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2020.08.23

[書評] はたらく魔王さま(全26巻)

 ようするに、『はたらく魔王さま』全26巻を読み終えた。25巻分は読み終えていていたが、最終巻がこの8月7日に出ていることを知らなかった。なにかとしつこく本をお勧めしてくるアマゾンだが、急いで読みたいラノベの次巻の情報などはないものだな。
 今、「最終巻」と書いたが、21巻で終わるとは知らなかった。あと、少なくとも2巻はあるだろうと思っていた。が、20巻が出たのが、2019年1月。1年半ぶりくらい。その前の19巻が2018年10月。実は、打ち切りもあるかなとはなんとなう思っていたので、とりあえず、終わりまで書き上がったことを喜びたい。
 最終巻だが、率直に言って、打ち切り感は拭えない。ただ、放り出した感はなかった。最後の決戦とエピローグが交互に書かれるという構成は、壮大な物語が終わることを考慮していのことだろう。おそらく本来は、メインストーリーとエピローグ巻で分かれるはずだったのではないか。
 物語の未消化感もある。アマゾンの読者コメントを見ると、エンディングに選ばれたヒロインでブーイングがあり、たしかにそれもわからないではないとは思う。ここはネタバレになるので書かないが、この作品のエンディングもありだろうし、理詰めに考えてもそうだろう。というか、おそらく青春を超えた恋というのは、こういうちょっと微妙な男女関係の情感を引きずることがある。自分の一番の理解者が別れた恋人ということもあるものだというか(僕はないけど)。
 私としては、未消化感に思えたのは、なぜ魔王が人間社会で「はたらく」のかという詰めである。そこをきちんとして欲しかった。とはいえ、これは、最終巻まであらかた語られているが、ようするに人間社会の統治形態は分業・勤労によるという単純なことの深淵な意味合いである。
 あと、ファンタジー的には、まぜ魔王が生じたのか、悪魔たちが生じたいのか、については、作者側で練り込んだストリーがあったはずだが、出てこなかった。謎を解く鍵はすべて書かれているが、きちんと書き込んでほしいようには思えた。
 ところで、この作品、メインストーリーの巻と全巻のずれはサイドストーリーになるが、これがけっこう面白い。サイドストーリーはメインなくして存在できないのだが、文学的にはサイドストーリーの短編に佳作が多いように思えた。
 作者としては、もしかすると、トラウマ的にへとへとで終えた作品かもしれない。アニメ化も作者側としては、かなりきつかっただろうと同情する。
 個人的には、メイン側のストーリーよりも、サイドストーリーをもう1巻書いてほしい。アムス・ラムスが17歳になった作品である。なぜそれを期待するかは、この作品を全巻読んだ読者の多くが、説明なく同意してくれるだろうし、たぶん、作者にも伝わるだろう。
 慌てていない。いつか、その物語、17歳の娘が別の女性と暮らす父親をどう思うのか、をもう一つ、読みたい。

 

 

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