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2020.09.03

英語の "thorough" の発音はなぜめちゃくちゃなのか?

 英語の "thorough" の発音はなぜめちゃくちゃなのか? この問いかけ自体が正しくはないかもしれない。違うのは、英国発音と米国発音の差だけだとも言える。とりあえず、2つある。
 ”The 10 Hardest English Words to Pronounce” (発音がもっとも難しい10個の英単語)という記事には、2番目に挙げられていてこう説明がある。

2. Thorough
With a silent ‘g’ and an excessive amount of vowels ‘thorough’ can confuse even the most experienced English speakers. To make matters worse, this word is also pronounced differently by English speakers in America to those in the UK- making it even more difficult!

(”thorough”という単語には、無音の「g」と過剰に母音字が含まれているので、最も経験豊富な英語話者でさえ混乱する可能性があります。 さらに悪いことに、この単語はアメリカの英語話者とイギリスの話者では発音が異なるので、さらに難しくなっているのです!)

British pronunciation: thur-er
American pronunciation: ther-ow

 近似音でいうなら、英語だと「サラ」、米語だと「サゥアロウ」のようになる。上記事では、英音を「thur-er」としているが、英語では「ur」では「r」の響きはなく("postvocalic R")、後続との関係で「r」が現れる。これは”linking R”と呼ばれているものだ。話者のなかでどう了解されているかはよくわからないが、"intrusive R"という現象とも関係がある。この議論はさておき。
 おそらく英語における認識は、 "tho・rough"で、英語では" "thor・ough"に近いだろう。こういうとスペリング発音のようでもあるが、これはあとで議論する。話を進めると英語で "tho・rough"とすると、"rough"が現れるが、これなら近似音で「ラフ」でもあろうだろう。
 ここで、"ough” というスペリングの音価が気になる。この話は受験生も知っておくといいだろう(が、まあ、こんなブログ、受験生が読んでいるとも思わないが)。Wikipediaの関連項目も参考になる(参考)。以下、仮の分類だが。

二重母音
[aʊ] bough、plough
[əʊ] although、dough、though

長母音
[ɔ:] bought、thought
[u:] through

シュワ
[ə] borough、thorough(英)

ストップ付き
[ɒf] cough、trough
[ʌf] enough、tough、rough
[ʌp] hiccough

 スペリング発音だと、上記のように、8種類以上の可能性がある。さすがに、「サラップ」はないだろうが。
 この混乱は、とりあえず、英国英語と米国英語を分ければいいのだが、日本の英語教育では文科省的にはこの分離の指針はないので少なくとも2つのままなので、逆に言えば、大学入試には出てこない(はず)。
 さて、この混乱は、スペリング発音なのだろうか?
 もしそうなら、英国発音がベースにあり、米国でスペリング発音化したと考えやすい。ただ、米国英語は、清教徒移民の歴史に重なり、古い英国英語の性質を持っているので、米国英語発音が本来の発音に近く、英国英語発音が音変化とも捉えられる。
 で、調べたのだが、わからない。
 語源的には、"thorough"は、"through"から来ている。なので、"through"の"r"が半母音であることから、シュワが挿入されて別単語として意識されたと推測してよいかもしれない。であれば、「サルー」に近いので、米音のほうが古形かもしれない。
 とはいえ、いずれにせよ、スペリング発音が影響しているだろうも思われる。

 

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