「1兆円論議」はなあなあで終わり、三位一体改革は失敗するだろう
朝日新聞社説「国と地方 ― 1兆円は初めの一歩だ」で三位一体改革の一貫として小泉首相が地方向けの補助金を1兆円削減せよと指示したことを扱っていた。社説というのはある程度割り切って書かなくては話にならない。そこで、朝日は話の仕立て上、霞ヶ関を悪玉としてみたという趣向なのだが、話はそううまくいくわけもない。結語はうまく締めくくられているかのようだが、よく読めば支離滅裂だ。
地方交付税の特別会計は48兆円の借金を抱え、返すあてもない状況だ。国の税収が歳出の半分しかない時代に、これまでの仕組みは続けられまい。自立を果たすには、地方も痛みを避けて通れないのだ。
いまの「1兆円論議」で、三つの課題をきちんと実行できてこそ、三位一体の改革は最初の一歩を踏み出せる。その先に、補助金や交付税で霞が関の官僚と地方自治体がもたれ合っている現状から脱する道が見えるはずだ。
くさしてもいても仕方がないので支離滅裂さを明示しよう。
- 地方交付税の特別会計は事実上破綻している
- ので現状の地方交付税の特別会計の仕組みは継続できない
- ので地方交付税の特別会計を改革しなくてはいけない
- 改革とは自立である
- 自立には地方の痛みがともなう
- 国の補助金(税金)を狙って官僚と地方自治体がもたれ合っている現状がある
- もたれ合いを脱しなければいけない。
- もたれ合い脱すれば三位一体の改革は最初の一歩を踏み出せる
- だが、それ以前に今の「1兆円論議」で三つの課題をきちんと実行しろ
冗談を書いているのではない。もともと朝日の主張が支離滅裂なのだ。
と、言う前に「三つの課題」がなにを指しているのかが朝日の社説では明示的ではない。たぶん、三位一体の改革の同義のようだ。それではさらに話が支離滅裂になるのだが、三位一体の改革の基本説明にもなるので朝日新聞風にまとめるとこうだ。
- 政府が地方自治体をがんじがらめに縛ってきた補助金を減らす。(補助金削減)
- 行政サービスの地域差を埋めるための地方交付税交付金も見直す。(地方交付税見直し)
- その代わり地方に税源を移して、自由に使える財源を増やす。(税源移譲)
さて、朝日新聞の社説はなにが言いたいのだろう? できるだけ好意的にまとめるとこうなる。
- 地方には痛みが伴うということを朝日新聞はずばり言いたくない
- 官僚と地方自治のもたれ合いはいけない
- 「1兆円論議」を三位一体の改革のひな型にせよ
くどようだが「官僚と地方自治のもたれ合いはいけない」というのは地方が自立せよというのと同義だ。
「1兆円論議」とは、「小泉首相が各省庁に削減の数値目標を割り当て、地方向けの補助金を1兆円削減せよ」ということだ。
もちろんのこと、「1兆円論議」は三位一体の改革の緒戦でしかない。全体はこうだ。改革の総額は20兆円。2006年度までに補助金4兆円を削減。義務教育費などの義務的経費にちては全額、その他経費については8割を地方に税源移譲する。
朝日新聞の言いたいことをさらにまとめると、こうなるだろう。1兆円論議で官僚は地方に出す金を減らす。そしてその結果地方は苦しくなるががまんして自立しろ。そうずばり言えないのは、官僚に厳しく言えても地方に厳しく言えないからだ。
なぜ地方に厳しく言えないのかというと、おそらく、そんなこと地方が実現できないからだ。地方の自立というと聞こえはいいが私は無理だと思うし、朝日新聞も無理だろうと踏んでいるからこんな奇っ怪な社説が出てくる。
朝日は地方交付税交付金の削減にさらっとこう書き入れている。
高い地方公務員の給料や地方単独の公共事業などが十分チェックされにくい仕組みだからだ。
だが、地方はこの問題でチェックなんかされたくないのだ。地方公務員は地方のエリート層だ。地方単独の公共事業がなくなれば、地方の産業が崩壊する。
この激震に耐えられるのは財政規模とインテリジェンスをもった大型の地方都市だけだ。その意味で、これを実践すれば、石原都知事はちょっとした国の大統領より強化される。だが、それよりも、現状の多くの弱小の地方は実践できない((http://www.sanin-chuo.co.jp/column/meisou/2003/06/18.html))。だから、合併せよとなっている。
つまり、三位一体の改革の前提は地方の合併にあるのだ。だが、そうした地方は合併なんかしたくないし、都市民は地方の合併なんか問題にもしていない。
結局、緒戦の「1兆円論議」でこけるか、これだけクリアしてなあなあで終わるか。私はなあなあで終わると思う。この問題は解決しないだろう。つまり、三位一体の改革は名目は成功して実質は成功しない。そのことは前回の衆院選挙が暗示しているし、結局、回り回って国民の暗黙の合意だからだ。
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