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2024.11.06

AI規制を巡る米国とEUの違い

 AI技術の急速な発展に対して、米国と欧州連合(EU)は異なる規制アプローチを採用している。米国はイノベーションを重視し、柔軟な規制を模索する一方で、EUは人権と安全を重視し、リスクベースの厳格な規制を導入している。この対立は、両地域の政策やIT企業の戦略に大きな影響を与えている。まあ、日本も巻き込まれるでしょう。

米国議会の動向
 米国議会では、AI技術の規制についてそれなりに慎重な議論が続いている。上院多数党院内総務のチャック・シューマー(Chuck Schumer)は、昨年AIに関する立法措置を約束し、複数のAIフォーラムを開催して上院議員への教育を進めてきた。これらのフォーラムには、イーロン・マスク(Elon Musk)、マーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)、OpenAIの創設者サム・アルトマン(Sam Altman)といったテック界の重鎮たちが参加している。アルトマンは「これは重要で緊急を要する、ある意味で前例のない時期であり、政府のリーダーシップが本当に必要だ」と述べている。
 下院議長マイク・ジョンソン(Mike Johnson)は、「より少ない政府こそが解決策である」というレーガンの原則に基づき、イノベーション重視の姿勢を示している。保守派は、EUが今年初めに承認した包括的な法的枠組みは行き過ぎだと考えており、大きな政府がAIの可能性を阻害することを警戒している。
 バージニア州選出の民主党下院議員ドン・バイヤー(Don Beyer)は、ジョージ・メイソン大学でAIの修士号を取得中とのこともあり、必ずしも自由市場派の保守主義者だけが政府の関与を制限しようとしているわけではないと言う。「私たちは誰も、非常に規制的で指示的なEUのAI法を模倣したくない。米国がイノベーション、想像力、創造性の中心地であり続けられるよう、十分に軽いタッチを保ちたい」とのこと。

プライバシーの課題
 下院AIタスクフォースの共同議長を務めるジェイ・オーバーノルテ(Jay Obernolte)下院議員は、AIに対する一般の懸念が通俗的なSF映画の影響を受けていると感じている。「平均的な米国人にAIの最大の潜在的な欠点を尋ねると、『ターミネーター』映画のような悪のロボット軍団が世界を支配するというような答えが返ってくる。それは私たちが心配していることではありませんが」と述べている。実際の懸念は、誤情報の拡散、データプライバシーの侵害、悪意ある金融取引の可能性である。先のバイヤー議員は「悪意のある主体が存在する可能性があるため、ある程度の規制は必要になるでしょう」と警告している。ここで注目すべきは、アメリカの歴史上、本格的なプライバシー法が存在したことがないという事実である。彼は「主要なプライバシー法案がまだ保留中である」と指摘し、AI規制の進展はソーシャルメディアへの対応よりも速いと評価しつつも、包括的な法的枠組みの必要性を訴えている。

EUの包括的規制
 対照的に、EUは「AI法」を通じて世界で初めての包括的な法的枠組みを確立した。この法律では、AIシステムを4つのリスク区分で規制している。特に「受け入れがたいリスク」に分類される、人種、障害、社会的地位に基づく人々の脆弱性を利用するAIは完全に禁止される。また、生体認証データを使用して人々を分類し、微妙な手法で操作する可能性のあるAIシステムも厳しい規制の対象となる。EUの規制はまた、市場に参入するAIシステム間の「公平な競争の場」を創出することも目指している。すべてのAI開発者に同じ基準を適用することで、技術の発展と人権保護のバランスを取ろうとする試みと言われている。
 規制環境の違いは、主要IT企業の戦略にも大きな影響を与える。Googleは「Gemini」を発表してから、EUの規制に対応するため、透明性とデータ保護に関する基準を強化している。また、MicrosoftやAmazonなどの企業も、独自の倫理的ガイドラインを策定し、自主規制の強化を進めている。
 米国下院では、年内にAIタスクフォースから報告書が提出される予定だ。その内容が今後の立法の方向性を示す重要な指針となるだろう。しかし、テッド・リュー(Ted Lieu)下院議員が「共和党支配下のこの議会期では、政府機能を維持することすら困難だった」と指摘するように、実効性のある規制の実現には、そう、今日の選挙結果も影響するのだろう。

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