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2025.06.23

2025年都議選: 40万票「死票」が示すもの

 2025年6月23日、開票率99%に達した東京都議会議員選挙で、「再生の道」が403,613票(7.73%)を獲得しながら127議席中ゼロ議席という結果が確定した。この40万票は、それなりに都民の明確な政治的意志を表すはずだったが、中選挙区制の下で全42選挙区に分散し、平均9,610票しか得られず、当選ライン(2~3万票)に届かなかった。NHKの出口調査では、若年層や無党派層が既成政党に不満を抱き再生に投票した可能性が高いが、組織票や地盤が欠如していたのは確かだろう。自民党は880,115票(16.85%)で21議席と前回(33議席)から大幅減少し、都市部の若年層離れが顕著だが、この自民の弱体化が、再生への抗議票を後押しした側面もあるだろう。

 この再生の得票数と当選者数を共産党と比較すると、その差がある異常事態を示していることがわかる。共産党は487,403票(9.33%)で14議席を確保し、平均34,800票で1議席を獲得した。足立区や葛飾区での地域密着活動と組織力が票を集中させ、効率的に議席に結びつけたといえる。対して、再生は知名度ゼロの新人42人を散らばらせ、戦略的な集中を欠いたとはいえるが、この差、つまり「死票」は奇妙な呪いを残すだろう。この「死票」現象が危険な兆候である理由は、共産党に比べてもそうだが、40万人の声が議会に届かないことである。投票しても無駄と感じた有権者が増えた。これは表面的には政治離れが加速し、棄権率が上昇するはずだが、今回の都議会選挙の投票率は47・59%で前回比5・2ポイント増加している。つまり、再生は死票の生産制度・装置だったと言える。過去の選挙でも小規模政党が苦戦したが、40万票規模の無視は前例がなく、この死票の呪いは民主主義の基盤が揺らがせることになるかもしれない。

再生の異例戦略とその背景

 再生の道の選挙戦略は異彩を放つとは言える。42人の新人候補を全選挙区に配置し、供託金1,260万円を投じたが、議席ゼロに終わった。平均得票9,610票は当選ラインに遠く及ばず、戦略的な集中が欠如していた。石丸伸二氏(元広島市長)の知名度向上や「変革」イメージの浸透が目的だった可能性が高く、NHKのウェブ・テレビ速報(10:06時点)で「0議席」と報じられたにもかかわらず、メディア露出を優先したとみられる。過去の希望の党(2017年)は知名度のある候補を混ぜて議席を獲得したが、再生はそれさえせず、リスクを極限まで高めた。おかしい。

 この戦略は、議席獲得より長期的な国政進出(例: 2026年参院選)を視野に入れた布石とも解釈できる。だが、組織力や地域基盤がなく、票が散発的にしか集まらなかった。再生支持層はSNSを通じて動員された若年層が中心と推測され、既存政治への抗議が背景にある。供託金の回収が困難な状況は、通常なら、経済的リスクを浮き彫りにし、次回選挙での信頼回復が課題となるとなるのだが、この雰囲気はおそらくそうではないだろう。

都民ファーストと無所属の台頭

 さて、勝利者ともいえる都民ファーストが1,033,881票(19.80%)だが、31議席を獲得し第一党に輝いた。小池百合子都政の経済対策やインフラ整備が23区で支持を集め、NHKの予想議席数(25~35)も安定している。一方、無所属候補が701,854票(13.44%)を獲得し、新宿区や世田谷区で上位に入るなど、地域密着性が際立つ。既成政党への不信がこの票を押し上げた。かくして都議会は多党分散型(自民21、共産14、立憲17)となり、単独過半数が不在となった。まあ、小沢チルドレンとして登場し、自民党にずっぽりいた小池百合子氏なので、国政的なマターでの問題とはならないだろう。

 それにしても東京の政治としてのこの二極化は、都政の運営を連立や協調に依存させることになる。無所属の票はまとまりに欠けるが、地域課題に特化した候補が支持を集め、本来なら(再生が奇妙な事態を引き起こさなければ)多様性を反映していることになる。自民の大幅減(33→21議席)は若年層離れを象徴し、都民ファーストとの対立軸が明確になる。区域ごとの支持差は今後の政策に影響を与えるかもしれないが、これもおそらくそうはならないだろう。

 あと余談程度だが、国民民主党は110,554票(2.12%)で9議席を獲得し、少ない得票率で効果的に都市部の安定した支持を維持した。維新の会は79,843票(1.53%)で1議席はまぬけ感が漂う。れいわ新選組は45,539票(0.87%)であらかたの予想に反して0議席であり、すでにこれらの不満吸収型の政党は賞味期限切れとなってきた可能性がある。



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