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2025.01.30

「コンコルド」復活?

 20年前、コンコルドが、悲劇的な事件の後、最後の飛行を行い、超音速旅客機の時代は終わりを告げた。しかし、2025年1月28日、カリフォルニアのモハベ砂漠で、再び超音速飛行の夢が現実になろうとしているらしい。Boom SupersonicのXB-1が音速を突破し、Mach 1.122に達したという。この成功は、超音速飛行の新たな時代の幕開けを告げるものだろうか。コンコルドの失敗から学んだ教訓を活かし、経済的・環境的な課題を克服できるのだろうか。自分の世代には、コンコルドと聞くだけでワクワクする気持ちが込み上げてしまう。

コンコルドの失敗
 コンコルドは、そのスピードと豪華さで前世紀、世界中の注目を集めた。が、経済的には大失敗だった。ボーイング747と比較して、コンコルドは4倍の燃料を消費しながら、乗客数はわずか100人程度だった。この非効率性が運航コストを押し上げ、航空会社にとっては大きな負担となり、結果として、チケットの価格は高額になり、一般の旅行者には手の届かない存在となってしまった。
 コンコルドはその騒音問題でも批判を浴びていた。離陸時の轟音や超音速飛行時に発生するソニックブームは、周辺住民にとって大きな悩みの種だった。燃料消費量の多さから、環境への負荷も無視できない問題だった。当時は気候変動への意識が今ほど高くなかったが、現代ではこれらの問題がより深刻に捉えられている。
 そして、2000年、パリのシャルル・ド・ゴール空港を離陸直後にコンコルドが墜落し、乗客100人と乗員9人が犠牲となった。この事故は、超音速飛行の安全性に対する信頼を大きく損なうものとなり、コンコルドは一時運航を停止し、再開後もそのイメージは回復することはなかった。この事故は、超音速飛行のリスクを決定的に浮き彫りにし、まあ、終わった、はずだった。

Boom Supersonicの挑戦
 Boom SupersonicのXB-1による挑戦は、コンコルドの失敗を乗り越えるための第一歩として注目されている。2025年1月28日、XB-1はモハベ砂漠で音速を突破し、Mach 1.122に達した。この成功は、超音速飛行の技術的課題を克服するための重要なマイルストーンである。XB-1は、Overtureという次世代超音速旅客機の開発に向けたテスト機として設計されており、この成功はOvertureの実現に向けた大きな一歩となった。
 Overtureは、当然ながら、コンコルドの失敗を教訓に設計されている。騒音問題に対処するため、エンジンの設計が大幅に改良されており、空港周辺での騒音は現在の亜音速機と同程度に抑えられるという。燃料効率も向上し、運航コストを削減することで、チケット価格をビジネスクラスやファーストクラスと同等に抑えることを目指している。これにより、より多くの人々が超音速飛行を利用できるようになる可能性がある。
 すでにユナイテッド航空、アメリカン航空、日本航空などからOvertureに対する関心を示されているという。ユナイテッド航空は、すでに2021年に15機のOvertureを購入する条件付き契約を結んでおり、さらに35機の追加オプションも持っている。このような航空会社の関心は、超音速飛行に対する市場の潜在的な需要を示しているのだろう。Overtureが実現すれば、ニューヨークからロンドンまでの飛行時間が大幅に短縮され、ビジネスや観光に大きな影響を与える。

超音速飛行の未来
 かくして、超音速飛行が再び現実になろうとしているが、問題はある。環境への影響はやはり無視できない。気候変動が深刻化し、航空業界は二酸化炭素排出量の削減に取り組んでいるさなか、超音速飛行は、通常の飛行よりも多くの燃料を消費する。環境への負荷が大きい。Boom Supersonicとしては、Overtureが持続可能な燃料を使用することを計画しているが、それでも環境への影響は懸念される。
 持続可能な超音速飛行を実現するためには、技術的な革新だけでなく、環境への配慮が不可欠であり、Boom Supersonicは、Overtureが持続可能な航空燃料(SAF)を使用することも計画はしている。これにより二酸化炭素排出量を削減することを目指すというのだ。騒音問題に対処するための技術的改良も進められている。これらの取り組みが成功すれば、超音速飛行は環境に優しい形で復活する可能性があるが、過大な期待はできそうにないだろう。現代なのだから、それなりのものは可能になるだろうし、その時点で改善は漸進するだろう。まあ、実用化は以外と無理かもしれない。

 

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