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2025.01.28

中華製AI「DeepSeek」

 2025年1月、中国が開発した大規模言語モデル「DeepSeek-R1」が世界に衝撃を与えた。低コストかつ旧世代のコンピュータチップを活用し、米国製AIに匹敵する性能を実現したと発表されたからだ。それを真に受けてかネタならなんでぱくつくからか、𝕏ことツイッターやYoutuberが騒いでいる。開発を支援した杭州のヘッジファンド「High Flyer」によれば、モデルのトレーニングには約600万ドルのコストしかかかっていないという。これに対し、米国のMetaが開発したAI「Llama」は16,000個の高性能チップを用い、はるかに高額な開発費を要したとされる。このニュースはしかし、技術株市場をも直撃し、AI開発を巡る国際競争の激化を浮き彫りにした。しかし普通に考えてもDeepSeekの主張には疑問点も多く、発表のタイミングには政治的意図を示唆する声もある。中国AIの革新が米国の技術優位を揺るがすかもしれないが、なんとも雲を掴むようよな話である。

低コストの秘密

 DeepSeek-R1の開発において特筆すべきは、その圧倒的なコスト効率である。米国のMetaやOpenAIが膨大なチップと資金を投入して開発するのに対し、DeepSeekは2,000個の旧世代Nvidia製チップを使用し、わずか600万ドルのコストで済ませたと主張されている。その背景には、効率的なアルゴリズムの採用がある。特に注目されるのは、チップ間の通信を最適化する技術であり、これが少ないリソースで高性能を発揮する鍵となった。とはいえ、DeepSeekのリソースに関しては、発表内容に疑念が残る。開発に用いられた2,000個のチップ以外にも、大規模なNvidiaチップリソースが試行錯誤のために使用された可能性が指摘されている。また、発表されたコストが全ての工程を反映しているのか、それとも一部のトレーニングコストのみなのかについては明確な説明がない。自国のAI技術力を国際市場にアピールする中国の戦略的意図も見え隠れしている。それでも、DeepSeekは一部オープンソース化されており、これが技術の発展を加速させる可能性がある。

投資家の懸念

 DeepSeekの発表は、米国市場にも混乱をもたらした。技術株を多く含むNasdaq指数は3.1%下落し、特にNvidiaの株価は17%の急落を記録した。NvidiaはこれまでAI開発の主要なハードウェアプロバイダーとしてその地位を築いてきたが、DeepSeekが旧世代チップでも高性能を実現したというニュースは、同社の事業モデルに対する疑念を引き起こした。
 また、この珍事は、米国AI企業が推進してきた巨額投資戦略に対する懸念を浮き彫りにした。OpenAIやGoogleなどは、大規模なデータセンター構築や最先端チップの導入に莫大な資金を投じているが、それが必ずしも持続可能ではない可能性が浮かび上がった。投資家たちは、高コストなAI開発が市場競争力を維持できるのかという疑問を抱いている。
 輸出規制がどの程度効果を発揮するかも議論の的だ。規制が短期間で成果を上げていないと見る声がある一方、長期的には中国のAI開発を制約する可能性もある。特に、規制が最先端チップの輸出に重点を置いていることが、旧世代チップを活用する中国の戦略には必ずしも有効でない可能性が指摘されている。

政治的意図への疑問

 DeepSeekの発表には、開発リソースやコストの信憑性だけでなく、政治的意図についても疑念がある。特に、発表が新米大統領就任直後に行われたことは注目に値する。これは米国のAIリーダーシップに対する信頼を揺さぶり、中国の技術的優位性を世界にアピールする狙いがあった可能性がある。さらに、米中間のAI競争が単なる技術の優劣を超えて、経済・政治の駆け引きに深く絡み合う様子が浮かび上がる。この競争の中で、DeepSeekの実力が本当に米国企業に対抗し得るのか、それとも過剰評価にすぎないのか。昔のネットスラングでいうなら、「餅つけ」というところだろう。

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