クールビズ・28℃はどこへ行った
観測史上初の早い梅雨明けと猛暑の夏
2025年、令和、何年になるんだっけ。まあいいや。関東地方は観測史上最も早い6月下旬の梅雨明けを迎えた(追記:まだだったらしい)。気象庁の発表によれば、関西はもう6月27日に梅雨明けが宣言され、例年より10日以上早い異例の事態となった。7月に入ると東京は連日33℃を超える猛暑に見舞われ、夜間も28℃を下回らない熱帯夜が続いている。昨年もひどかったが今年はさらに酷い。湿度70%超の蒸し暑さの中、オフィスや家庭ではエアコンがフル稼働している。そりゃね。だけど、こんな夏に、「クールビズ」や「室内を28℃にしましょう」という声は、まるで聞こえてこない。聞こえてますかね。かつて夏の風物詩だった「ノーネクタイ、ポロシャツ」のキャンペーンや、環境省の省エネ呼びかけは、メディアでもSNSでも影を潜めている感じだ。街中を見ても、スーツ姿は減り、Tシャツや吸汗速乾のシャツが当たり前になったから。でも、スーツで苦しんでいる人は見かけるなあ。苦しそう。28℃設定のエアコンで過ごす人は、今ではいるんだろうか。猛暑の現実が、クールビズの存在感を薄れさせているというのか。
クールビズはどうなっている? 政府の曖昧な態度
調べてみたら、現状、いまだにクールビズは政府の方針として一応「生きて」いた。環境省の公式サイトを確認すると、2025年も5月1日から9月30日(一部企業は10月31日まで)をクールビズ期間とし、室内温度28℃と軽装を推奨している。ほんと。しかし、このキャンペーンが話題に上ることはほぼない。テレビや新聞で「クールビズ開始!」という報道は皆無に近く、SNSでも「クールビズってまだやってるの?」「28℃とか無理すぎ」と揶揄される。なぜか。当たり前だろう。最大の理由は、28℃設定が熱中症予防と真っ向から矛盾することだ。外気温33℃(風通しのいい木陰でだよ)、湿度70%の環境で、28℃の室内は汗だく。脳が動かない。仕事にならない。日本救急医学会は、熱中症リスクを下げるには26℃以下が望ましいと指摘している。環境省も「熱中症に注意し、柔軟に運用を」と付け加えるが、だが、不思議なことに具体的な代替温度やガイドラインは示されていない。いいなあ。この曖昧さは、日本らしい。日本文化の忘れて「見て見ぬふり」の姿勢そのものだ。過去と現在の矛盾を認めない。これだ。新型コロナのワクチンも「最初から若い人には勧めてなかった」とか言ってもOKである。いや、まともななら、さっさと指針を変えればいいのに、なんとなく話題がフェードアウトするのを待っているかのようだ。あれかな、お能の伝統かな、音も立てず消えていくとか。
クールビズの歴史と28℃推奨の背景
クールビズは2005年、小池百合子環境相(当時)の主導で始まった。あれから、20年。え?、あれから20年? 小池百合子? そうだったなあ。地球温暖化対策と省エネを目的に、夏のオフィスで「ノーネクタイ、ノージャケット」を奨励し、エアコン設定を28℃に統一するキャンペーンがあった。今の20代はそもそも知らないかもしれない。なんだろう、画期的だった?なんか奇妙だった。とりあえずスーツ文化が根強かった日本で、インドネシア風の半袖シャツがオフィスに浸透し、おじさんはこれからやるぞ的にネクタイを外した。見てられんねえ。でも、電力消費を抑える効果もあったのか。環境省によると、2005~2010年のクールビズで、CO2排出量は累計で約200万トン削減されたという。ほんとかねえ。28℃という数字は、快適性と省エネのバランスを考慮した目安として選ばれたらしいが、科学的根拠は曖昧だ。というか、ないだろそんなもの。当時の研究では、28℃でも湿度50%以下なら快適とされたが、日本の夏の湿度(70~80%)では話が別だ。欧州とかなら、そうだろ。ここは日本だよ。ねーよ。そして、2011年の東日本大震災後は、電力危機を受けてクールビズが「スーパークールビズ」に進化した(退化ともいう)。より「カジュアル」な服装(アロハシャツやスニーカー)がOKになり、節電意識が高まった。ケチな人の正義となった。しかし、2020年代に入ると、テレワークの普及や猛暑の激化で状況は変化した。「コロナ騒ぎ」もあったしなあ。室温28℃は「非現実的」だろ。企業は独自に黙って26℃や25℃を設定するようになった。環境省の「デコ活」(脱炭素アクション)でもクールビズは継続されているが、この20年間変わらない28℃推奨は、変わらない・変われない日本だ。
28℃は熱中症のリスク
28℃の室内設定は、猛暑の東京では熱中症リスクを高める。そもそも湿度50%ならという話なのに、湿度は言及されない。ばかみたい。2025年7月、東京都内の熱中症搬送者はすでに1万人を超え、気温30℃超の日が続く中、28℃のオフィスや家庭は当然我慢の限界だ。医学的には、湿度70%以上で28℃は体温調節が難しく、汗が蒸発しづらいため熱が体内にこもる。特に高齢者や子供は熱中症のリスクが高い。さっきも触れたが、日本気象協会のデータでは、26℃以下で湿度60%未満が熱中症予防の理想とされる。では、最適な設定はどうあるべきか。エアコンは26~27℃が現実的だ。東京電力の2025年夏の予備率(7%以上)なら、26℃設定でも電力供給は対応可能みたいだし、たぶん、きっと。扇風機やサーキュレーターも併用すれば、体感温度はさらに下がり、エアコン負荷も抑えられる(扇風機の消費電力はエアコンの1/10程度)ということだが、あまりめんどくさい話にしないほうがいい。そういえば、エアコンは最新型ほどエコなんだから、買い替えたほうがいい。服装は、綿や吸汗速乾素材が基本かな、知らん。在宅勤務ならTシャツや短パンでも問題ないかもしれない。Zoom映えを意識して上半身はキレイめというスタイルはどうなったか。水分補給は1時間にコップ1杯、塩分補給(塩飴やスポーツドリンク)も忘れずに行うとされる。これもやり過ぎな感はあるが。というか、水を飲んだら熱中症が防げるだろうけど効果は限定的だろう。オフィスでは、換気を強化し、給水スポットを設け、ピーク時間(12~15時)の節電として、照明を間引き、PCをスリープモードにする。ああ、うるさいうるさい。しかし、電力不足を回避しつつ、快適性と健康を両立できるようにはすべきだろう。ようするに環境省の指針がなくても、現場はすでにこのラインで動いている。というか、そうするしかない。
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