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2020.07.19

数値から見た今の新型コロナウイルス感染症の風景

 数値データが与えられたとき、人はそこから何を読み取るかという課題に暗黙のうちに置かれがちだ。そしてそこには、なにか読み取るべき真の答えがあるかのようにも感じさせる。これが絵画であれば、何を読み取るかは、つまるところ自由だと言っていい。絵画の知識によって読み取りが深まることはあるだろうし、勘違いが減ることはあるだろうが、それでも、最終的に受け取るものを大きく制約しない。他方、そのある種の自由に至るために、人はそれを、飽くこともなく眺めることになる。というように、数値から見た今の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の風景を3点、眺めてみた。どちらかといえば、死者のいる風景として。

人工呼吸器の風景
 COVID-19の重症の規定は、呼吸困難(呼吸回数や酸素飽和度)や肺滲潤影などによるだろう。が、簡単な視点は人工呼吸器であり、体外式膜型人工肺(Extracorporeal membrane oxygenation: ECMO)だろう。日本救急医学会のサイトに以下のグラフがあった。青が、軽快、黒が死亡、赤が装着中。

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 6月に入ってから比率は安定している。むしろ、この状態が恒常的に続くかのようにも思われる、というところで気がつくのだが、このある種の恒常性というのは、ECMOが外せない、ECMOによって生命が維持されているという状態なのではないか。
 ECMO以外の人工呼吸治療ではどうだろうか。

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 この数日間にやや悪化の傾向が見られるふうでもあり、それが今後の傾向になる懸念はあるだろう。が、これまでの経緯からすれば、ある種の恒常のようにも見える。そしてその意味も、人工呼吸という医療によって生命が維持されている状態である。
 この状態とはなんだろうか? ここから見える風景は、実は、COVID-19の風景とは異なる風景なのではないか。

死者の傾向
 Our World in DataがCDCに依って描いた、死者の傾向。

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 新規の死者が増えているかの傾向を示すものだが、まず、欧州では死者が減衰していく傾向が見られる。都市封鎖をしなかったスウェーデンを考慮すれば、おそらくこの傾向は政策的な対応ではないのではなかという疑念もある。今後もこの減衰傾向にあるのかは、まだよくわからない。ある恒常に至るかもしれない。
 ブラジルと米国は死者が減衰していない。インドは増加傾向にある。が、ブラジルの動向からは恒常値がありそうだ。
 日本と韓国だが、このデータでは日本は減衰傾向にある。が、日本と似た傾向にあった韓国がわずかながらだが増加に転じており、日本もそれに似た動向となるかもしれない。なんとなく思うのは、欧州各国の減衰が恒常になり日本や韓国と同じ傾向を辿りそうだということだ。その恒常があるとするなら、人はそれを何と呼ぶのだろう? 日常?

高齢化との関わり
 COVID-19を死者の関連で見るとき課題となるのは、端的に言えば、高齢者をいかに保護するかということだ。各国の死者の動向を見るとき、もっとも大きな補正的意味を持つのが高齢化率である。これをまとめたデータが札幌医科大学にあった。全世界レベルでプロットしてみると、次のようになる。

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 少人口の国家のデータからはあまり読み取れるものはない。ざっと見わたして奇妙にも思えるのは、高齢化率がそのまま死亡者に比例していないことだ。おそらく、医療体制の高度化が大きな因子になっているのだろう。できるなら、そこを指標にした風景も見たいものだが、見当たらない。
 大雑把に見る。開発途上国での死亡が必ずしも高くないのは、そもそも高齢化率が低いからだろうか。全体傾向としては、とりあえず高齢化率が高いと死亡は増えそうだ。
 そして、実はこの風景で一番奇妙なのは、日本である。まるで日本は、世界に所属していかないのようなところにいる。これはどういうことなのだろうか? 

 

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