2026.09.07

「2人に1人が難関大」になる前に大学が減る

日本経済新聞は9月7日付朝刊で、少子化が大学の序列を大きく変える可能性を報じていた。2050年には大学進学者が約42万人まで減る一方、現在の国公立大学の定員は約13万人、難関私大は約8万人ある。単純に足せば21万人だから、定員規模が大きく変わらなければ、大学進学者の「2人に1人」が国公立か難関私大に進む計算になるというのだ。そこから日経が描くのは、大学選びの物差しが「入る難しさ」を示す偏差値から、「入学後に学生をどれだけ伸ばせるか」という教育力へ移っていく未来である。

この見方には一見説得力がある。18歳人口が減り続ければ、大学入試全体の競争が緩むのは避けにくい。現在「難関」と呼ばれている大学でも合格しやすくなり、偏差値だけで大学の価値を測ることの意味は薄れていくだろう。ただ、2050年まで、現在とほぼ同じ数の大学が、現在とほぼ同じ定員を抱えたまま残っているのだろうか。そんなわけはない。

学生が大幅に減ることは何十年も前から分かっている。定員割れが続けば、大学は定員を減らし、学部を閉じ、他大学との統合を探る。経営が維持できなくなれば、募集停止や閉校に至るところも出てくる。大学進学者が20万人規模で減るのに、供給側だけが現在の規模を維持し続けると考えるのは、むしろ不自然である。偏差値の意味が薄れるより前に、大学の席そのものが減っていく。

私立大学ではすでに学生募集の成否に差が出ている。2026年度の私立大学全体では定員充足率が100%を上回ったが、小規模大学では定員割れが目立つ。入学定員100人未満の大学では充足率が8割台にとどまり、一定規模以上の大学では100%を超える。学生がすべての大学から均等に減っているわけではないとしても、集まる大学には学生が集まり、集まらない大学から先に経営が苦しくなる。まあ、当然。

この傾向が今後も続く。将来起きるのは「大学序列の消滅」ではなく「大学序列の圧縮」かもしれない。現在は、難関国立、早慶、MARCH、日東駒専、その下に多数の中小私大があり、偏差値による長い階段ができている。少子化によってこの階段全体がなだらかになるとは限らず、学生を確保できない部分から階段そのものが抜け落ちていく。いわゆる「Fラン」と呼ばれる大学についても、入試難易度が限りなく低くなった状態でいつまでも存続するとは考えにくい。偏差値が意味を失う以前に、授業料収入の減少によって経営そのものが成り立たなくなる大学が出てくる。

とはいえ、MARCHの価値が消えるのではなく、その下に位置していた大学群が縮小することで、MARCH級の大学が相対的な地位を保つという展開となりそうだ。入試偏差値は現在より低下しても、「どの大学を卒業したか」という社会的なシグナルまで同じ速度で弱くなるとは限らない。企業にしても、数百ある大学について学生をどれだけ成長させたかを一校ずつ精査するのは難しい。大学名や学部名、過去の採用実績を大まかな判断材料として使う合理性は残るだろう。「偏差値から教育力へ」という理念が広がっても、大学ブランドがすぐに役割を終えるわけではない。

日経が描く「偏差値から学生を伸ばす力へ」という方向は、教育論としてはよく分かる。入学時点の学力ではなく、4年間で何を身につけたかによって大学を評価するほうが、教育機関本来の役割にもかなっている。ただし、現実に起きる順番は違うかもしれない。まず学生が減り、定員割れが広がる。それを受けて大学が定員や学部を減らし、統合や撤退が進む。学生は残った大学へ集まり、その再編がある程度進んだところで、今度は残った大学同士の教育力が問われるという順序である。



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2026.09.06

ドイツにおける「極右政党」の台頭

2026年9月6日、旧東ドイツ地域にあるザクセン・アンハルト州で州議会選挙が行われ、反移民・反既成政治を前面に掲げる「ドイツのための選択肢(AfD)」が歴史的な勝利を収めた。

9月7日未明に全2661投票区の集計を終えた暫定最終結果では、AfDは43.8%を獲得し、第1党となった。2021年の20.8%から23ポイント増え、得票率は2倍以上になった。AfDにとってドイツの州議会選挙で過去最高の数字である。

対して、フリードリヒ・メルツ首相率いる国政与党(CDU)の州組織は17.2%にとどまり、2021年の37.1%から19.9ポイント減った。ドイツ社会民主党(SPD)は9.3%、緑の党は8.9%、左派党は8.6%、ザーラ・ワーゲンクネヒト同盟(BSW)は5.3%で辛うじて議席を確保した。FDPは2.6%に落ち込み、5%条項を下回って州議会から姿を消す。投票率は77.8%で、2021年の60.3%を大幅に上回り、同州史上最高となった。州の有権者は約170万7000人、人口は2025年末時点で約212万人である。

