在沖縄米海兵隊のグアムへの部分移転開始
米海兵隊が2024年12月14日、沖縄から米領グアムへの部分移転を開始した。これは、日米両政府が2012年4月に合意した「在日米軍再編計画」の一環であり、沖縄に集中する米軍駐留の負担軽減を目的としている。
移転計画の概要と進捗
今回の移転は、沖縄に駐留する米海兵隊のうち第3海兵遠征軍の一部隊員100人がグアムへ派遣されるところから始まった。この初期段階では、兵站支援や現地準備作業が主な目的である。移転計画全体では、沖縄に駐留する約1万9000人の海兵隊員のうち約9000人が沖縄から他地域へ移動する予定となっている。その中で、約4000人がグアムに段階的に移転する見通しである。
移転先となるグアムの主要施設「キャンプ・ブラズ」の整備には、日本が最大28億ドル(約3000億円)を拠出し、米国と費用を分担している。これにより、日米両政府はインフラ開発や海兵隊駐留における協力を強化している。さらに、移転後の海兵隊と自衛隊による合同訓練がグアムで行われる計画も明らかにされている。
ただし、次の大規模な移転がいつ行われるか、その具体的な時期や規模については現時点では発表されていない。また、今回の移転準備に先立つ2023年8月には、嘉手納基地で米空軍のKC-135空中給油機が訓練を行う様子も報告されており、米軍の継続的な活動が続いている。
沖縄の負担と住民の不満
沖縄は、戦後1972年まで米国の占領下にあり、その後も日米安全保障条約に基づく米軍駐留が続いてきた。現在、沖縄には日本国内の米軍施設の約70%が集中しており、日本全土の面積のわずか0.6%しか占めないこの地域に5万人以上の米軍兵士が駐留している。
沖縄の住民は、基地に起因する騒音や環境汚染、航空機事故、さらには米軍兵士による犯罪など、長年にわたり大きな負担を抱えてきた。特に性的暴行事件や暴力事件などは反米軍感情を高める要因となっている。たとえば、今回の移転直前には、嘉手納基地に所属する米軍空軍隊員が十代の少女を誘拐し性的暴行を加えた罪で「懲役5年」の有罪判決を受け、島内で激しい怒りが巻き起こったばかりである。
東アジア安全保障環境
今回の米海兵隊の移転は、沖縄の負担軽減を目的としつつも、東アジアの安全保障環境に対応するための戦略的な意味合いが強い。米軍は、「自由で開かれたインド太平洋」の維持を掲げ、中国の軍事的台頭や北朝鮮のミサイル開発といった課題に対応するため、地域全体での戦略的配置を進めている。
沖縄からグアムへの移転は、米軍のプレゼンスを分散させる動きの一環であり、有事の際にはグアムを拠点に即応性を高める狙いがある。グアムは地理的にアジア太平洋地域の中心に位置し、中国や北朝鮮からの脅威に対する中継拠点として機能する重要な戦略拠点である。
一方で、日本政府も中国の軍事的圧力への抑止力を強化するため、南西諸島への防衛力増強を進めている。沖縄周辺では陸上自衛隊のミサイル部隊や部隊基地が新設されるなど、日本国内での防衛力の再編も行われている。これにより、日米の防衛協力がより緊密になりつつある一方で、沖縄住民にとっての新たな負担や懸念も浮き彫りになっている。
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