2024年米国大統領選挙は過去にない成功だった
2024年の米国大統領選挙について、「ひどい選挙だった」という声も聞かれる。しかし、選挙の透明性と安全性においては、過去最高の成果を上げた選挙であったことも間違いない。投票率は66.8%に達し、これは過去100年で最も高い水準であった。全投票の95%以上が紙の投票用紙で行われ、これにより監査や再集計が容易になった。サイバーセキュリティの強化により、不正アクセスを防ぐための多層的な防御も実施された。
この成功の背景には、選挙システムの改善だけでなく、選挙官への支援や誤情報対策の強化がある。特に、選挙革新・研究センター(CEIR)を率いるデビッド・ベッカー氏の尽力が重要な役割を果たしていた、というのをC-Spanのニュースで知った(参照)。CEIRは選挙の透明性と公正性を向上させることを目的とし、選挙官のサポートや誤情報対策に取り組む非営利団体である。彼の活動を通じて、選挙運営における信頼性と効率性が向上し、米国の民主主義が新たな高みに達している、というのだ。
この選挙が「過去最高」とされる理由
2024年の選挙が「過去最高」であった理由の一つは、先にも述べたように、投票用紙の95%以上が紙で作成され、再集計や監査が可能になった点である。例えば、ジョージア州では3回にわたる再集計が行われ、そのうち1回は手作業で行われましたが、結果はすべて一致した。このような透明性は有権者の信頼を支える基盤となる。
選挙管理の高度化も挙げられる。選挙官間の協力体制が強化され、連邦・州・地方の選挙機関が一体となってサイバーセキュリティや物理的安全性を確保した。全米各地の選挙官が合同でサイバー攻撃に対する演習を実施し、その結果、攻撃への迅速な対応力が向上していた。州レベルでのデータ共有プラットフォームも構築され、不正な活動をリアルタイムで検知することが可能になっていた。
選挙プロセスに関する誤情報を排除するため、CEIRなどの団体が積極的に情報発信を行い、有権者が正しい情報に基づいて判断できるよう努めたことも重要だろう。選挙に対する誤解や疑念を持つ人々が減少し、結果として選挙の信頼性が向上した。なお、このCEIRを設立したデビッド・ベッカー氏は、司法省で投票権弁護士としてキャリアをスタートし、特にマイノリティの投票権擁護に注力してきた人物である。この経験が彼の活動の礎となり、2020年の選挙成功にも大きく寄与した。ベッカー氏は選挙官を支援する法的防衛ネットワークを構築し、選挙官が誤情報や法的リスクから保護される環境を整えた。この取り組みは、選挙官が安心して業務に集中できる条件を提供し、選挙全体の質を向上させた。
現在の課題と将来の展望
選挙制度が大幅に改善された一方で、現在も課題が残されている。特に、誤情報の影響は依然として深刻である。2020年の選挙後、選挙結果に疑念を抱く一部の人々が選挙官に対して脅迫や嫌がらせを行う事例が報告されているが、これに対処するため、CEIRは法的防衛ネットワークを活用し、選挙官が必要な支援を迅速に受けられる体制を構築している。このネットワークは、選挙官が脅迫に対処する際に必要な法的支援を提供し、選挙管理の安全性と透明性を確保するための重要な役割を果たしている。
郵便投票に関する誤解も課題の一つである。一部では、郵便投票が不正の温床であるという誤った主張が広がっていたが、実際には二重投票を防ぐための厳格な確認手続きが導入されている。署名照合やID確認を通じて安全性が確保されており、米国での郵便投票は非常に信頼性が高い制度である。このような安全策によって、郵便投票に対する信頼が徐々に回復しつつある。
とはいえ誤情報は依然、大きな問題であり、これは国内外から広がる可能性がある。ロシアや中国などの独裁国家は、米国の有権者間の不信感を煽るために、誤情報を戦略的に利用してている。ベッカー氏によると、こうした外部からの干渉を防ぐには、有権者自身が情報の真偽を見極める能力を養う必要もある。特定のニュースソースだけでなく、複数の視点から情報を収集することで、偏りを減らすことができる。また、選挙官が誤情報に対応するためのリソースを持つことも重要であり、CEIRはそのための支援を続けているとのことだ。
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