フランスの「極右」動向
フランスの「極右」指導者と報道されることが多いマリーヌ・ルペンが、EU資金横領疑惑を受けて裁判に立たされ、この裁判により、彼女が2027年の大統領選挙への立候補を禁じられる可能性が浮上している。この裁判は、世界的な右傾化の流れの中で、フランス国内のみならず、大きな意味を持つだろう。フ
フランスの右傾化の現状
フランスの「極右」政党と慣習的に呼ばれる「国民連合(Rassemblement National: RN)」の指導者マリーヌ・ルペンが、EU議会の資金を党活動に流用した疑いで裁判に立たされた。裁判は2024年11月27日まで続く予定であり、判決が下されると、ルペンに対し公共職務への就任禁止が命じられる。検察はルペンに対し公共職務への就任禁止を求めており、彼女が次回の大統領選に立候補できなくなる可能性がある。
右派勢力の浮上と、それに対する法的な対抗手段という構図は、フランスに限った問題ではない。イタリアやオーストリアでも極右政党の台頭が見られ、それらの国々でも移民問題や経済的不安に対する不満から極右勢力の支持が拡大し、移民問題や安全保障に対する国民の不安感が政治に大きな影響を及ぼしている。日本でも右派勢力の影響が強まりつつありと見る識者も少なくない。
今回の裁判では、ルペンと国民連合の他の24名が、EU議会の資金を架空の職務に使った疑いで起訴されている。この資金は本来、EU議会の補佐官の給与として支給されるべきものであったが、党職員の給与に流用された、とされている。ルペンに対しては公共職務への5年間の就任禁止と最大5年間の禁固刑、さらに30万ユーロの罰金が求められており、党そのものにも200万ユーロの罰金が課される可能性がある。
ルペンが有罪となれば、フランス極右にとって壊滅的な打撃となるが、ここで注目されるのは、その一方で若手党首ジョルダン・バルデラに、好機が訪れる可能性があることだ。バルデラは16歳でRNに加入し、23歳で欧州議会議員に選出、そして28歳で党首の座に就いた。彼はルペンから「ライオンの子」として育成されてきたとされ、党の後継者としての地位を確立している。右派が華々しく刷新されたイメージが演出できる。
右派後継者の刷新
ルペンの裁判が進む中で注目されているバルデラは若くして党のリーダーとなり、ルペンの路線を踏襲しながらも、若者層への訴求力を高めている。このような若手の台頭は、フランスに限らず、政治の新陳代謝が進む兆しとして注目される。日本でも若手政治家の影響力が増し、SNSなどを利用して、従来にはなかったような、少なくとも旧来のメディアからは想定外の自体を起こすようになった。
バルデラはすでに、ルペンが裁判で政治的に追放される場合に備え、既に党の新たな顔として準備を整えている。彼は移民問題において硬派な姿勢を維持しつつも、若者層へのアピールを強化しており、ルペンの影響を受けつつも独自の路線を築き上げている。
RNとしては、ルペンの裁判を「政治的弾圧」として利用し、EUやフランス政府への不信感を煽っている。メディアを通じて「EUが反民主的な手段で国民連合を攻撃している」と主張し、司法制度が政治的に利用されていると強調している。支持者向けの集会やソーシャルメディアで、裁判を「国家による弾圧の象徴」として取り上げることで、体制側への不満を煽り、党への支持を強化している。
このような反エリート感情の利用は、フランス社会に広がるEUへの不信と結びつき、極右勢力の支持拡大に繋がっている。これは世界的な潮流でもあるだろう。日本においても、既存の政治エリートへの不満は少なくなく、こうした感情が右派的な主張を支持する要因となっている。自分たちは被害者だと煽ることで支持を得る手法は、世界的に共通する現象であり、日本でも同様の動きが見られる。
政治的不満やエリート批判が右派勢力の台頭を助長し、その支持が強固であることは、現在世界とっても無視できない課題となってきている。今回のフランスの動向から学ぶことは、先進国全体にとっても多いだろう。
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