フランスの出生率改善に関する課題と展望
少子高齢化の日本では出生率向上が問題となっているが、今までお手本とされてきたフランスでもその向上は難しくなってきている。
フランスの出生率
フランスの最新の出生率は2023年に1.68人/女性となり、人口維持に必要とされる2.1人/女性を大きく下回った。2010年には2.03人/女性だった出生率が、わずか13年で急激に低下しており、これにより世代交代が難しくなり、将来的にはフランス社会に深刻な影響を及ぼすことになる。
このまま出生率の低下が続くと、フランスはイタリアや日本と同様に、経済的な停滞に直面する。研究機関のシミュレーションによると、出生率がこのまま低下し続けた場合、2040年までに雇用率が約4%減少し、約100万人の職が失われる。労働力の縮小は生産性の低下と企業の利益減少をもたらし、特に製造業、サービス業、小売業といった産業に大きな影響を与える。消費者の購買力も落ち込み、国内市場の縮小も避けられない。こうした状況が続けば、フランス経済全体が停滞し、国際的な競争力の低下につながる。日本とはには、見慣れた風景のように思うが、フランスはちょっとした社会暴動で自動車がリアルに簡単に炎上する国なので、そのさらなる悪化を日本の風景と比較するのは困難だろう。
制度への影響
フランスの年金制度は日本と同様に「賦課方式」に基づいており、現役世代の納める保険料で高齢者への年金を支払う仕組みである。出生率の低下によって現役世代が減少すれば、将来的に年金制度は深刻な財政難に直面する。労働力が減少すると、年金保険料の納付者が減るため、年金支給額が減少し、支給開始年齢の引き上げや支給額の削減せらずをえない。年金受給者の生活水準も低下する。すでにその兆候をフランス国民は感じており各種の社会問題を引き起こしている。
出生率が低下する中で、フランスの若年層が移民として他国に移住する傾向が強まると見られている。すでに高学歴の若い研究者のフランス国外流出も顕著だが、経済の停滞や労働市場の競争激化により、より良い生活環境を求めて国外に出る若者も増加するだろう。すでにイタリアでは、出生率の低下と経済停滞により、若者が移民として他国に移る傾向が顕著に見られるが、同様の現象がフランスでも発生する。若年層の流出は、さらに国内の労働力不足を加速させ、人口減少の悪循環に陥るリスクを高め、社会的な不安感や不平等感が広がり、社会全体の結束力が低下させる。
フランスの出生率低下の原因
フランスの出生率の低下には複数の要因が関わっており、各種議論はされているが、具体的な原因の特定は困難である。住宅の取得難や収入減少、男女間の不平等、女性のメンタル負担、エコ不安などが複合的に影響しているとされる。なかでも住宅取得の困難さは、若年層に対して安定した生活基盤を築くことを難しくし、結婚や子育てをためらわせる要因となっている。また、収入の減少は育児にかかる費用の負担感を増大させ、子どもを持つ決断を阻害している。調査によると、フランスの女性が望む子どもの数は平均で2.4人であるが、現実にはこの希望が実現されていない。これは、社会的・経済的な要因によって、子どもを持つことが難しくなっていることを示唆している。こうしたことは、しかし、フランスに限った話でもない。
他国の成功例
日本には出生率向上の手本はフランスだという頓馬がまだ山間地域などに生息しているようだが、本場おフランスでは、ドイツやチェコが出生率を回復させた成功例として注目されている。ドイツでは出生率が1.3という非常に低い水準から1.6に回復し、その要因の一つとして移民政策の効果が挙げられている。チェコでは出生率がさらに高い1.8まで回復しており、これも公共政策と移民の役割が大きく影響しているようだ。 移民政策は出生率低下の影響を和らげる手段として有効だ。フランスも移民の受け入れを進めてきたが、ドイツは、移民の積極的な受け入れにより、出生率改善に成功しており、特に若年層の労働力を増やすことで、人口減少のリスクを抑えることができた。フランスも移民政策を強化することで、出生率の低下による労働力不足を緩和し、経済の停滞を避けることが期待されている。というお話もなんだかな感はあるように、この問題は裏面で複雑な問題を引きこす。
生産性向上の可能性
人口減少に伴う労働力不足に対処するもう一つの方法として、さらなる生産性向上が挙げられる。この点でお手本となっているのは、日本である。冗談ではない。日本はテクノロジーとロボット化により、生産性を向上させることで人口減少の影響を緩和しようとしているとフランスは見ている。が、その効果はまだ限定的であるとも分析されている。高齢化の進展も急激な日本の介護分野では、ロボットを活用することで労働力不足を補おうとする取り組みが進んでいるが、コストや技術面での課題があり、改善は進行しているものの普及にはまだ困難な状況にあるというのだ。また、日本の製造業では自動化とロボット導入によって一部の生産効率が向上しているが、中小企業においては導入コストの高さが障壁となっている。とはいえ、経済の長期的な停滞を防ぐためには、移民等による労働力を増やすだけでなく、技術革新やデジタル化による生産性の向上は重要である。
【参考】Le Cercle des Economistes: Natalité en baisse : le choc !
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