定数83の新州議会では、AfDが39議席、CDUが15議席、SPD、緑の党、左派党がそれぞれ8議席、BSWが5議席となる。過半数は42議席であり、AfDはあと3議席届かなかった。さらに象徴的なのは小選挙区で、41選挙区のうちAfDが38、左派党が3を獲得し、これまで州首相を出してきたCDUは直接議席を一つも取れなかった。現職州首相スヴェン・シュルツェ自身も選挙区で敗れている。

CDUは2002年以来、ザクセン・アンハルト州の州首相職を握ってきたが、長年州を率いたライナー・ハーゼロフは2026年1月に退任しており、現在の州首相は1月28日に就任したシュルツェである。今回の結果は単なる与党の敗北ではなく、東部ドイツの一州で従来の保守第一党がAfDに完全に置き換わったことを意味する。

AfD躍進の中身

東部ではすでに2024年のテューリンゲン州選挙でAfDが第1党となり、ザクセン州でも第1党に迫っていた。しかし今回は、州レベルの実際の選挙で初めて40%を大きく超えた。AfDが「抗議票を集める第二党」という段階を越え、少なくともザクセン・アンハルトでは明確な最大勢力になったことが最大の変化である。

出口調査の有権者動向では、AfDは前回選挙で投票しなかった層から約17万人を新たに取り込み、CDUからも約8万2000人を奪ったと推計されている。年齢別でも一部の若年層だけに偏った支持ではなく、全世代で第1党となり、35~44歳では過半数に達した。AfD支持者では移民と国内治安への関心がとりわけ強く、経済や社会保障への不安、既存政党への不信も重なった。

この選挙は州固有の現象ではない。選挙直前のARDの全国世論調査ではAfDが27%、CDU・CSUが21%となり、メルツ政権への満足度も極めて低い水準にあった。したがってザクセン・アンハルトでの圧勝には、東西格差や東部特有の政治文化に加えて、連邦政府に対する強い不満も重なっている。

加えて、ザクセン・アンハルト州のAfDにはもう一つ重要な特徴がある。州憲法擁護庁は2023年から同州AfDを「確認された右翼過激主義的な活動(gesichert rechtsextremistische Bestrebung)」と分類している。これは単なる政治的な「極右」という呼称ではなく、州の国内情報機関による正式な分類である。AfD側はこの点を争っており、訴訟は現在、連邦レベルの関連訴訟を待つため停止されているが、分類そのものや憲法擁護庁による監視・報告は現時点でも維持されている。

AfDが州政府で変えようとしているもの

州選挙が重要なのは、ドイツでは教育、警察、文化行政などについて州の権限が大きく、AfDの選挙公約のかなりの部分がまさにそこを標的にしているからである。

教育分野では、学校から「政治的イデオロギー」を排除するとして、校内でのレインボーフラッグの禁止、従来型教育への回帰などを掲げる。インクルーシブ教育については「終了」させ、障害児向けの特別学校を拡充するとしている。難民・庇護申請者の子どもについても、通常学級とは別の特別クラスで教育する方針を掲げている。また、ロシア語教育を維持・拡大し、ロシアとの生徒交流を再開することも公約に盛り込んでいる。

文化政策では「愛国的文化政策」を掲げ、「反ドイツ的」とみなす芸術や文化事業に州の資金を出さない方針を示している。象徴的なのがデッサウのバウハウスをめぐる対立である。AfDは現在の州の文化キャンペーン「moderndenken(モダンに考える)」に対し、「deutschdenken(ドイツ的に考える)」を掲げ、バウハウスについて国民的・歴史的な根を欠く近代主義として批判してきた。州政府はバウハウス財団などへの助成に関与するため、この問題は単なる文化戦争のスローガンにはとどまらない。バウハウスが1933年にナチス政権下で閉鎖された歴史もあり、州内外で強い警戒を呼んでいる。

移民・治安分野では、退去義務のある外国人の送還強化や、庇護申請者に対する就労義務の拡大などを掲げる。州警察や外国人行政の運用を厳格化する余地は州政府にある。一方で庇護資格そのものや移民法の基本枠組みは連邦法・EU法に依存するため、州政府が公約をそのまま自由に実行できるわけではない。教育や文化政策についても基本法、州憲法、差別禁止原則、裁判所による審査などの制約を受ける。したがって「州の権限だからすべて単独で実行できる」と見るのも正確ではない。

対ロシア政策でも同じ切り分けが必要である。AfDは対ロシア経済・文化関係の再構築やウクライナ支援への反対を掲げているが、NATO政策、連邦軍、武器供与、対ロ制裁、外交関係を決めるのはベルリンの連邦政府やEUである。州政府に可能なのは、ロシア語教育、学校・文化交流、州レベルの経済交流などの範囲が中心となる。

圧勝してもAfD政権が決まらない理由

ドイツの州政治では、極右台頭として注目されているが、AfDが第1党になっただけでは州首相にはなれない。州首相は州議会が選出するからである。

AfDは39議席で、過半数42に3議席足りない。対するCDU、SPD、緑の党だけでは31議席であり、左派党を加えても39議席にしかならない。BSWまで含め、AfD以外の全5党を合計すれば44議席となる。一方、AfDとBSWを算術上合計すれば44議席になる。

