« "apprendre"と「知足」 | トップページ | 報道で知った3人の死 »

2020.07.27

トンチンについて

 「トンチン年金」というのがある。なにか? 大辞泉はこう説明している。

1 出資者が死亡すると、その年金を受け取る権利が生存している出資者に移される終身年金制度。長生きするほど多くの年金を受け取れる。17~18世紀にヨーロッパで行われた。名称は、17世紀にこの手法をフランスのルイ14世に提案したイタリアの銀行家ロレンツォ・トンティ(Lorenzo de Tonti)に由来。
2 低解約返戻金型の個人終身年金保険のこと。解約時や死亡時の返戻金を低く設定することで、年金原資を増やし、長生きする加入者に支払う年金を確保する仕組み。生きている間ずっと年金を受け取れるが、一定の年齢を超えないと、受取総額が支払総額を大きく下回るリスクがある。

 正確な説明なのだが、今ひとつよくわからないのではないだろうか。世間的には、2の意味で使われているというか、あるいは使われていない。どういうことかというと、保険商品としては、「これはトンチン年金でして」みたいな話にはならない。
 ではどういう話になるかというと、ニッセイのおばちゃんでは、こう。

Grand Age(グラン・エージ)
死亡保障を行わず、将来必要な資金を重点的に準備できる保険です。
特徴
1 死亡保障を行わず、解約払戻金を低く設定することで、お受取りいただく年金の財源となる金額(年金原資)を大きくしています。
2 5年保証期間付終身年金の場合、終身にわたって年金を受取れます。
3 所得税・住民税の金額が軽減される個人年金保険料控除または一般生命保険料控除の対象です。

 Grand Age(グラン・エージ)って何語? それはさておき、これでは、ニッセイのおばちゃんではない。簡単な事例でいうとこう。

50歳男性が「10年確定年金」で毎月2,3424円払うと、70歳から10年間、毎年60万円年金が支払われる。

 どうでしょ?
 簡単に損得で計算すると、アバウトな計算だが、支払額は、5,621,760円。もらえる額は6,000,000円。20年賭けて、38万円くらいのお得。
 で、80歳前に死んだら? だけど、現在の男性の平均寿命は、81.25歳で、まあ、現在50歳以上の平均的な男性はこれよりもう少し生きられる可能性がある。
 それでも、70歳から80歳の間で死ぬと、残りは遺族に行くらしい。ようするに、税控除しつつ遺産にするものなのだろう。
 あるいは、長生きが人生のリスクになる時代になるので、そのリスクヘッジにもなるのだろう。とほほ感があるが。
 さて、なぜ? トンチン?
 大辞泉にあったように、「17世紀にこの手法をフランスのルイ14世に提案したイタリアの銀行家ロレンツォ・トンティ(Lorenzo de Tonti)」に由来している。彼は、1647年のマザニエッロの乱のとばっちりでナポリからパリに政治亡命で移住。彼は、同じくイタリア人ジュール・マザラン(フランス語: Jules Mazarin、イタリア語: Giulio Mazarino)の庇護を受け、財政に取り組む。この際、1653年にトンチン年金が考案された。実現されたのは、1689年。その後、ルイ 15世によって 1763年廃止された。トンティは1684年頃死亡している。息子のアンリ・デ・トンティは探検家となる。
 ということでトンティが注視されるのだが、イタリアにはそもそも、フランシスコ修道院によるモンテス・ピエタティス(montes pietatis)があった。これは、喜捨や遺贈による資金をもとに担保を取るが無利子で融資され、15世紀後半から16世紀に南ヨーロッパ一帯で実施されていた。さらに歴史を探ると、ピエタティス(信仰)のないモンテス(montes)があり、中世以前に遡れそう。
 こうした流れで見ていくと、トンチンは年金と関連付けられるが、現代フランス語で、La tontine (トンチン)というと、La tontine chinoise のことを指すようだ。Taiwan Infoというサイトにはこうある。

La tontine chinoise, ou he-houeï [合會] ou simplement houeï [會], est un moyen commode et fort ancien en Chine de se procurer de l'argent.

 で、これは、民間合會のことだ。MBALIBというサイトにはこうある。

  “合會”(ROSCA),意為“輪轉儲蓄與信貸協會”。它是協會內部成員的一種共同儲蓄活動,也是成員之間的一種輪番提供信貸的活動。按此,這是一種成員之間的民間借貸,是成員之間的資金互助,同時涉及了儲蓄服務和信貸服務。

(「合会」(ROSCA)は「ローテーション貯蓄と信用組合」を意味する。協会の会員にとっては共同貯蓄活動でもあり、会員が輪番制で信用供与する活動でもある。つまり、これは一種の会員間の民間融資、会員間の投資信託支援であり、同時に貯蓄サービスや信用サービスも含まれる。)

 ここで、ROSCAが出てくるが、Rotating savings and credit associationの略で、Wikipediaでにはこう説明されている。

They are also known as tandas (Latin America), chama (Swahili-speaking East Africa), Kameti کمیٹی (Pakistan), ekub (Ethiopia), partnerhand (West Indies), cundinas (Mexico), ayuuto (Somalia), stokvel (South Africa), hagbad (Somaliland), susu (West Africa and the Caribbean), hui, 會 (Chinese communities in East & SE Asia), paluwagan (Philippines), Gam'eya جمعية (Egypt), kye (계) (South Korea), tanomoshiko (頼母子講) (Japan), pandeiros (Brazil), cuchubál (Guatemala), juntas, quiniela or panderos (Peru), C.A.R. Țigănesc/Roata (România), arisan (Indonesia) and dhukuti or dhikuti (Nepal).

 つまり、トンチンは、世界中どこにもあり、日本では頼母子講、無尽である。相互銀行のもとである。

 

 

|

« "apprendre"と「知足」 | トップページ | 報道で知った3人の死 »