若年層のSNS規制
先進国では今年に入って特に、若年層による携帯電話やソーシャルメディアの使用に対する規制が注目を集めている。なかでも、アメリカとオーストラリアの最近の動向は、教育現場や公共政策におけるテクノロジー利用の在り方を見直す契機となっている。
オーストラリアによるSNS使用年齢制限法案
オーストラリアでは、2024年11月21日に、16歳未満の子供によるソーシャルメディア利用を禁止する法案が議会に提出された。この法案は、若者の健康と安全を守る目的で導入されたものであり、TikTokやInstagramなどの主要プラットフォームが対象となり、違反した場合には最大3200万ドルの罰金が課される可能性がある。特に女子に対する身体イメージの有害な描写や男子へのミソジニー的コンテンツが懸念されている。
この法案の特徴は、親の同意を考慮しない点にある。導入に際しては、年齢確認には生体認証や政府発行のIDが利用される可能性があり、従来の方法よりも厳格な年齢確認が期待されている。収集された情報の削除を義務付けるプライバシー保護条項も盛り込まれている。とはいえ、青少年が健康・教育関連のサービス(例:「ヘッドスペース」やGoogleクラスルーム、YouTubeなど)にアクセスできるようにする配慮もなされている。
オーストラリア政府は、14歳から17歳の若者の約3分の2が薬物乱用や自殺、自傷行為などの有害なコンテンツを目にした経験があることを背景に、ソーシャルメディアの使用に対する厳しい制限の導入が緊急であると訴えている。
米国におけるSNS利用制限
米国では、教育現場でのスマートフォンの使用に関する制限が広がりつつある。ピューの調査(2024年9月30日から10月6日に実施)によれば、授業中の携帯電話使用禁止に68%の成人が支持を示している。しかし、終日禁止には賛否が分かれ、36%が支持する一方、53%が反対している。世代間や親の有無による意見の違いも明確で、18歳から29歳の若年層では授業中の携帯電話使用禁止を支持する割合が45%にとどまっている一方、50歳以上では80%が支持している。さらに、K-12の子供を持つ親の65%が授業中のスマホ使用禁止を支持しており、子供がいない成人とほぼ同様の割合である。
スマホ使用禁止に対する支持者の理由として、98%が「学生の注意を引きつけ、授業中の集中力を高めるため」としており、そのうち91%がこれを主要な理由と挙げている。また、70%は「学生の社会性の向上」、50%は「カンニングの防止」、39%は「いじめの減少」が理由であるとしている。
他方、規制に反対する人々のうち60%は、親が緊急時に子供と連絡を取る必要性を主な理由として挙げており、他には「教師にとって規制の実行が困難である」(37%)や、「携帯電話が教育ツールとして有用である」(31%)という理由もある。
先進諸国における動向
同種の動向は他の先進諸国でも見られる。フランスでは2023年に15歳未満の子供に対するソーシャルメディア使用を制限する法案が提出されたが、親の同意があれば利用が可能とされている。イギリスでは、若年層のメンタルヘルスへの悪影響を懸念し、ソーシャルメディアプラットフォームに対する厳しい規制を導入する動きが進んでおり、特に企業に対してユーザー保護対策を義務付けている。ドイツでも青少年保護の観点から、オンラインコンテンツのアクセスに対する年齢制限を強化する施策が取られており、法的な罰則も導入されている。これらの国々では、若者の健康と安全を守るために、各国の文化や法的背景に応じた独自のアプローチが見られる。当然ながら、こうした動向は日本にも波及するだろうし、すでにしているかもしれない。
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