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2025.01.24

認知症『LATE』

 トランプ大統領周りの保守派の動向を見ていて、たまたまLATEの記事を見かけた。日本でもあまりこの話題は聞かないように思うので、これを機会に少し言及しておきたいと思った。
 記憶力の低下や認知機能の衰えが現れると、多くの人が真っ先に疑うのは「アルツハイマー病」だろう。確かに、アルツハイマー病は認知症の中でも最も一般的な疾患であり、日本でも高齢者の約7割がこの病気に苦しんでいる。しかし、実はそれとは別の認知症「LATE(Limbic-Predominant Age-Related TDP-43 Encephalopathy)」が原因である可能性があるということが近年注目されつつある。LATEはアルツハイマー病と症状が非常に似ているため、誤診されることが多い、というかほぼ診断がつかない。
 アルツハイマー病は、ベータアミロイド斑やタウタングルと呼ばれる異常タンパク質の蓄積が特徴であるが、LATEは、脳内のTDP-43タンパク質が異常に蓄積することで引き起こされる認知症である。TDP-43は通常、細胞内でRNAの処理に関与するタンパク質だが、異常が起こると神経細胞に蓄積し、細胞死を引き起こす。このプロセスが記憶力の低下や認知機能の衰えを招く。LATEの症状はアルツハイマー病と非常によく似ているが、病理学的には異なる。
 LATEの発見は、2019年に正式に命名された比較的新しい疾患である。それ以前にも、高齢者の認知症患者の中には、アルツハイマー病の典型的な病理学的特徴が見られないにもかかわらず、記憶力の低下や認知機能の衰えが進行する症例が報告されていたが、これらの症例を詳しく調べた結果、TDP-43タンパク質の異常蓄積が共通して見られることが明らかになった。
 症候がほぼ同一で実質的な対処が存在しない現状、LATEに着目する実際的な意義は低いのかもしれないが、LATEとアルツハイマー病には違いがある。その進行速度である。LATEはアルツハイマー病よりも進行が遅い傾向がある。とはいえ、LATEは約3分の1の患者でアルツハイマー病と共存し、その場合、病気の進行を加速させることもわかってきた。診断は難しい。また、LATEはアルツハイマー病とは異なるメカニズムで脳に影響を与えるため、治療法は異なる手法を探る必要があるかもしれない。現時点では、アルツハイマー病と同様、LATEに対する特異的な治療法は確立されておらず、アルツハイマー病との共存が疑われる場合、アルツハイマー病の治療が行われる。
 病理学的な解明は進展しているが、現時点では、TDP-43タンパク質の異常蓄積を検出するためのバイオマーカー特定が確立されていないことから、LATEを確定診断するための明確な検査方法がなく、主に死後の剖検によって確認されることが多い。生前の診断が難しいこともあり、多くの患者がアルツハイマー病とされているのだろう。

 

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