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2020.06.05

安倍首相の「断腸の思い」は私には伝わった

 私は、いちおう述べておけば、自民党支持でもないし、安倍晋三首相の支持者でもない。ただ、それでも、彼を擁護するかに聞こえる発言をしようものなら、それだけで批判されるという昨今のネットの空気も知っているが、これは、書いておこうかと思った。
 北朝鮮の国家組織による犯罪行為として、1977年(昭和52年)11月15日に、袋詰と思われる非人道的な方法で拉致された13歳の女子中学生・横田めぐみさんの父、横田滋さんが5日老衰で亡くなった。無念であっただろうと思う。
 これを受けて安倍首相は、記者団に対し、思いを述べたのをNHKニュースで私は見た。曰く、「総理大臣としていまだにめぐみさんの帰国が実現できていないことは断腸の思いであり、申し訳ない思いでいっぱいだ」と。涙は流していないが、詰まらせている声はいつも喋り下手ではなく、涙が出そうな感情をこらえているように見えた。もちろん、これは私の主観である。が、彼の拉致問題の関わりを思い出すと、「断腸の思い」は私には伝わった。
 ネットに残る記事を探ると、中央日報『<2002年朝・日交渉>安倍氏の“咆哮”戦術…金正日「日本人拉致を謝罪」(1)』(2014.06.17)に関連の記事があった(参照)。

 2002年9月17日午前10時30分、平壌(ピョンヤン)百花園迎賓館。
 首脳会談を30分後に控えて別室で待機中だった小泉純一郎首相と安倍晋三官房部長官(当時の職責)は茫然自失としていた。北朝鮮側から突然、「拉致被害者8人死亡、5人生存」というメッセージが伝えられたためだった。首脳会談が始まると小泉首相は金正日(キム・ジョンイル)総書記に激しく詰め寄った。金正日は意味ありげな笑顔だけを浮かべて特別な返事をしなかった。もちろん「拉致」という単語を口の外に出すこともなかった。ここまでの会談は完全に北朝鮮ペースだった。

◆会談難航…小泉首相に「日本戻りましょう」
 午前の会談が終わると安倍官房長官は北朝鮮の昼食の誘いを断り、小泉首相を別室に促した。「総理、金正日が拉致を認めて謝罪しない限り、いくら事前に日朝共同声明を出すと約束していても決して署名してはいけません。直ちに日本に戻りましょう」。咆哮するように声高に話す安倍氏を見て日本代表団一行は皆驚いた。北朝鮮に出国する前、小泉首相と安倍官房長官は「重要な対話は『筆談』でする」と約束していたためだ。盗聴装置があるのが明らかだった。しかし安倍氏はその約束を徹底的に無視した。その「効果」は午後の首脳会談が再開されるとすぐに現れた。

 もちろん、これが事実であるかは裏が取れているわけではないが、小泉純一郎『決断のとき』(集英社新書)に以下にあることと整合的であるようには思える。

実際、拉致問題について一番真剣に取り組んできた政治家は、安倍さんです。私が北朝鮮に訪問したときも官房副長官として同行してくれました。首脳会談を行った最高権力者が亡くなり、新しい指導者になってからの北朝鮮は、国際的に孤立し、まったく国際社会の言うことに耳を貸しません。難しい状態ですが、熱意だけは安倍さんが強く持っているので、期待しています。

 その後はどうであったか。拉致被害者5人は帰国した。重要なことは、北朝鮮が拉致を公式に認めたことだった。それ以前の言論界の空気を私は知っているが、北朝鮮が日本人を拉致したなど疑念を持とうものなら、陰謀論扱いされ、非難されたものだった。
 それ以外の帰国者はあったか。ジェンキンスさんは「帰国」した。めぐみさんの娘さんと横田夫妻が再会できた。しかし、横田めぐみさんを含め、他の拉致被害者は帰国できないままである。それは、結果において功績が問われるのが政治家であるなら、非は長期政権の安倍晋三首相にあることは明白だろう。
 なぜできなかったのか。彼が政治家として無能だったからか。先の中央日報記事にヒントがある。

 予想とは違い、「資金」を渇望していた北朝鮮は交渉に積極的だったという。1965年、日本が韓国に提示した5億ドルに該当する支援を得ることができるという判断からだ。現在の為替レートに換算すると100億ドル(約10兆ウォン)に相当する巨額だ。

 拉致被害者を5人帰国できた功績は、しかし、安倍晋三氏ではなく、小泉純一郎氏にある。北朝鮮は、いずれにせよ、商談としてこの問題の解結テーブルについた。そう見るなら、お値段は100億ドルである。この交渉はその後失敗した。なぜか? 2つ理由があったと思う。1つは国内世論がまとまらなかったこと。しかし、それもまた安倍氏の責任のうちである。もう1つは、ここが明瞭ではないが、米国側からの阻止があったと言っていいだろう。核化の資金になると見られていた。いずれにせよ、北朝鮮はその後核化に爆進し、米国は北朝鮮を経済制裁した。この条件下で、莫大な資金を北朝鮮に渡すことは安倍政権に不可能になった。
 どうしたら解決できただろうか? 米国と日本の関係を見直し、日本は米国の北朝鮮への経済制裁を支持しないとし、北朝鮮に資金援助すればよかっただろう。だが、それができる安倍政権でもなかった。

 

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