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2025.06.20

都議選公報をAIに分析させたら、選挙が身近になった話

 都議選がやってくる。またか。うんざりだ。いつものように選挙公報がポストに投函されたが、ざっと目を通してもどの候補にも心が動かない。名前と顔、どうでもいいスローガンが並ぶだけで、具体性に欠ける。それと、学歴社会はどうかと思うし、むしろいわゆる低学歴の人が頑張るのはいいと思うけど、なんだろ、大学以降にある程度学問的な経歴を積んでいるという人はいない。まあ、毎回こんな感じだ。投票する意味あるのか。棄権しようかとさえ思う。投票したところで、身の回りの生活が劇的に変わるふうもない。

 と、なげやりな気分で、ふと思いついた。AIにこの公報を見せて、「どの候補がいい?」と聞いてみたらどうなるだろうか。

 どうせ「特定の候補は支持できません」とか、「どの候補も魅力的です」みたいな曖昧な答えが返ってくるに違いない。倫理的な理由で回答拒否される可能性もある。それも一興。半ば好奇心で、試しにやってみることにした。

 公報を開き、候補者の主張が書かれたページをスマホで撮影。画像をAIにアップロードして、「これ見て、どの候補がいいか教えて」と投げかけた。

 即座に答えが返ってくる。AIは公報から各候補の主張を読み取り、災害対策、都市インフラ、高齢者問題といった分野から、重点政策を項目ごとに整理して一覧表にしてくれた。しかも、各項目にどの候補がどれだけ力を入れているかを評点で示している。表はシンプルで、どの候補が何を重視しているかが一目でわかる。つまり、国政レベルの話、外交や憲法改正みたいなテーマは、さっさと無視できる。

 さらに、AIは「あなたが求める候補のタイプは」ととして、選択肢化して提示してきた。「災害対策を最優先」「都市インフラの老朽化対応を重視」「高齢者支援に力を入れる」といった項目を提示し、それぞれと候補の重点政策をマッチングさせた分析まで示してくる。これらな「災害対策を重視するなら候補Aが強く、避難所の整備や防災教育に具体的な提案があるが、インフラ老朽化にはやや弱い」「インフラと高齢者支援なら候補Bがバランスよくカバーしているが、災害対策は標準的」といった具合でわかりやすい。各候補の強みと弱みが、まるでパズルのピースのようにはっきりと見える。学習参考書かね。

 とはいえ、正直、驚いた。これまで公報なんてくだらない紙切れだと思っていた。候補者の主張は抽象的で、どれも似たり寄ったりである。自分が災害対策や都市インフラ、高齢者問題に関心があると漠然と思ってはいたが、具体的にどの政策が大事なのか、実はあまり深く考えていなかった。しかし、AIが作ってくれた表と分析を見ると、自分の優先順位がクリアになる。
 個人的には、最近の豪雨や地震のニュースのせいもあり、災害対策の具体性は譲れない。老朽化した橋や道路の補修も日々の生活で不便を感じる。高齢者問題も、親の介護経験からして他人事じゃない。AIにこれを伝えると、災害対策とインフラ整備に注力しつつ、高齢者向けの福祉施策も提案する候補が浮かび上がる。え、そうなの?と、その候補の公報を読み返すと、確かに避難所の耐震化や老朽インフラの更新計画、介護サービスの拡充が注力されている。さっきまで何も感じなかったのにな。

 このプロセスは、ただ情報を整理してくれただけでなく、私の身近な政治関心事を掘り起こし、何を基準に候補を選べばいいのかを明確にしてくれたわけだ。東京都議会選挙なんて、「おまえらに関係ない国政マターばかりで身近な問題は後回しだろ」と思っていたが、AIは、地域の災害対策、インフラ、高齢者問題に絞って分析できる。というか、政党への偏見が中和された。

 棄権しようかと投げやりだった気持ちが、「投票する意味があるかもしれない」に変わる。AIは、当然だが、特定の候補を押し付けるのではなく、私が何を求めているのかを整理し、それに合う選択肢という形状にして示してくれたわけだ。

 こんな風に選挙に向きあうとは、想像もできなかったし、AIがここまで身近な課題と選挙をつなげてくれるなんて、驚いた。これからの時代、AIテクノロジーがこんな風に私たちの選択を後押ししてくれる場面は増えるのかもしれない。

 まあ、アイロニカルに言えば、これを逆の処理をすれば理想の公報が書けてしまうのかもしれないけど、そうなるなら都議の通信簿も参照できるようにすればいいのだろう。



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