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2020.07.09

注音とハングル化、及び介音と四呼

 このところ、朝鮮語の学習と中国語の学習に並行して、朝鮮語と中国語の音韻と正書法の関連を調べていたのだが、ようやく注音符号の重要性に気が付き、そうしてみると、ハングルも元来は注音符号だったことに気がつく……はずなのだが、うかつにも気が付かなかった。いや、無意識では気がついていたのだろう、夢に出てきた。朝ぼんやりした頭で思考を続けていた。目覚めて、こんなものどこかにあるだろうとネットにあたる。「ハングル 注音符号」のキーワードでなんか出てくるだろうと思った。意外と見つからない。
 そんなはずはない。なぜ、そんなはずはないか、といえば、ハングルを使う朝鮮人は、ハングルの漢字音で現代中国語の固有名詞を実質音表記してないはず……なのか?
 「北京」を例にすれば概要が見えるだろう。

北京の漢字対応
 北 → 북
 京 → 경 

「北京」が「북경」となっているか検索すると、けっこうヒットする。使われているようだ。日本語風に発音すると、「プッキョン」のようになるだろう。
 で、まあ、そんなはずはない。そんな音では通じないし、そもそも「北京」の中国音がわからない。というか、先の検索過程でわかった。

 北京 → 베이징

 ちなみに、注音符号ならこう。

 北京 → ㄅㄟˇ ㄐㄧㄥ

 つまり、こういう対応があるだろうか?

 北京 → 베이징 ← ㄅㄟˇ ㄐㄧㄥ

 かなり対応しているとも言えるし、中国語の二重母音が、이で分離している時点で、だめじゃんとも思う。というか、そもそも韓国語には、[ei]の音がない。重母音に[e]の系列がない。
 いずれにせよ、「北京 → 베이징」を生み出す規則がどっかにあるはずで、これは、当然韓国政府内にある。あった。「文教部告示第85-11号《대한민국 외래어 표기법(제85-11호)》」である。国立国語院が1986年1月7日に決めたものだ。
 1986年というと、私が28歳のころ。そういえば、いつから、「金大中」が「キム・デジュン」になったのだろうかと記憶を探る。日本の報道が変わったころはいつだったか。調べてみると、全斗煥(전두환)大統領の1984年の来日で彼の意向だったらしい(参考PDF)。韓国からの外圧を、安倍晋三さんの父の安倍晋太郎さんが外相だった政治的に判断したようだ。どうでもいいけど、ネットでは安倍晋太郎についてあまり語られてませんね。
 全斗煥大統領としては、国立国語院の決定を受けてというのは、時期が合わないので、むしろ、日本への外圧をかけてから整合性を取るために「文教部告示第85-11号」ができたかもしれないという疑念は残るが、しかし、基本は対日政策ではなく、対中政策ではあっただろう。
 ここで奇妙なことに気がつく。「東京」である。
 現状では、一般にはこうされている。

 東京 → 도쿄

 漢字音ならこう。

 東京 → 동경

 これが使われているかというと、Wikipediaの「東京」の項目は朝鮮語で「동경 (동음이의)」となっているので、現在でも使っているのだろう。ただ、Wikipediaでは「Tokyo」の項目から、「도쿄 (동음이의)」が出てくる。도쿄というのは、「Tokyo」の対応で、日本語の「東京(とうきょう)」の対応ではなさそうだ。
 ちなみに、韓国が中国語を漢字形ではなく中国語音を基本にしているなら、歴史名称なども入れ替えているのかと気になるが、外国語表記については別途規定されていて(参考)こういうことらしい。

제4항중국 및 일본의 지명 가운데 한국 한자음으로 읽는 관용이 있는 것은 이를 허용한다.
예시
東京 도쿄, 동경 京都 교토, 경도 上海 상하이, 상해
臺灣 타이완, 대만 黃河 황허, 황하

 このなかにすでに「東京」の例があり、しかも、도쿄, 동경ということだった。
 現状の国家間の対応からすると、「上海」が「상하이」なら、整合性を理由に、日本政府としては、「도쿄」ではなく、「도쿄오」とするように示唆するか、日本政府側から、固有名詞のハングル表記の整合的な案を提示していいだろう。
 というわけで、関連して書こうと思っていた「介音と四呼」についてはまたいずれ(ハングルは介音ではなく四呼が基本かもしれない)。

 

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