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2020.08.22

[映画] アナと雪の女王2

 前作が良かったので、続編の『アナと雪の女王2』も見た。
 とんでもない作品だった。何が、メッセージ性がである。ディズニー作品なんて、資本主義のイデオロギーや、甘ったるいリベラルな正義感を売り物にした程度の作品だと思われがちだが、実際には、けっこう過激なメッセージ性を持っていたりする。前作のアナ雪もそういう面がある。が、この作品は、うぁあやっちまった感が、パない。
 実は、最初見出したとき、40分くらい見たのに退屈で睡魔に襲われたので、気を取り直して最初から見直した。ところ、あれ?と驚くようになった。どうも、かなり脚本が練り込まれている。言うまでもなく、映像はかなり美しい。
 この作品は、ありがちな続編かと思っていたのだが、きっちり前作を継いでいる。最初からこういう構想があったのだろうか? 軸になるのは、「なぜ、エルサに魔法の力があるのか?」である。別の、結果的に言えば、アナとは何か?でもある。少し知的に言うなら、王権とは何か?である。
 以下、どうしても、ネタバレを含まざるを得ないので、ご注意。

 主題は王権とは何かであるが、そもそも、近代世界における王権というのは、先住民の駆逐によって成り立っている。いや、正確には駆逐というより、その殺戮や収奪の悔恨の調和と言ってもいい。
 そして、この悔恨は、近代王権が文明化することの鏡像として、被害側の民族は自然との調和として描かれがちだ。
 という点で、この物語は、まさに、ありきたりなテンプレートで成り立っているとも言えるのだが、その調和というものを王権側に引き寄せるとき、さらなる暴力が露出してくるというのが、私の唖然であった。
 露骨に言えば、ダムをぶっ壊せである。それも、暴力的にぶっ壊してしまえというものだ。こんなのありだろうか?
 奇妙な連想だが、この8月、密かに関心を寄せていたのは、三峡ダムの決壊であった。おそらく中国政府にとってコロナ騒ぎでどころではない国家危機なのではないか。で、思ったのはあれが壊れたらどんな世界が出現するのだろう?
 もちろん、ダムは象徴であり、それぞれの王権がそれに類した象徴を持っている。それらを壊すと何が起きるのだろうか?
 このディズニーの物語では、王権が自然と先住民をつなぐ精霊を姉妹として描いていたが、そもそも王権というのは、古代においてはそういう性格を持っていただろう。
 物語の終わりで壊されたダムは破壊的な放水を始める。この物語は新しい調和だから、街を破壊しない。そもそも王権の物語だろう。だが、三峡ダムの崩壊はあの国家を壊すかもしれない。いや、この物語が対中国の暗喩だということはない。
 日本には、天皇がいる。まあ、ぶっちゃけて言えば、天皇は、天災と民を調和させるものだ。東北震災では、上皇が即座に動いた。新型コロナ騒ぎも天災と認識されれば、天皇が動くだろう。私たちの国家も、こうした神話性を未だに内包している。

 

 

 

 

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