ペンシルベニア州が決定打となる2024年大統領選
2024年のアメリカ大統領選挙において、ペンシルベニア州が再び重要な鍵を握ると見られている。この州は19の選挙人票を持ち、共和党と民主党の間で揺れ動くスイング・ステートである。都市部のリベラルな有権者と農村部の保守的な有権者が共存し、両候補にとって非常に戦略的な場所でもある。歴史的に見ても、ペンシルベニア州の投票傾向はいつも興味深い変遷を示す。2000年から2012年までは民主党が連勝していたが、2016年にトランプが僅差で勝利し、2020年には再びバイデンが約80,000票差(総得票数の1.2%差)で勝利を収めた。この僅差が選挙活動の重要性を如実に物語っている。
両候補者ともこの州においては、有権者をひたすら説得することで、得票を増やすだけでなく、相手の得票を減らすことができる。つまり、やりがいのある州である。現在、ペンシルベニア州には約970万人の登録有権者がおり、その50%以上が無党派層または独立系である。この無党派層にいかに大きな影響を与えるかは両候補にとって重要な課題である。
両陣営による広告戦略の激化
スイング・ステートにおける広告の重要性は非常に大きく、ペンシルベニア州を巡る広告キャンペーンは熾烈を極めている。バイデン候補から急遽変更されたわりにハリス陣営は資金が潤沢で、約159百万ドルを広告費に投入し、テレビ、ラジオ、インターネットを通じて有権者を説得している。対して、トランプ陣営は約121百万ドルである。商業放送の広告枠は互いに攻撃的な内容の広告で埋め尽くされている。
フィラデルフィアやピッツバーグなどの主要都市では、テレビCMの頻度が1日平均15本以上に上っていて、広告の内容も多岐にわたるが、基本的には、ハリス陣営はインフレ対策や中絶の権利保護を強調し、トランプ陣営は経済回復と移民問題に焦点を当てている。
地元のメディアの関係者によると、2020年の選挙と比較して顕著な変化としては、両陣営とも特にソーシャルメディアを通じた若年層へのアプローチにも力を入れていることだ。
都市部と農村部で異なる支持構造
2024年の調査によれば、都市部の有権者の約60%が民主党支持であり、フィラデルフィアやピッツバーグでの支持が特に強い。他方、農村部では共和党支持が70%以上に達している。この対照的な支持構造が、ペンシルベニア州をスイング・ステートたらしめている。
ペンシルベニア州の有権者が最も関心を寄せているのは、経済と中絶問題である。多くの住民が物価の上昇や生活費の増加に直面しており、経済問題が選挙の大きなテーマとなっている。2024年の調査によると、ペンシルベニア州の有権者の約52%が「経済が最大の関心事」と答えている。
経済面からトランプを支持しているのは、退役海軍軍人の多くである。社会保障収入で生活しているため、物価上昇を嫌い、以前トランプが大統領だった頃の方が良かったと考えるからだ。トランプ陣営は、白人労働者層や製造業に従事する有権者を中心に支持を固め、また経済と移民問題を軸にしたメッセージを発信している。ペンシルベニア州の製造業従事者は約56万人に上り、その多くはトランプを支持している。またトランプは、バトラー郡の演説ではさらに、移民問題と国境管理の強化を強調した。
他方、中絶の権利を重視する有権者もペンシルベニア州には多く存在し、ハリス候補を支持している。2024年の世論調査によれば、中絶の権利を重視する有権者は全体の約45%に上り、特に女性有権者の間でその関心が高い。ハリス陣営は、フィラデルフィアやピッツバーグといった都市部での支持を強固にし、バイデンが2020年に郊外で得た支持を維持することに力を入れている。特に黒人やラテン系有権者の支持を引き出すことが、ハリスにとっての勝利の鍵となる。
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