強い影響を与えることだろう。そこを媒介として、国家・政治的な運動に反映されることになる。
最新の動向はどうだろうと、Google Newsを見ていたら、たまたまBangkok Post Wednesday 11 May 2005"Chinese textile tsunami hits Europe"(参照)という記事に出くわした。見出しだけ引用するが、雰囲気は伝わると思う。
There's pain in Spain and tension in other European countries as jobs and sales are lost
やっかみで言うのではないが、こうした現象をウォーラステインやエマニュエルといった学者はどう捕らえ、どのような世界ビジョンを掲げているのか多少気になる。
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コメント
>「中欧繊維製品の貿易摩擦は中国側の責任ではない」
私もそう思いました。
「貿易自由化をなくすべきでなく」云々は少しおいておいても。
投稿: むぎ | 2005.05.12 00:56