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2020.08.03

[書評] アフター・ビットコイン2  仮想通貨vs.中央銀行(中島真志)

 書名の確認もあって、アマゾンの本書のページを開いたら、前著『アフター・ビットコイン―仮想通貨とブロックチェーンの次なる覇者』と一緒に購入しませんかという誘いが出てきて、そうだったなと思った。本書『アフター・ビットコイン2  仮想通貨vs.中央銀行』を読むには、この前書の知識はかなり前提になっている。特に、ブロックチェーンの技術面については、前著が体系的に詳しい。
 そして、次作にあたる本書『アフター・ビットコイン2』も、仮想通貨の動向が中央銀行仮想通貨に、必然的に至る過程を、技術面からも体系的に描いている。こうした側面は、いずれ2冊を合本にしたような教科書すら編纂できるだろう。
 教科書的な体系記述以外にも、仮想通貨の現状に至るまでの過程についても詳しく描かれている。大筋で言えば、ビットコインからアルトコイン、ステーブルコイン、そしてデジタル通貨という流れだが、必ずしも直線的に変化していくわけではない。各種のデジタル通貨の詳細も重要になる。またデジタル通貨については、中央銀行デジタル通貨(CBDC)で終わる話ではなく、民間銀行(USC)や民間企業(リブラなど)も関連して現状は三つ巴になっているが、こうした、各通貨を本書はバランスよく扱っている。
 技術的な問題としては、本書は、51%攻撃の問題も扱われているし、さらに時事的な関心からも読み応えがある。なかでもEUの対応や北朝鮮の暗躍や中国政府の動向などが興味深い。
 話が前後してしまうが、こうした具体例の詳細が国際決済を専門とする著者ならではの体系的な記述との関係に置かれているところが本書の秀逸さである。特に、リブラとテザーについてはかなり詳しい。
 リブラについては類書もあり、それなりに長所もあるが、本書の場合は、リブラの技術的(PBFTなど)・運用的(発行量など)な側面が、やがて登場する中央銀行デジタル通貨との関連で描いている点が特徴的だ。この過程で、中央銀行デジタル通貨というのもの性格が印画紙のように写し出されている。
 テザーついては、ステーブルコインというだけにとどまらず、実際には変動していたり、背景にいろいろ薄暗い部分があるなど、かなり踏み込んだスリリングな内容だった。ここだけでも本書の価値があると思えるほどである。このように、ステーブルコインとはいっても、その名前のとおりにはいかない。NuBitsなどは破綻した。
 こうしたデジタル通貨の動向は最終的には、中央銀行デジタル通貨(CBDC)に収斂していく(統一ではない)ことになるが、それがいつ頃かという点について、本書は小口についてではあるが、意外に早期に実現する可能性を見ている(中国は2020年を想定)。日本企業が関連する、トークン型のカンボジアのBakong(バコン)にいたっては、すでに事実上完成しており、コロナ騒ぎが鎮静化すればこの秋くらいに発表される可能性もある。それでも、各種のCBDC自体、トークン型か口座型かなど多様なままの状態は続くだろう。まだ不安定な状態であるともいるし、だからこそ本書の知識が急務になるとも言えるだろう。
 あと本書ついて、別途、新潮社の『波』最新号(8月)にfinalvent名で書評が掲載せれている。Web公開になったおりは、また一報したい。

 

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