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2024.10.01

スーダン危機の現状をどのように見るか?

 このブログでは、ダルフール危機に関連して、スーダンの危機について経時的に追ってきた。久しぶりに現況をまとめておきたいと思う。

 スーダンの危機は現在、世界の他の課題と同様、国際政治と呼ばれるものの二面性と矛盾の象徴となっている。さらに言えば、これに「無関心」という深刻な問題も伴っている。現在世界では、一方で平和と人道支援を訴えながら、実際には他方で紛争を煽る勢力を支援している。こうした問題の中心軸となるのは、当然のことのようだが、複数の関係者の利害関係である。なかでも、スーダン危機では米国とUAEの複雑な関係性が軸になりつつある。

まとめ

  • スーダン危機は国際政治の矛盾を象徴し、その現実的な問題は米国とUAEの複雑な関係が中心となっている。
  • 現状、国際社会では、表面上は平和を訴えながらも、実際には紛争を煽る勢力への支援が続いており、人道危機が深刻化している。
  • 国際社会には、包括的な和平協定の策定といった修辞よりも、実現可能な人道支援が求められている。

米国とUAEの立場の違い

 ホワイトハウスは、2023年9月22日、米国のジョー・バイデン大統領とアラブ首長国連邦(UAE)のムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン大統領との二国間会談の概要を発表した(参照)。この会談では、両国の緊密な関係を強調しつつ、スーダンの危機について両首脳が共通の懸念を抱いていることが明記され、軍事的解決はあり得ないとして、残虐行為や戦争犯罪に対する責任追及を求めている。一見すると、この会談での声明は理想的なものであるかのように思えるが、他方、現実に目を向けると、UAEはスーダン紛争の当事者の一方である迅速支援部隊(RSF)を支援していると見られている。当然、この声明の真意が疑われることになる。

 RSFは、複雑な組織構造を持ち、その行動は国際的な懸念の対象となっていて、RSFが安定したスーダンを統治できるような現実的なシナリオは存在していない。複数の国際機関や人権団体からはその残虐行為の報告もある。アフリカ連合や国際連合が数か月にわたって懇願を続けているにもかかわらず、RSFは依然としてダルフール地方の最後の主要人口中心地であるエル・ファーシャーへの攻撃を継続していると見られている。

 UAEは、スーダンの人々に人道支援を提供するという口実で、RSFに武器や資金、ドローンを提供して支援しているとの報道がある(参照)。このような行為は、国際世界、特に赤十字社や赤新月社の信頼性を損ないかねない。スーダンでは現状、数百万人もの人々が家を追われ、民間人が飢餓の危機に直面している。今後数か月の間にさらに多数のスーダン人が飢饉のリスクにさらされる可能性がある。

背景には何があるか

 米国とUAEとの共同声明は、このような状況下で、どのような意味を持つだろうか。米国政府は、表面的には紛争解決を呼びかける声明を出しながら、これまでの調停努力を台無しにしてきた紛争当事者に対して、どのような対応を取ろうとしているのか。

 バイデン大統領は、ビン・ザーイド・アラブ首長国連邦大統領との会談の翌日である9月24日、国連総会で、スーダンの人々への支援を阻止する武器供与を止めさせ、この紛争を終わらせる旨を述べたが(参照)、具体的な行動計画は示されてはいない。もう一方のUAEの行動も矛盾している。表向きは人道支援と平和を訴えながら、すでに述べたように、実態としては紛争を煽っていると見られる。このような二面性は、国際機関や非政府組織(NGO)の活動にも悪影響を及ぼす。人道支援団体の信頼性が損なわれると、真に支援を必要とする人々への対応が困難になる。そもそも、民族浄化や性暴力といった重大な人権侵害を行っていると懸念される組織を支援することが国際的な規範に反している。

国際社会に求められる対応

 このような状況下で、国際社会に迅速かつ効果的な対応が求められるのは当然だが、現実には、依然停滞の状態にある。対応策を表明するなら、結局のところバイデン大統領の修辞と同じようになるのがオチだろう。とはいえ、危機は現実であり、手をこまねいているわけにもいかない。2005年に締結された南北包括和平合意(CPA)のような、すべての当事者が参加する包括的な和平協定の策定は求められる。

 当面の措置であれ、スーダンの人々に対して、特に食糧や医療支援を届けるための安全な人道回廊の確保も必要になる。そのためには、遅きに失する前に国連平和維持軍の派遣も検討すべきだろう。

 

 

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