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2020.09.02

[書評] 新装版 タネはどこからきたか? (鷲谷いづみ・埴沙萠)

 ダーウィン『種の起源』 (1959)の12章に、実にダーウィンの人柄を感じさせるこういう話がある。

I took in February three table-spoonfuls of mud from three different points, beneath water, on the edge of a little pond; this mud when dry weighed only 6¾ ounces; I kept it covered up in my study for six months, pulling up and counting each plant as it grew; the plants were of many kinds, and were altogether 537 in number; and yet the viscid mud was all contained in a breakfast cup!

私は2月、小さな池の端で水面下の3つの異なる場所から大さじ3杯の泥を採取した。この泥は乾いた時の重さはわずか6.75オンス(191グラム)だった。私はそれを覆って6か月間書斎に保管し、植物が成長するたびに、取り出して数えた。植物はいろいろな種類があり、全部で537だった。それでも粘性のある泥はすべて朝食用のティーカップに収まっていた!

 この実験は誰でもできる。池の泥でなくてもいい。そこいらの土でもいい。というか、どこの土でもいい。子供できる、というか、子供が夏休みの自由研究にやるといい、ということかと、『新装版 タネはどこからきたか?』を見て思った。今年の7月1日の出版である。もとは2002年の出版だから、18年も前。その間、山と渓谷はインプレス下に入ったのだが、再版された。それだけの価値のある本だ。
 ダーウィンの研究は、土壌シードバンクの研究として現代でも研究されている、というか、本書も3章で触れられ、ダーウィンの言及もある。
 とにかく面白い本だ。大人にしてみると、子供のころにいだいた疑問が、そのころの感覚と共に蘇る。
 植物の種を入れたさやは乾くと、ぱちんと弾ける。ホウセンカとか、やらなかっただろうか? で、なぜ、はじけるのか。もちろん、タネを飛ばすためだが、なぜタネを飛ばすことになったのか。広域に広がりたいからだ。本書を読むとさらに、親元では暮らしにくいからだという説明がある。植物も動きたいのだ。三密は避けたい、というか、過密で生存競争を厳しくしたくない。
 風で飛ぶタネもある。たんぽぽとか。私は今でも、ふーっとやるのが好きだ。
 そうしたタネは水辺に落ちる。どってことないようだが、そうしたタネには耐水性があるらしい。それどこか、水に流されてどっかに流れ着くと、タネは、やっと上陸したと知る仕組みがあるらしい。温度変化でさぐるらしい。
 どんぐりもタネだ。ナッツ類とかも。つまり、リスだのの動物が食べる。植物にしてみると食べさせてタネを運んでもらい、あわよくば食べられないタネが芽吹く。食われることの共存は食べる生物に適合する。ちいさな赤い木の実は鳥が見つけやすく、食べやすい。そして、食べこぼしたり、糞で新しい土地に落ちて芽吹く。
 本書でびっくりしたのだが、木の実は動物以外に虫にも食われるのだが、それで食われすぎないように、凶作の年がある。凶作はただ天候でそうなったのではなく、虫を飢えて殺すためらしい。
 果物もタネだ。だが、いったいどの生物が食べる果物かわからないのがあり、そういうのは、もしかすると、食べていた生物が絶滅したのかもしれない説もあるらしい。
 稲も単子葉の雑草からできてものだが、これらの草原の草の実は草と一緒に食われるように進化したようだ。
 すみれとアリの話も面白い。面白すぎてネタバレになるのを避けたい。
 タネの芽吹く時期も興味深い。春とは限らない。秋なら冬を超す。そのためにロゼットになる。冬の散歩でよく見かけるあれだ。何年も眠っていて芽吹くものもある。タネはそうした芽吹くタイミングを感知しているらしい。驚くことに、山火事があると、その後に芽吹くタネもある。
 既読でなければ、お勧めしたい本だ。人生観も変わるよ、きっと。

 

 

 

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