もっとも、これはあくまで議席の足し算であり、CDU、SPD、緑の党、左派党はいずれもAfDとの協力を拒否している。CDUはさらに2018年の党決議によって、AfDだけでなく左派党との連立や同種の協力も排除している。このため、AfDを政権から外しつつ安定多数を作ろうとすると、CDUは自党の「不相容決議」と統治可能性の間で難しい選択を迫られることになる。

鍵を握るのが5議席のBSWである。BSWは、AfDのウルリヒ・ジークムントもCDUのシュルツェも州首相に選ばず、政党横断型の州首相と案件ごとの多数派形成を提案している。またAfDを一律に排除する「防火壁」には否定的で、政策ごとの協力を排除していない。とはいえ、選挙直後、ジークムント自身はBSWの超党派州首相案を「ごちゃごちゃしたもの」と退け、政権参加のために大幅な妥協をする考えはないと表明した。協力するならAfDが掲げる明確な政策転換を受け入れる政党、あるいは個々の議員と行うとの姿勢を示し、それが不可能なら再選挙も選択肢だと述べている。したがって現時点で「AfDとBSWの連立交渉が始まった」と表現するのは拙速で、両党を足せば過半数になるというだけで、正式な連立構想として合意されているわけではない。

州首相選出には「第3回投票」の前にもう一段階ある

州首相選出の手続きについても注意が必要である。ザクセン・アンハルト州憲法では、第1回投票で全議員の過半数、現在なら42票が必要となる。決まらなければ7日以内に第2回投票を行い、ここでも全議員の過半数が必要である。それでも決まらなかった場合でも、単純にそのまま第3回投票へ進むわけではない。さらに14日以内に、州議会を任期途中で解散するかどうかの採決を行う。解散に全議員の過半数が集まらなければ、その直後の投票で州首相を選び、この段階では「投じられた票の多数」を得た候補が当選する。

このためBSWなどの議員が棄権すれば、39議席しか持たないAfD候補でも理論上は州首相に選ばれる余地があるが、棄権すれば自動的にAfD政権になるわけではなく、対立候補への投票数、候補者の立て方、解散採決などによって結果は変わる。州首相選挙は秘密投票であるため、個々の議員の離反も制度上は排除できないが、現段階でCDU議員の離反を既定路線として扱う根拠はない。

新しい州議会は遅くとも10月6日までに招集される。新州首相が決まるまで、シュルツェ州政府は必要な行政を継続することになる。州首相選出そのものには明確な最終期限がないため、政権形成が長期化する可能性もある。

州政治と連邦政治の切れ目

今回の結果には、過大評価しやすい面と過小評価しやすい面がある。過大評価しやすいのは、「この選挙でドイツ全体が親ロシア・極右路線へ転換した」と見ることである。これは連邦選挙ではなく、人口約212万人の一州の選挙である。外交、NATO、連邦軍、ウクライナへの武器供与、対ロ制裁といった根幹は連邦政府やEUの権限にある。ザクセン・アンハルト州政府が単独で転換することはできない。

一方で、過小評価できないのが州政府そのものの権限である。学校教育、教師の採用や教育行政、警察、文化予算、州内の移民行政、公共放送をめぐる州間協定など、住民の日常生活に直結する分野には州政府が大きな影響力を持つ。さらに人口200万人を超えるザクセン・アンハルト州は連邦参議院に4票を持つため、州政府の構成は一部の連邦法制にも影響する。ただし4票は州政府として一括して行使しなければならず、これ自体が外交政策を変更する力ではない。

今回の結果はいくつかの視点に分けて見る必要もある。まず、ザクセン・アンハルトにおいてAfDは既存の保守政党を明確に凌駕し、43.8%というこれまでにない規模の最大勢力になったことだ。制度のレベルでは、39議席では単独過半数に届かず、他党の「防火壁」と複雑な州首相選出制度によって、選挙での圧勝はそのまま政権獲得には結びつかない。行政のレベルでは、仮にAfDが州政府を握れば、最初に変化が表れるのはドイツの外交ではなく、学校、警察、移民行政、文化助成といった州固有の領域である。

このことから、2026年9月7日時点で最も正確なのは、「AfD政権が誕生した」ではなく、「州憲法擁護庁から右翼過激主義的な活動と分類されているAfDが43.8%を獲得し、ドイツの州レベルでこれまでで最も現実的に政権獲得へ近づいた」ということである。

AfDを排除したままCDUがどのような議会多数を組み立てるのかにも関心が集まっている。CDUが左派党との不相容方針をどこまで維持できるのか、BSWが実際の州首相投票でどう行動するのか、そしてAfDが他党や個々の議員から必要な票を取り込めるのかである。

今回の選挙が突きつけた問題は、ドイツ全体が直ちに「極右国家」になるかどうかではない。東部州で最大勢力となったAfDを、他党が政権から排除し続けられるのか。そのために従来なら協力しなかった政党同士がどこまで妥協するのか。そして、その「防火壁」を維持する政治的コストが今後さらに高まるのかということである。



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